成功するマイクロジムの教育・ノウハウ -前編
2016.07.25 月 TR-キャリアビジョン2015年12月17日にR-body project大手町店を会場に開催されたマイクロジム経営セミナー。同社代表取締役の鈴木岳氏はじめ、独自のこだわりから立ち上げたマイクロジムを成功裡に運営する3名の講師が講演を行った。3者の講演からは、マイクロジム経営に必要な「集客方法」、「ビジネスモデル」、「教育・ノウハウ」の3つの要素を深く学ぶことができる。第3回は「成功するマイクロジムの教育・ノウハウ」と題して、株式会社R-body project代表取締役 鈴木岳.氏の講演をレポートする。
お客さまを“教育できる” トレーナーに
今日のセミナーでは、私の前に岩切さん(株式会社プログレッシブF97代表取締役)と高橋さん(株式会社nano代表取締役社長)の講義がありましたが、私にとってもお二人のお話はたいへん勉強になりました。岩切さんとは、岩切さんの前職時代からのお付き合いですが、当時から言っていることが変わっておらず、まったくぶれていないところが素晴らしいですね。これからマイクロジムを運営しようと考えている方も、まずはぶれない信念をもつことが、とても大切だと思います。岩切さんの「当施設のポジションは、“ホテル”ではなくて“塾”」にも同感です。
私は自店の運営を開始した当初、苦い経験をしました。当時は「ホスピタリティ」ということばが広くいわれていたときで、私たちも「クライアントファースト」ということばを掲げ「お客さまのためにできることをすべてやります」としていました。そんなある日、スタッフがお客さまから「お酒は飲みたいし、食事制限もしたくない。でもやせたい」と言われ、彼はなんとか希望通りにしてさしあげようと、「わかりました」と答えました。
でも、ダイエットは食事が基本ですから、やせるわけがありません。結局「通っているのにやせないじゃないか」と、クレームになってしまったのです。この経験から、本当の意味での“おもてなし”とは、トレーナーの技術・知識をふんだんに遣って、お客さまの身体の変化をサポートし、「ここに来てよかった」と思っていただくことなのだと気づきました。そのためには、私たちがやらなければいけないことと、お客さまがやらなければいけないことを明確にして、ときにはお客さまに対しても「それはできません」「それではだめです」とはっきりと述べ、教育していくことも大事なのです。
多くの本を読み、知識を増やそう
私は、トレーナーとして活動しながら施設を経営している立場から、経営者の方々に会う機会がたくんありま す。そのなかで、ある経営者の方にこう言われました。「経営なんか簡単だ。今から『イチローみたいになれ』と言われたら、それは無理だろう。でも、経営なんて本をたくさん読めば、ある程度できるようになる」 世の中には経営本が山ほどあります。30冊ぐらい読むと、大体書かれていることが同じなので、経営や成功するビジネスモデルについて、なんとなくわかってきます。
でも、実際に成功するかしないかのキーは、経営の仕方ではなく「やるか、やらないかにある」と、その方は言っていました。たくさんの経営本を読んでも「これ使えそう」「あれ使えそう」と、つまみぐい程度に一部だけ実行したり、読んでも何も実行しない人は成功しません。30冊に書いてあることを丸ごと実行するような意識が大切だと言われました。一方で、「成功者が出した経営本など信用しない。実際に会った人しか信用しない」という経営者もいます。その方がいうには、成功に近い後半部分をうまくまとめて本にしていることが多いので、「きれいな話しか出てこないからあてにならない」ということでした。
どちらにしても、私は、本はたくさん読んだほうがいいと思っています。新しいことを発見するためではなく、自分の考え方を整理したり、語彙数を増やすために必要だと思うのです。経営者になると、いろいろなところで自分のビジョンやミッションについて話す機会がありますので、話方のレパートリーが増えれば、それだけ聞き手にも伝わりやすくなります。
ちなみに、本日の私を含めて3人の講師の話を聞き、「すごい話を聞いた」と感じた方は、まだ独立には早いかもしれません。「そう思っていた」と、確認しながら聞いた方は準備ができていると思います。私は、独立すること自体は歓迎しますが、すべての方にとって独立が適しているとは思いません。
今日のセミナーが、それを見極める機会にもなったらいいですね。なお、皆さんがこれから独立して成功するために、業界のリサーチは絶対に必要ですが、リサーチからの考察通りに事が運びうまくいく、などということはまずないでしょう。そこにいかに独創性を組み込めるかが大事だと思います。かつて、日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸社長(当時)はこう言いました。「消費者に『何が食べたいですか?』 と聞くと『健康的なものオーガニック』『ローファットなもの』などと言います。でも、実際に売れているのはクォーターパウンダーなんです」お客さまのいうことをそのままうのみにしてはいけないということです。
かといって、お客さまのニーズを先読みしすぎてしまうと今度は理解されませんから、半歩先ぐらいを読み取ることを意識しましょう。リサーチして「流行りつつあるもの」「流行りそうなもの」、そういうものは大手企業に先にやられてしまうと思います。私たちが小さい馬力を使ってやるなら、遠くを見据えながらもニーズを少しだけ先取りしたものに挑戦することが大事です。では、次より当社について紹介していきます。皆さんにとって少しでも参考になればうれしいです。
<次ページ:小さな施設は「○○をやります」と明確にアピールするべき>