アスリートパフォーマンス情報サイト『CNC mag』の中からスポーツパフォーマンス向上に役立つ記事をご紹介します。
今回は実際のトレーニングとして、野球・サッカー・バスケットボールなど、これらのスポーツ競技特性で共通する動作「スプリントスタートの運動連鎖」についてのトレーニングの一例を取り上げて説明してみたいと思います。部活やプロチームのコーチの方々が分かるように、なるべく丁寧に解説します!
野球、サッカー、バスケットボールなどでは、競技の中で、瞬間的に走り出すという「スプリントスタート」の場面が多くあります。今回はそのスプリントスタートという共通する競技特性動作を活かした運動連鎖を考えます。
身体の各部位の安定性や可動性を意識してトレーニングする事が大切です。
先ず、いくつかのスポーツの場面をイメージしてみてください。
野球のセカンドがアスレティックポジション(以下、A.P.)で構えた所から、バッターがセンター方向へ打ったボールに素早く反応し、走る動作に移行していく瞬間のイメージができますか?
サッカーのFWがセンターサークル付近でボールを待っていたら、MFの選手から素晴らしい縦パスが出て、一気に走り込む動作へ移行していく瞬間のイメージができますか?
バスケットボールでも同様です。ポイントガードがカットインして切り込む初動は、爆発的な瞬発力を発揮してデフェンスガードを抜き去るために必要です。
上記に共通するように、複数の競技において「スプリントスタートに近い動作(Acceleration)」になる瞬間があることです。
また、これらの瞬間は、そのゲームの勝敗を分ける可能性があり、「スプリントスタート」という個人のパフォーマンスがチーム全体の勝敗に直結しているわけです。
では、スプリントスタート向上の為に、どのような身体の使い方が必要なのでしょうか?簡単に3つほど列記してみましょう。
前回のコラムにも記載しましたが、上記の運動連鎖を作り出すにはJoint by Joint Approachの考え方も非常に重要で、機能的に動作しない身体の部位がある場合、力のダイナミックかつスムーズな伝達が滞ってしまうのです。
これ以外にも各スポーツには方向転換(Cross Over)などの要素もあるのですが、別の機会にご紹介します。
今回は、子供でもできる簡単なトレーニングを2つ紹介しましょう。また、どのような意味があるのかを考えてみましょう。常に意味を考え、トレーニング中に意識してみてください!
※ フレクションは通常「屈曲」を意味します。
分かりやすい動画を見つけましたので、参考にしてください。
動画では実際に左右の脚を交互に動作していますが、上記で説明したトレーニングは姿勢維持ための一番初歩的なトレーニングです。(動画の前半で約1分20秒までを参考にしてください。)
次は軸足の股関節・膝・足首を可動させる事(トリプルエクステンション、以下T.E.)にフォーカスします。
1.上記、3.の姿勢がスタートポジションです。(youtubeのスタートポジションを指します。)
2.挙上しているE.F.の脚はキープしたまま、軸足の股関節と膝、足首を屈曲させて、臀部に力が溜まる(Loading)姿勢になります。=パワーローディング。 実際にはもう少し股関節が屈曲できれば良いですね。でも、股関節がもし硬い場合は、そのようなチェックポイントもコーチングで修正していく方が良いです。
3.そこから股関節を中心に軸足を瞬発的に真っ直ぐになるように、臀部を意識して、スタートポジションに戻ります。(=体幹の安定性と股関節の可動性(トリプルエクステンション)
※ エクステンションは通常「伸展」を意味します。
これらの簡単なトレーニングには、スプリントスタートという競技特性を意識し、円滑な運動連鎖が生まれる為の要素、つまり実際の動作に近づけて、身体の部位の役割を理解しながらトレーニングできる特徴があります。
普段から身体の各部位の安定性や可動性を意識してトレーニングする事で、試合中の瞬間的な動作時には無意識にスムーズな運動連鎖が可能となるのだと思います。
これはほんの一例に過ぎませんが、競技特性を活かした運動連鎖のトレーニングはたくさんあります。是非、研究してみてください!!
Image Credit: “David Wright (June 2012)” by Cbl62 – Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
>>Write By ROKIYA WASEDA
専門はストレングス&コンディショニング。プロ格闘技の選手及びキッズアスリートの指導が中心。それと並行して、アメリカの最新スポーツビジネスにおけるサービスを幅広く手掛けるネットワークが強み。現在、ELEMENT ATHLETIX、STROOPSなどを国内へ導入しライセンス普及を推進。また、スポーツに欠かせない身体パフォーマンス向上をデータで実証するコーチング事業を展開する株式会社CORE N’ CODEを設立し、日米の企業から様々なオファーを受けている。STROOPS Master Trainer, NSCA-CSCS