子どもの脳とフィットネス① スキンシップで脳が育つ
2017年9月28日
赤ちゃんは、スキンシップで脳が育つ
「皮膚は露出した脳」という言葉があります。
これは子どもでも大人でも肌への刺激が脳に直結することを表現した言葉ですが、子どもの場合は、特に生後7~8ヶ月まで感覚神経が未分化なため、皮膚の刺激で脳全体が活性化することがわかっています。
皮膚と脳の密接な連動は、受精卵からの細胞分裂の過程からも説明されます。
卵子が受精して2~3日は、すべての細胞が同じ機能を持っていますが、4~6日目には内部に空洞ができて外側と内側の2層の細胞に分かれ、さらに3週間ほどで内側の細胞層が外胚葉・中胚葉・内胚葉という3種類の部位に分かれ、役割分担されていきます。
このうち、神経と皮膚、目は、同じ外胚葉からつくられることが解明されています(筋肉や骨、血は中胚葉から、胃や小腸の壁は内胚葉からつくられます)。
そのため赤ちゃんは、皮膚を優しく刺激することで、脳が活性化します。
脳が働くことで、中枢神経が司る内分泌やホルモン、自律神経などが整い、免疫力も高めることができます。
早期母子接触で呼吸や心拍数も安定
近年、生まれた後にすぐにママの胸に赤ちゃんを抱かせる早期母子接触が注目されているのもそのためです。
実際に生まれてきたばかりの赤ちゃんは、ママのお腹から出てきて、初めて呼吸したり、気圧を感じたり。
慣れない環境の中で不安定な身体の状態にありますが、ママの皮膚に触れることで呼吸や心拍数も安定するという反応が見られます。
また、母乳保育が推奨される理由の一つもここにあります。
母乳は、栄養面でも優れていますが、ママを肌で感じること、さらには母乳を飲むときに、唇と舌をうまくつかってしごく動作が必要になることから、脳を働かせることになります。
特に、唇と舌には神経細胞が密にありますから、母乳を飲もうという本能的な活動が脳を活性化しているのです。
哺乳瓶で飲むよりも、母乳を飲むほうが難しいので、脳はより活性化されます。
生後7~8ヶ月頃までの感覚神経が未分化な状態の赤ちゃんの感覚は「共感覚」とよばれ、肌の感覚だけで、まるで見ているかのように理解しているといわれています。
また、この頃の赤ちゃんは、ママと自分の区別ができておらず、肌を通してママの感情も自分の感情として捉えています。
脳の健全な発育のためにも、ママがハッピーでいることが大切だということが理解できますね。
その後、赤ちゃんはママが触ってくれる感覚と、ママ以外の人が触る感覚、自分が自分を触る感覚が違うことが認識できるようになり、生後7~8ヶ月になると自分と他人が区別できるようになります。
それが「8ヶ月不安」と呼ばれるママから離れたがらない行動や、「人見知り」というママ以外の人を嫌がる反応として出てきます。
生後8ヶ月からはスキンシップが社会性を育てる
8ヶ月以降も引き続きスキンシップは大切ですが、この頃からは、安心感を与えてママから離れても大丈夫という安心感を持たせる意味が加わります。
親子教室などで赤ちゃんがママのもとを離れようとしないときは、焦らず思い存分スキンシップをとってあげることが重要です。
この頃のスキンシップで安心感を得ることで、情緒の安定が得られ、その後、ママから離れて新しい世界に飛び込んで他人とのコミュニケーション能力を育てていける基盤となるのです。
ある研究によると、幼少期にスキンシップが少なかった子どもが思春期になるとキレやすいということがわかりました。
皮膚の接触がないことで、潜在的に不安な気持ちが残り、情緒が不安定になりやすく、大きくなってからも、人と接触したいのにできないことにイライラして、暴力に及ぶこともあります。
また、強い皮膚刺激を欲して、ピアスをたくさんあけたり、自傷行為に及ぶこともあるのではないかと考えられています。
だからといってママがずっと赤ちゃんとスキンシップをとっていればいいかというと、そうとも限りません。
近年「アロマザリング」という母親だけでなく、様々な人が子育てに関わる育て方が注目されています。
この時期にママ以外の人にもお世話をしてもらうことで、赤ちゃんは肌でコミュニケーションを学ぶことができるのです。
親子教室などで、自分たち以外の親子と触れ合うことも、赤ちゃんの脳を育てることに繋がります。
(NEXT 2017年4月号より)
☆LIVE編集部