FITNESS ONLINE

facebook twitter googleplus
一覧へもどる
2018.07.25 水

【HitItem 】データを可視化、「ストーリー性のある接客」を実現 東急スポーツオアシス

News&Trend

テクノロジーは手段の一環まずは企業ミッションに立ち返る

とはいえ、ICTの導入にあたっては、まったく困難がなかったわけではない。何しろ、フィットネス業界といえば今も昔も、アナログになりがちな世界。そのなかで、すべてのスタッフがテクノロジーを活用し、使いこなせるようにするには大きな壁が立ちはだかった。

「これまでテクノロジーに触れる機会が少なかったスタッフに、いきなり『活用してください』と伝えても、拒否反応が生まれるのは当然。特に、現場でお客さまと直接接しているスタッフに、リアルからデジタルへ頭を切り替えてもらえるよう促すのは難しかったですね」その課題を乗り越えるのに必要だったのは、「全員で、企業のミッションを改めて確認する」という原点回帰の姿勢だった。

「当社では、『健康人生をサポートするNo.1企業』というミッションを掲げており、ICTの活用はその手段の一環。お客さまとの距離が縮まり、お客さまに当社の価値を感じていただくことがICT導入の目的です。お客さま一人ひとりの目標達成をサポートし、良好なコミュニケーションをつくるためにはICTが必要なのだということをスタッフに理解してもらえれば、データに対する苦手意識は払拭できると思いました」

これからICTの導入を考えているクラブに対するアドバイスとしても、「なんのためにテクノロジーを導入するのか、その原点に立ち返って考えることが大事」と語る野村氏。今一度、足元を踏み固める作業が、ICTという果実を実らせるには必要なのだ。

今後はデータ活用ノウハウのB to B 展開も

そのほか、同社ではオリジナルのスマホアプリ「WEBGYM(ウェブジム)」も展開(写真3)。

写真3「WEBGYM(ウェブジム)」も展開

写真3「WEBGYM(ウェブジム)」も展開

クラブ会員以外でも広く利用でき、実際にクラブで提供されているプログラムを自宅や職場で行うことができたり、自分にあったトレーニングメニューを作成できたりするものだ。「現在は、こうしたWEBGYMを含め、さまざまな企業での福利厚生サービスに展開できないかと検討しています」と野村氏。

さらに、他企業への展開という意味では、モーションボードや「OASISLINK」など、同社が築き上げてきたデータ活用ノウハウも、積極的にB toBとして展開していきたいと語る。

「従来は、施設運営業ということで、いわゆる『箱』の中で会員さま向けのサービスを提供してきましたが、健康産業に対する注目が高まりつつある現在は、施設の内外問わず、広くサービスを提供していくことが大事。そうした積み重ねが、当社のミッションである『健康人生をサポートするNo.1企業』につながるのだと考えています」

今年5月にはニューヨークのブティックジムやヨガスタジオ、マインドフルネススタジオなどを視察してきた野村氏。そのなかで印象的だったのは、ほぼすべてのクラブが同一の顧客管理システムを導入していたことだったという。

体験参加の予約も個人情報の登録もオンライン。クラブに着いたら免責事項にサインするだけ、という非常にシンプルな対応に驚いた。

「様々なクラブを横断的に活用するお客さまならなおさら、どのクラブへ行っても同じ行動で済むというシンプルさはとてもわかりやすく、便利なもの。日本でもいずれ多くのクラブが同一のプラットフォームをもち、データを共有する時代がくるかもしれません。そうすれば、他企業とのコラボや共創もしやすくなり、フィットネス人口の拡大につながるかもしれません」

現在は、テクノロジーの導入が各施設の差別化要因になっているが、いずれ、どのクラブもそれを取り入れるようになれば、テクノロジーはもはや差別化の要因とはならない。むしろ、施設内でのサービスで個性をだし、お客さまの心を掴むことが求められるだろう。

そうした時代の到来こそ、フィットネスの原点回帰と呼べるのではないだろうか。

< 前のページ3 / 3次のページ >
facebook twitter google plus hatena bookmark line pocket