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【NEXT 12月特集】世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス "ドイツ"篇

2016.11.25 金 スキルアップ

日本でフィットネス参加率が3%から大きな伸びが見られない要因の一つに、保険制度の違いが挙げられることは少なくない。
保険の仕組みとフィットネスの関係を良く見ると、フィットネス参加率の高い国では、保険の仕組みと深い関係にある医療サービスの仕組みと、民間保険サービスの両方で、フィットネスの参加が促されていることが分かる。

今回は、改めて世界の保険の仕組みとフィットネスの関係を理解することで、日本の人々の健康増進に、フィットネス関係者としていかに関われるのかヒントを得るべく、この分野に詳しい専門家と、各国のフィットネス関係者に話を訊いた。

【世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス】
概要篇
CASE #1 -アメリカ篇
CASE #2 -イギリス篇
CASE #3 -オーストラリア篇
CASE #4 -ドイツ篇
CASE #5 -日本篇

ドイツの医療制度

ドイツの医療制度は日本と同様に社会保険料を財源にした国民皆保険があります。ですが、国民はこの公的保険と、民間保険のどちらを選んでもよいことになっています。公的保険には国民の9割の人が加入していますが、この公的保険も非営利団体や民間保険組合が運営し、生活者が自分でどの組合に入るか決められるという自由度があります。残り1割の高額所得者は民間保険に加入しています。公的保険を提供する保険組合は 2016年に1月には118に集約化され、それぞれに保険商品を開発してマーケティングしています。

公的・民間、どちらのケースでも、生活者は、まずGP(家庭医)にまず行くことになっています。ここでも保険プランによって自由度があり、最初から専門医に行っても追加費用を払えばOKです。GPは、診察をして、その人の症状に合わせて、専門医を紹介するか、薬などの処方箋を出します。GPは診察することで診療報酬がもらえますが、公的保険の場合は4ヶ月ごとに1人あたりの患者についての予算が決まっていることから、GPとしては、あまり頻繁に病院に来て欲しくないと考えます。

そこで、できるだけ生活者が自分で健康管理をしてもらえるようにと、症状を本質的に改善するための理学療法やフィットネスプログラムなどをGPが紹介しています。その他、民間保険でも、インセンティブをつけて保険加入者に健康でいてもらえるサービスを拡充しています。

※ピンチインで拡大可(スマートフォンの場合)

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ドイツの保険のしくみとフィットネス

公的保険、民間保険ともに、オプションで各種予防コースがあり、保険組合から補助が出る。予防コースには、「ムーブメント」「ニュートリション」「リラクセーション、ストレス低減」などがある。

GPの処方箋のもとで理学療法として運動に参加する場合は、公的保険では3人の患者への指導で、1時間あたり42ユーロが施設側に補助される(自己負担額は15%)。一方同じ運動指導でも、民間保険が認めている場合、1人の患者への指導で1時間あたり65ユーロの補助が支払われる(ミュンヘンにある「メディカルフィットネストレーニング」の例)。

その他、フィットネスへの参加にインセンティブを出すかは、保険組合ごとの判断となっている。フィットネスインセンティブがあることでより健康的なライフスタイルを持つ人が加入することから、保険組合としても利益が確保しやすい顧客層が集められることになる。リサーチ会社のクオリサートによると、フィットネス参加への補助が出る保険に加入している人の、補助申請割合は実際には低く、実質的にフィットネスの参加への行動変容を促す仕組みまでには至っていない。現地のフィットネス業界関係者も、保険会社のマーケティング戦略にとどまっていると分析する。

現状、保険適用の補助が出るにはインストラクターと施設の両方が相応の認定を受けている必要がある。保険加入者が参加前に保険でカバーされる認定を受けているかを確認し、コース終了後にインストラクターに、保険会社への申請書にコースの内容などを記入してもらい、参加費のレシートを貼付して保険会社に提出すると、その費用が返還されるという手順が一般的となっている。こうした手続きの煩雑さも課題のようだ。

ドイツでは、インストラクターやトレーナーが、自分たちが考案した「予防コース」を民間保険会社に持ち込み、その内容が認められると、保険でカバーされるプログラムとして認定される。近年は筋膜リリースやファンクショナルトレーニング系のプログラムが増えている。

ドイツでもフィットネスクラブに通うことでの保険料の割引や会費補助などのインセンティブ付与も検討されているものの、関与するステークホルダーが多く、それぞれが自分の利益を主張することから新たな制度構築には至っていないという。

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