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2019.09.24 火

運動を通したADL 向上を目的とする、通所介護施設

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JR東日本スポーツ株式会社は、2013年より運動特化型の通所介護施設ジェクサー・プラチナジムを展開している。現在7施設を運営しているが、今後は保険外のサービスも充実させ、介護保険の破綻に備える。

【お話しを訊いた方】

JR 東日本スポーツ株式会社 事業推進部門 ヘルスケア事業部 担当部長 多田 厚氏

身体機能を向上させることに前向きな団塊世代がターゲット

JR東日本グループではシニアのなかでも特に団塊世代を重要なマーケットと捉え事業展開している。そして、これまで「高齢者」と一括りに捉えていた同世代について、詳細にセグメントしたうえでサービスを提供する必要があると考察した。また、同社のフィットネスクラブもシニア層が増えており、高齢者の健康意識が高いことがわかっていることから、プラチナジムは能動的に自分の身体機能を向上させたいと考えている人をメインターゲットとしている。

「独居世帯も増えており、特に男性に対してコミュニティの場を提供することの必要性があると考えています。この世代の方のなかには“介護”という言葉にマイナスイメージをもっている方も多いと考え、あえて名称に“ジム”と付けて通いやすいようにしています」

グループレッスンを主に提供運動が好きでない人を動機づけ

現在運営している7店舗のうち5店舗はJR沿線の高架下に位置する。施設は45坪程度で、ガラス貼りで外光を採り入れ、インテリアもカフェ風にしている。コトニア(こども+シニア)事業の一環として保育園に隣接している施設もある。

提供しているプログラムは、筋膜リリース、セルフコンディショニング、グループエクササイズ、尿失禁予防、認知機能向上トレーニング「アタマカラダジム」と個別トレーニングで、個別トレーニングはマシンを使用している。マシンはストレングス系7台、有酸素系3台で、介護用ではなくスポーツクラブなどでも使っているもの。特徴的なのは、クラス分けはしておらず、個別トレーニングの時間を除いて利用者は皆同じプログラムに参加すること。状態や目標によってスタッフがフォローし、強度や難易度を変えている。頻度も介護度や目標によって異なるが、週1〜2回の人が多い。

利用者の介護度は、要支援1,2、要介護1,2,3で、介護度によって2時間または3時間と自治体によっては利用時間が異なる。認知症を患っている人が全体の1/3程度で、症状の改善や交流のために家族から勧められて通っていることが多い。

「運動が好きではない人、今まで運動していない人を動機づけすることが必要だと思っています。そのためには、簡単で楽しく、効果が出ることが大切です。週に1,2回来るだけでも効果が出るプログラムにしているのと同時に、楽しんでもらえるような指導をしています。楽しければ施設外でも運動するようになり、より効果が出ます。残りの人生を楽しめるよう、価値観を変えたいのです。実際、見学に来て、体験してもらうと、よさをわかってもらえます。ほかのデイサービスにプラスして、身体機能向上を目的として来ている人もいます」

常駐しているスタッフは看護師とフロアリーダー(マネージャー)、生活相談員のほか8人程度。多くの施設は特定の部位に集中してリハビリを行うため、理学療法士が常駐しているが、同社はADL(日常生活動作)向上を目的としており、そのためには全身運動が必要だという考えで展開しているため、常駐はしておらず、プログラム開発など必要に応じて来てもらっている。

ほかに特徴的なのは、バスツアーやクルージングなどのイベントを行っていること。利用者の身近な目標を設定すると同時に、施設内では見えない利用者の身体機能の把握にもつながっている。

3 年目から利益率15%を達成、コストを抑え、保険外サービスへ

経営的には、7店舗平均で130 〜160名が在籍。2年目までに集客し、3年度目で年間黒字になっている。同事業開始から3店舗目までマシンや設備にこだわっていたが、4店舗目以降は介護保険が下がっていることから初期投資を抑え、順調に収益が上がっている。利益率15%というのを目安にしている。付帯事業ができるようになったので、今後はサプリメントやトレーニンググッズなどの物販も行っていく。

介護保険の破綻も見据えたサービスを展開していくことが今後の課題だ。
「現時点でも実費で通ってくださっている方もいますが、よいサービスを提供していれば、介護保険が適用されなくても通っていただけるのではないかと思います。また、本業で確実に収益をあげられるモデルができたので、空いている夜の時間に提供できるサービスを模索しています。それにより、破綻後も収益をあげられると考えています」

今後、元気なシニア層をメインターゲットとした地域健康ステーションも展開し、介護保険に依存せずに地域の心と身体の健康づくりを行っていく。

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