【NEXT 12月特集】世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス "イギリス"篇
2016.11.25 金 スキルアップ
ヴァージンアクティブ
保険で通える
イギリスのヴァージンアクティブが、民間保険会社のディスカバリーと提携して、生活者のフィットネスクラブの参加と定着を力強く推進している。ディスカバリーの保険に加入し、バイタリティプログラムに参加すると、ヴァージンアクティブの会費が50%割り引かれる。そこから、様々なインセンティブで健康的なライフスタイルが楽しめるようになっている。
まず、バイタリティプログラム参加者は、まずオンラインのアンケート形式の健康チェック(VitalityAge)で自分の健康状態を確認することで、100ポイントのバイタリティポイントがもらえる。その後もクラブを利用するたびに1回10ポイントが得られ、クラブの利用以外でも、ウェアラブルのフィットビットの歩数に応じてポイントがもらえたり、ジョギングやサイクリング、健康食品の購入でもポイントが得られて、年間最大2,080ポイントが得られる。ちなみに 2,080ポイントをすべてクラブ利用だけで獲得すると仮定すると、週4〜5回の利用までポイント対象となる。
ここで得られた年間のポイントにより、翌年のバイタリティステータスが決まる。バイタリティステータスは、保険料の割引率に反映される。バイタリティポイントが高い人から、ゴールド、シルバー、ブロンズ、ブルーとステータスが分けられ、シルバーステータスを維持すると保険料が維持され、ゴールドでは年々保険料が安くなる仕組みとなっている。そのため、フィットネス活動に参加すればするほど、保険料が安くなるので、人々がクラブの利用頻度を確保しようというモチベーションに繋げられる。
一方で、毎年十分にバイタリティポイントが獲得できない場合(フィットネス活動への参加頻度が減ってしまった場合)、翌年のステータスが下がる。ブロンズやブルーのステータスになると、前年より保険料の割引率が低くなり、保険料の支払い額が多くなる仕組みになっている。(ステータスがブロンズやブルーになると、保険料割引のメリットがなくなることから、保険の解約率も高まるが、保険会社にとっては、これまでのデータ分析からゴールドやシルバーの疾病率や死亡率が低いことが分かっており、利益面ではメリットが残る)。
イギリスでは、バイタリティプログラムのパートナーを一業種一社に絞っており、健康的なライフスタイルを持つ人の生活習慣の継続をサポートしている。たとえば、スターバックスでバイタリティポイントが使えたり、iwatchやエバンスサイクルズの自転車は割引価格で購入できるといった特典も得られる。
ディスカバリーの保険は、完全に民間保険であり、病気になったときにカバーされる医療サービスも、民間の病院に限られる。そのため、このプログラムの恩恵にあずかれる生活者は都心部を生活圏にしている人に限られるという限界はある。だが、仕組みで人々の行動変容が促され、フィットネス参加を継続している人の保険料や死亡率が低いことを実証できる仕組みとして、世界的に注目を集めている。同プログラムは、マイケル・ポーター氏が提唱する新時代のビジネスモデル「共有価値創造モデル(CSV)」として、ビジネススクールなどでも研究されている。
ヴァージンアクティブはリチャードブランソンによりイギリスでスタートしたが、現在までに10ヶ国245店舗を展開。南アフリカに128店舗、イギリスに60店舗、シンガポールに1店舗、オーストラリアに6店舗展開している。バイタリティプログラムは、ディスカバリー社の本拠地である南アフリカで1997年にスタートし、イギリス、シンガポール、オーストラリアなどヴァージンアクティブの店舗が多い国に進出している。
ディスカバリー社は、日本でも2016年7月に、住友生命とソフトバンクと「健康増進型保険」の誕生に向けた「JapanVitalityProject」を始動することを発表している。
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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.117
【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子 悟