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【NEXT 12月特集】世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス "イギリス"篇

2016.11.25 金 スキルアップ

日本でフィットネス参加率が3%から大きな伸びが見られない要因の一つに、保険制度の違いが挙げられることは少なくない。
保険の仕組みとフィットネスの関係を良く見ると、フィットネス参加率の高い国では、保険の仕組みと深い関係にある医療サービスの仕組みと、民間保険サービスの両方で、フィットネスの参加が促されていることが分かる。

今回は、改めて世界の保険の仕組みとフィットネスの関係を理解することで、日本の人々の健康増進に、フィットネス関係者としていかに関われるのかヒントを得るべく、この分野に詳しい専門家と、各国のフィットネス関係者に話を訊いた。

【世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス】
概要篇
CASE #1 -アメリカ篇
CASE #2 -イギリス篇
CASE #3 -オーストラリア篇
CASE #4 -ドイツ篇
CASE #5 -日本篇

イギリスの医療制度

イギリスは税金を財源にした国民皆保険があります。生活者は住んでいるエリアで家庭医が決められ、その医師であれば無料で診察が受けられます。イギリスの医療制度は日本の学校制度に似ています。準公務員の医師が、担当するエリアに住む人々の診察を担当しますが、税金を財源としていることから予算が決められており、何人診察しても診療報酬は一定額しか得られません。そのため、生活者一人ひとりが受けられる医療サービスが限定的となり、診察してもらうまでに長時間待たされたり、手術もタイムリーにしてもらえないケースも多く不満や不安を持つ生活者も多くいます。

よりよい医療環境を望む生活者は民間保険に入り、その民間医療ネットワークの医師や病院で診察を受ける人も増えてきています。ただそうした民間保険と提携する民間クリニックはロンドンやマンチェスターなど都心部にしかなく、民間保険に入る人も、民間クリニックがあるエリアの生活者に限られています。日本の学校制度で、公立で自分の学区が決められているものの、都市部にある私立の学校に進む人がいるのと似ています。

※ピンチインで拡大可(スマートフォンの場合)

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イギリスの保険のしくみとフィットネス

イギリスでは政府が税金で運営する国民皆保険(NHS:ナショナルヘルスサービス)があり、さまざまな制限はあるものの、ほぼ無料で医療サービスを受けられる環境がある。そのため、人々が自分で健康管理をして病気にならないようにしようという意識が薄くなりがちで、これまでの民間保険も、NHSより充実した医療サービスを受けたい場合の医療費をカバーするか、NHSでは対象にならない歯科や眼科の治療費をカバーする内容に留まっていた。

そんな中、民間保険がフィットネス参加へのインセンティブを提供して健康的なライフスタイルを持つ人のマーケティングに成功し、世界的に注目されている事例がある。民間保険会社ディスカバリー社の「バイタリティプログラム」だ。ディスカバリー社は南アフリカの保険会社で、2004年にイギリスに進出。生命保険と医療保険をセットにした保険商品。

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保険プランへの加入に加えて、月々千円弱の会費を払ってバイタリティプグラムに入会することで、生命保険の保険料が割引かれるだけでなく、フィットネスクラブ会費の補助や、年間のクラブ利用回数や健康行動のポイントによって、キャッシュバックや、翌年の保険料の割引などが得られる。こうした金銭的メリットで人々の行動変容を促したり、健康的なライフスタイルを持つ人が利用するサービスと提携して、コミュニティとしての帰属意識を高めている。

保険会社は、デジタルデータによる分析で人々の行動変容を精緻にモニタリングして生活者にとってのインセンティブをより効率的かつ効果的に調整しし続けることで、保険商品としても利益率を高めてきている。

ただ、ディスカバリー社の事例は一部の健康エリート層とその予備軍にターゲットした商品となっており、より広く国民の健康増進に寄与するまでのインパクトには繋がっていない。

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