FITNESS BUSINESS

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連載最終回:ジャパニーズ・フィットネスビジネス

2016.03.01 火 オリジナル連載

一人の日本人女性が日本からはるか9千キロ離れたアメリカ西海岸で活躍している。
名前は“奥野亜矢”

ハイパーフィットネスでのクラブ支配人経験後、更なる高みを目指しフィットネスの本場であるアメリカへ渡米。大学でフィットネスビジネスを学びつつ、米国の高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部のグループエクササイズ指導、クラブマネジメント分野など、業界の第一線で職務経験を積んでいる。その奥野氏が感じたリアルなアメリカのフィットネス業界の風景を伝える。

前回、前々回と2回に渡り「日本のフィットネス企業、海外進出の可能性を考える前編後編」と題し、日本のフィットネス企業、とりわけ総合クラブが海外進出で成功するポイントを記事にさせて頂きました。

こちらの記事を執筆した直後、なんと日本のフィットネス企業がロサンゼルスのサンタモニカに出店するという情報を得ました。

参考記事:RIZAP 米国フィットネス市場に参入 2月にサンタモニカ出店へ

現在日本で多店化を進め急成長中のRIZAPが、同社のビジネスモデルを海外展開し、全米進出を目指すとのこと。同社の指導技法やトレーナーの質に関しては賛否両論あるかと思いますが、経営戦略やブランディング力、広告宣伝手法に関する成功事例からは非常に学ぶところがあると思います。

今回は、日本、アメリカ双方のフィットネス業界でのマネジメントを経験した私の視点から、RIZAPサンタモニカの新規出店について分析したいと思います。

3つのキーワードで分析

まず一番の特徴は、日本のビジネスモデルをそのままアメリカで展開しているということです。そこで、フィットネスビジネス成功要因の3つのキーワード、立地」「価格」「施設/商品」の視点から分析します。

【立地】

ロサンゼルス市のサンタモニカは、言わずと知れた西海岸屈指の観光名所です。また高級住宅地でもあり、出店地は海岸から数ブロックの好立地です。RIZAPのような会費単価の高いビジネスを展開するには適した立地と言えます。ロサンゼルスの他には、ニューヨーク、サンフランシスコ等の大都市、かつヘルスコンシャスな地域に絞るのが必須だと思います。

maxresdefault西海岸屈指の観光地として有名なサンタモニカ

【価格】

次に価格、日本では月に数十万の会費は考えられない、というのが一般的な見方だと思います。しかし、アメリカでは有能なパーソナルトレーナーをつける場合、1セッション60分約1万円というのは平均より少し高額というイメージであり、日本のように驚くべき金額ということはありません。週に3回のセッションを1ヶ月行えば、RIZAPとほぼ同等の金額になります。つまり、価格は相応ということになります。

【施設/商品】

では最後のポイント、施設/商品はどうでしょうか。前記の通りアメリカでは日本の感覚で言う「高額」なパーソナルトレーニングが日本の何倍も売れています。つまり、パーソナルトレーニングの「価値」が高いということです。

言い替えると、「価値の高いパーソナルトレーニングを提供する本物のトレーナーがとても多い」のです。運動指導の中で最もシンプルなものが減量指導であるというのは、日米問わずトレーナーであれば共通の認識であると思います。同社は自社の研修制度でトレーナーを育成する方針をアメリカでも展開するようですが、資格社会のアメリカで切磋琢磨されている個人事業主である他社のパーソナルトレーナーと、自社研修のトレーナーとのクオリティの差は重要なポイントとなるでしょう。

更に、日本では一般的なフィットネスレベル、経験値や栄養学の認識が低い傾向にあると思いますが、アメリカではフィットネス愛好家やヘルスコンシャスな人の中で糖質制限(ローカーボ)は非常に一般的であり、驚くべき新しい食事法ではありません。このようなフィットネスの「本質」が行き渡った「本場」で同社がこれからどのように市場を開拓して行くのかはとても興味深いと思います。

私が現在アメリカに移住した最大の理由は「フィットネスの本場」であると思ったからです。スケール、考え方、常識さえもが日本で私が考えていたそれとは全く違い、衝撃を受ける経験が多々ありました。今、日本で働いていたときの自分を思い返した時、本当に井の中の蛙であったなと思います。場所を問わず、柔軟な思考と広い視野で一歩日本から踏み出した時、新しい刺激や学びを経験し、また日本の素晴らしさを改めて深く感じることが出来ると思います。日本発のフィットネスビジネスが世界各地で成功していくことほど喜ばしいことはありません!今回で12回に渡る私のレポートは最終回となりました。こちらの記事をご覧頂いた方の心に少しでも響き、何かしらのアクションを起こすきっかけになればとても幸いです。

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>>>Write by Aya Okuno

奥野 亜矢

ロサンゼルス在住。自身の柔道家としてのアスリート生活の経験から、「大好きなスポーツ、フィットネスを通じて多くの人を幸せにしたい!」と志しフィットネス業界へ。
コナミスポーツ、ハイパーフィットネスにてトレーナー、グループエクササイズディレクター、そしてクラブ支配人を経験。”フィットネスの本場 アメリカ”でビジネスキルを磨き、挑戦するため渡米。高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部にてグループエクササイズ指導、クラブマネジメントに携わる。