FITNESS BUSINESS

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フィットネス新時代の幕開け-

2015.03.04 水 オリジナル連載

一人の日本人女性が日本からはるか9千キロ離れたアメリカ西海岸で活躍している。
名前は奥野亜矢。

ハイパーフィットネスでのクラブ支配人経験後、更なる高みを目指しフィットネスの本場であるアメリカへ渡米。大学でフィットネスビジネスを学びつつ、米国の高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部のグループエクササイズ指導、クラブマネジメント分野など、業界の第一線で職務経験を積んでいる。その奥野氏が感じたリアルなアメリカのフィットネス業界の風景を伝える。

私自身は日本のフィットネス業界に15年身を置きましたが、アメリカと日本との一番の違いは「いいものはイイ!」という柔軟な発想だと感じます。「シンプル」という言葉でも置き換えられますが、要は日本のようなカテゴライズ、「こうあるべきだ」という固定概念がありません。「フィットネスクラブにはジム、スタジオ、プールがなければいけない」「ヨガなどの各種カルチャースタジオは専門性に特化しているものだ」「パーソナルトレーニングジムはトレーナーが運動指導を提供するための場所だ」など、日本の業界はとてもクリアな線引きが要求されているような気がします。

日本とアメリカの大きな違い

ここ南カリフォルニアではそうした既成の価値観を感じることはありません。本当に様々な規模の、数多くの業態を目にします。特に私が利用したなかで印象深いのは、ロッククライミング+ヨガ、ホットヨガスタジオ+ブートキャンプ、パーソナルトレーニングジム+スピニングなど、「人気があるから取り入れてしまおう!」というフュージョンクラブが多くあることです。利用者も、どちらか一つに惹かれて入会しても、同じ場所にあるという手軽さから両方を利用するケースが増え双方のメリットを体感することが出来ます。クラブ側は客単価の向上も狙えるという相乗効果が期待出来ます。

確かに、日本とアメリカのフィットネス人口、業界成熟度は違います。アメリカの方がマーケットも大きく、所得格差の明確な社会なのでマーケティングもしやすいという違いがあります。日本の方が経営戦略の策定、また運営難易度も高いと言えるでしょう。しかし、そこで別物だと排除するのではなく、発想を転換し、付加価値をつけることで差別化、オンリーワンになるチャンスは十分にあると思います。まだまだ多くの潜在需要がある日本のフィットネス&ビューティ業界。2015年に新たなビックムーブメントが起こることを期待しています。
以下に日本のフィットネス業界でムーブメントを起こすための私なりのヒントをご紹介させていただきます。

多様化するフィットネスクラブーアメリカの若年層を惹きつけるクラブとは

月会費10ドルという衝撃の低価格を売りにするフランチャイズチェーン「プラネットフィットネス」から200ドルを超える高級クラブ「イクノックス」や「ベイクラブ」まで、多様なフィットネスクラブがアメリカにはあります。オバマケアが導入されてもやはり高額な医療費の影響もあり世代を問わず健康、とりわけ運動への意識はとても高いアメリカ。日本で“フィットネス離れ”が叫ばれる20〜30代もフィットネスクラブ参加率、または日頃からアクティブに身体を動かす意識は高いと言えるでしょう。

図1:日常的に身体を動かさない人の割合(米国:年代別)
参考文献: Physical Activity Council"2014 Participation Report"

図2:運動種目別参加率(米国)
参考文献: Physical Activity Council"2014 Participation Report"

アメリカで人気のクラブとは

一般的にはやはり20〜30代の若年層は圧倒的にバジェットクラブや月会費$50ドル以下のクラブ利用者が多いですが、今回はユニークな魅力で人気のクラブをご紹介します。まずは2001年より急成長中、全米で100クラブ以上を運営するユニークなクラブ「UFC GYM」。こちらは総合格闘技で有名なUFCのブランドを掲げ、男女問わず若年層を中心に人気のクラブです。UFCアスリートのトレーニングメソッドをベースに、ファンクショナルトレーニング、TRX、グループフィットネスやスピニング、キッズ格闘技など、様々な種類のワークアウトをミックスし提供しているのが特徴です。LA Boxingを2013年に買収し、現在さらに店舗数を拡大させています。月会費も45ドルから120ドルまでと比較的手頃なところも成功の要因だと思います。

そして日本でも事業展開している「ヨガワークス」はこちらアメリカでも人気で、ブランド力があり、多くのヨギーに支持されています。ピラティスはもちろんのこと、TRXが導入されている点も特徴と言えるでしょう。東京都心を中心に多くの若者で賑わうロッククライミングジムは、アメリカでも人気があります。北カリフォルニアで4店舗を展開する「Planet Granite」南カリフォルニアの「Mesa Rim Climbing & Fitness Center」は、ロッククライミングウォールのみならず、フィットネスマシンやヨガスタジオを併設し、ワンストップで「楽しむ」ことと「鍛える」ことを両立できる点が魅力です。

今回ご紹介したクラブから共通して挙げられる、若年層へのフックとなるキーワードは、シンプルに「楽しむ」ことだと思います。「辛い運動を目的のために黙々とこなす」よりも「楽しみ」ながら身体を動かすことが、これからの時代にマッチしたウェルネススタイルといえるのかも知れません。

>>>Write by Aya Okuno

奥野 亜矢

ロサンゼルス在住。自身の柔道家としてのアスリート生活の経験から、「大好きなスポーツ、フィットネスを通じて多くの人を幸せにしたい!」と志しフィットネス業界へ。
コナミスポーツ、ハイパーフィットネスにてトレーナー、グループエクササイズディレクター、そしてクラブ支配人を経験。”フィットネスの本場 アメリカ”でビジネスキルを磨き、挑戦するため渡米。高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部にてグループエクササイズ指導、クラブマネジメントに携わる。