FITNESS BUSINESS

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米国流 人材教育・チームビルディング術

2015.11.20 金 オリジナル連載

一人の日本人女性が日本からはるか9千キロ離れたアメリカ西海岸で活躍している。
名前は“奥野亜矢”

ハイパーフィットネスでのクラブ支配人経験後、更なる高みを目指しフィットネスの本場であるアメリカへ渡米。大学でフィットネスビジネスを学びつつ、米国の高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部のグループエクササイズ指導、クラブマネジメント分野など、業界の第一線で職務経験を積んでいる。その奥野氏が感じたリアルなアメリカのフィットネス業界の風景を伝える。

先月1日に英教育専門誌タイムズ・ハイヤーエデュケーションにより発表された「世界大学ランキング」で日本最高学府の東京大学が43位と前年の23位より順位を落とし、アジア首位の座を26位のシンガポール国立大に受け渡したと報道されました。※参考

42位の北京大にも抜かれたと日本でも話題になったようです。私の住むカリフォルニア州は、世界各地から優秀な学生が集まる有名大学が数多くあります。世界ランキング1位のカリフォルニア工科大、3位のスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校(13位)、ロサンゼルス校(UCLA・16位)、サンディエゴ校(UCSD・39位)などです。

「フィットネス」と「教育機関」この2つは全く違う業界ではありますが、私がアメリカのフィットネスクラブでチームの一員として働く中で、日本とは違ったチームビルディング方法や人材育成、活用の現場から実際に感じ学んだこと、またカリフォルニア大学サンディエゴ校での勤務経験などからも日本とアメリカの教育に対する考え方の違いなどもご紹介したいと思います。

アジア圏ではよく見られる「コントロールフリーク」

私が日本でフィットネスクラブの支配人として勤務していた頃、または教育プロジェクトに携わっていた頃の自分を一言で表すなら、完全なる「コントロールフリーク」でした。

マネジメントにおいて、部下、スタッフの仕事の全て、細部までをマネジメントしようとするタイプの上司のことです。今考えると一緒にはあまり働きたくないタイプですね。アジア圏全般の特に儒教の歴史のある国では、いわゆる「上下関係」「親を敬う」という文化があります。ですから、「コントロールフリーク」な上司や親というのはアジア圏では当たり前に多く存在すると思います。

近年、中国人のアメリカの大学への進学率の増加もめざましいですが、教育環境においては親の影響力がとても大きく見られます。これらの教育方針として特徴は「欠点の指摘や罰則、ネガティブな視点」が挙げられます。中国に限らずアジア圏の学生でアメリカの一流大学で学ぶ学生の多くは、幼稚園の頃から英語のみで授業が執り行われる学校に通いバイリンガル教育を受けます。日本でもインターナショナルスクールは古くからありますが、やはりごく一部の人が通う特別な学校というイメージで規模もとても小さいです。

日本と欧米での大きな違いとは?

「コントロールフリーク」はアメリカではとてもネガティブなイメージです。過度な束縛、イコール「信頼関係・自信がない」と捉えられます。上司と部下、同僚という関係性はもちろんアメリカでも存在します。またアメリカのビジネスシーンはとても「競争」が激しい。社内でも数字でドラスティックに成果を判断されるため、みんなが単に仲良く楽しくやっているというだけではありません。しかし、日本、アジア圏のような空気を読む類いの「上下関係」はありません。

では、アメリカのフィットネスシーンでチームを牽引するのに必要なスキルとはどのようなものでしょうか。まず私が感じる一番の大きな違いは「とにかくポジティブな面に着目すること」だと思います。

フィットネスの各部門のミーティングでも自分たちのチームの数値結果の前月比、前年比での良かった点、チームにもたらす良いニュースをシェアするという点にとてもフォーカスされています。これが「自信」に繋がる要素です。

次に「信頼関係」、チームのリーダーであるディレクターやマネージャーがチームのメンバーを「信じて」「委ねる」、「私たちならできる」という鼓舞する言葉を多く使います。そして,ミーティングにおいて、ただ話をするだけではなく「チームビルディングのアクティビティ」を行う、アクティビティの専門家を呼んで行うなど、ただ机上で話をするだけではなく工夫がなされています。

しかし、「信頼関係」をチームで築く上でとても大切なこと、それは「尊敬されるリーダー」がいることだと思います。その分野においての経験、知識、時にはチームをフォローするファシリテーターとなり、メンバーを応援するサポーターとなる、その様なリーダーの元で初めて上記のチームを牽引するスキルが生き、良いチームが生まれるのだと思います。

教育においても、子供を「自立」させることや個人の尊重という点がアジア圏とは大きく異なる視点であると感じます。子供を信頼する、その代わり18歳を過ぎたら全ての面で出来る限りの自立を促す、自由な選択の代わりに自分で責任を負うという教育方針が一般的にあります。

私はアメリカのフィットネスクラブで、複数人の素晴らしい上司に恵まれ、最高のチームで仕事をする機会に恵まれました。社会人人生で、人との出会いほど自分を成長させるものはないと思います。この機会にとても感謝するとともに、私のレポートが日本のリーダーの方や、これからリーダーを目指す方のマネジメントのヒントに少しでもなれば、とても嬉しいです。

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※参考サイト
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2016/world-ranking#!/page/0/length/25
http://www.sankei.com/west/news/151001/wst1510010026-n4.html

>>>Write by Aya Okuno

奥野 亜矢

ロサンゼルス在住。自身の柔道家としてのアスリート生活の経験から、「大好きなスポーツ、フィットネスを通じて多くの人を幸せにしたい!」と志しフィットネス業界へ。
コナミスポーツ、ハイパーフィットネスにてトレーナー、グループエクササイズディレクター、そしてクラブ支配人を経験。”フィットネスの本場 アメリカ”でビジネスキルを磨き、挑戦するため渡米。高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部にてグループエクササイズ指導、クラブマネジメントに携わる。