キラーワードに騙されない
2017年4月13日
日本行きの飛行機のなかで、雑誌を読む機会があったので、ここぞとばかりに普段自分では買わないものを読み漁りました。
週刊誌から女性誌、ビジネス誌まで。ニューヨークから東京までは14時間くらいかかるので、1回のフライトで機内に置いてあるほとんどの読み物に目を通せるのです。
メディアが発信する健康情報は正しい?
雑誌によってスタイルやトーン、主義主張は異なるものの、共通していることがあります。
それは、ほぼすべての雑誌に健康についての情報が書かれていることです。
雑誌の本文として書かれているものもあれば、記事体広告といって、一見雑誌の本文の内容が書かれているように見せているかたちの「広告」記事や、純粋な広告まで、見事に健康関係の記事が掲載されていました。
病気の予防法から治療法まで、本当に、ありとあらゆるものが載っていました。
それだけ健康への関心が高いのでしょう。これ自体は健康の分野に身を置くものとして、ありがたい話です。
でも、内容を読んでみて、腰を抜かしそうなものもあり、なんともいえない気持ちになりました。
科学的なエビデンスといわれるものと真っ向から対立するものがあったからです。
例えば、おしゃれな女性誌の特集では、健康になるための栄養の取り方が栄養士の解説のもと、素敵な写真とともに書かれていました。
そこには、「白米」のすすめとして、とにかく白米を取ることを勧めていました。
科学的なエビデンスでは、全粒穀物を取るのが健康に大切だといわれているにもかかわらず!
ホント!? というような健康食品が紹介されていたり、もっともらしい数字やデータ、医師などが登場して以下に優れた健康法かを説明していたり。「欧米で流行っている」「セレブが」など、読者に合わせて彼らが一番弱いツボを押しながら、巧みな健康法の広告がたくさん載っていたり。
広告会社に勤めているので、情報をもっともらしく聞こえさせる手法については、だいたい説明がつきます。
前述の白米の例のように、間違っている情報をもっともらしく載せているもの、少しのことを大きく見せているもの、明らかにうさんくさいものなどなどの情報が、多くの人の「知識」として取り込まれていってしまうのだなぁと、なんともいえない気持ちになりました。
著者や研究機関のサイトをチェックしよう
情報発信では「何」を「どのように」見せるかが重要です。
特に雑誌だと、「どのように」のところで雑誌の個性が現れることが多く、そこがその雑誌のターゲットである読者の弱いツボだったりします。
海外に敏感でありたい女性向けであれば、キラーワードは「ニューヨーク」や「海外最先端」などでしょうし、 経済的な面を重視する主婦向けであれば「安くて簡単」などでしょう。
健康志向の高い方や自然系を好む人は「オーガニック」「ナチュラル」は頻出ワードです。
雑誌を見る際は、まず、その記事が「広告」なのか、雑誌の「本文」なのか、注意してみてください。
広告が入っているものは、広告主の意図が多かれ少なかれ、メッセージとして入っていることが多いです。
本文である場合、どの立場の人がその記事を書いたのか、確認してみてください。
記名されている場合は、その人がどのような思想のもとにその記事を書いてあるのかを、webサイトなどでチェックするとよいと思います。
また、本当にこの健康情報が正しいのか、と思ったら、研究機関のwebサイトでチェックしてみるのもよいでしょう。
例えば、国立がん研究センターでは、科学的根拠に基づいたがんの原因や予防について解説しています。
また、「~がよい」などの情報が、何をもとに判断されているのかもチェックしてみてください。
1人の専門家の経験から意見なのか、 海外の1つの研究のみを指していっているのか、もしくは、大規模な研究の結果をもとにいっているのかで、「エビデンス(科学的根拠)」のレベルが変わってきます。
残念ながら、上で紹介したハーバード大学のサイトのように、日本語で最新の科学的な知見を健康の栄養情報などをわかりやすく紹介しているwebサイトは、まだ見たことがないので、こういった情報を公開するのは、関係機関の急務だと思います。
それまで、少しでも信頼のある情報にアクセスするために、記事のかたち、ソースに目を向けてみてください。
息抜きのために読み始めた雑誌でしたが、そんなわけで東京に着く頃には、仕事モードに。
今回の出張では、心していろいろな健康情報といわれるものに触れてみようと思います。
☆林 英恵