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ウェルネスの科学 第6回−

2015.11.24 火 オリジナル連載

ヘルスケア業界に突如現れた新星 “石川善樹”。本連載では、予防医学研究者・医学博士としての立場から見た、業界でのイノベーション創造に向けた考え方・ヒントを伝えていく。
【バックナンバー】
ウェルネスの科学ー
ウェルネスの科学 第2回ー
ウェルネスの科学 第3回ー
ウェルネスの科学 第4回ー
ウェルネスの科学 第5回ー

こんにちは。予防医学研究者の石川善樹です。

先日とても面白い論文を読んだので、ご紹介したいと思います。それは「長期間にわたって活躍できる研究者の特徴とは何か?」を調べた研究で、ノーベル賞受賞者を含む数十名の研究者を長年にわたって追跡調査したものです。

結論からのべると、次のような2つの特徴があったということです。

1)45歳までに5本以上の傑出した論文を書いている

2)平均して5回は大胆に研究分野を変えている

わたしが面白いなと思ったのは、2つめのポイントです。おそらくこれはビジネスなどでも同じことが言えるんじゃないかと推察します。たとえばスティーブ・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業演説で、何がよかったかはあとからわかるんだという「Connecting the dots」という概念を述べています。同じように研究者も、さまざまな研究分野に取り組んだことが、あとから結びついて、長きにわたる成果につながるんじゃないかと。

ではなぜ、偉大な研究者はかくも研究分野を変えることになるのでしょうか?わたしたちのイメージでは、研究者というものは、一心不乱に細部を追究しているイメージがあるので、研究分野自体を変えてしまうことは、学者としての本分を捨てるようにも思えるかもしれません。

その理由についてわたしなりに考えてみたのですが、おそらくそれは、“めざしているところが遠いからなのではないか”と思います。視点が高いと、当然いろいろなことが視野に入ってきます。つまり、はたから見ていると研究分野を変えているように思えても、当人からするときわめて自然なことなのかもしれません。

わが身を振り返ると、「はたして自分は、どれだけの高い視点をもって、目の前の細部を追究できているだろうか?」と反省させられます。今自分が見えているものはほんの一部なのだという自戒を胸に、これからも研鑽を積み重ねたいと思います。

>>>Write by Yoshiki Ishikawa

石川 善樹

予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。
NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法(マガジンハウス)』。