“世界のフィットネスビジネス、その舞台裏の風景IV”
2015.10.16 金 オリジナル連載「世界一のクラブのゼネラルマネージャーになる」という夢を実現するために、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウエスタンアスレチッククラブスにてクラブのゼネラルマネージャーを歴任。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、日本のフィットネス業界の地位向上に向けて奮闘している石川 友行氏に”世界のフィットネスビジネスとその舞台裏”の風景を伝えてもらう。
日米のフィットネスクラブマネジメントを比較すると、米国のマネジャーには、必須で日本のマネジャーには必須ではないスキルが存在する。それは、米国の業界で俗に言う、「セールスマネジメント」というスキルです。なぜ、日本のマネジャーには、このスキルが必要ではないのか?それは「日本のクラブには、マネジメントするセールススタッフが存在しない」からです。
この事実は、日本でしか、クラブをマネジメントしたことがない人には理解できないコンセプトであることが、実際に日本の業界で勤務してみると深く理解できます。米国のクラブコンサルタントや、米国で勤務経験のある私にとって、セールススタッフのいないスポーツクラブは異質です。どれくらい異質かというと、エンジンの無い車、翼の無い飛行機もしくは、馬のいない馬車、バッターボックスにバットを持たずに立っているバッターくらい異質です。
日本のクラブに求められる運営体制とは
この話を日本の数々の経営者の人々と、過去20年間話をして、色々な現場のマネジャーの方々とも議論をしてきましたが、セールス専任スタッフが急激に普及しているという業界トレンドは聞かないので、これは必要の無いものと結論づけているのか?少なくとも、今、セールススタッフをおいて、それをマネジメントするスキルは、日本のマネジャーには不必要なスキルです。
米国のマネジャーは、入会の予算が達成できないと、セールススタッフメンバーに電話やDMを出して、紹介を喚起して来場者を増やし、過去のリードに電話やDMを送付して入会を促すように伝えます。また、そのプロセスと行動を実際にマネジメントしていきます。日本のマネジャーは、どうでしょう?割引額を増やして、キャンペーンを延長し、チラシの数を増やすのが一般的でしょう。また、チラシを見て来場した人の対応についてマネジメントします。
この現状は、日本のフィットネス業界がいまひとつ伸び悩んでいる理由であると思っているのは、私だけでしょうか?あまりクラブ内の組織について言及する人はおらず、フィットネス商品そのものや施設関連、業態などの話をする経営者が多く、実際の運営や運営組織に関して昔からの習慣が変わらないのが日本の業界の現状のような気がします。結局は現在の運営手法からさほど乖離せず、イノベーションが起こらない環境ということなのでしょうか?
業界を今後も繁栄させるためには、実際のクラブの現場において集客を担当する営業人材に投資することをしない限りは、急激に参加率に影響を及ぼすことは難しいのではないかと常に感じています。
“セールスマネジメント”このスキルは、今最も日本のクラブマネジメントが必要としているスキルであると個人的には思っています。
>>>Write by Tomoyuki Ishikawa
石川 友行
1996年、「世界一のクラブゼネラルマネージャーになる」という夢を実現するため、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウェスタンアスレチッククラブスにて3クラブのゼネラルマネージャーを歴任する。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、米国のクラブ経営、オペレーションを紹介した。’09年に日本に帰国後、株式会社東急スポーツオアシスに復職し、オアシスラフィール恵比寿のマネージャーを務め、そのほか2店舗の統括マネージャーを担当。現在はクラブツーリズム株式会社の顧問として新規事業部に所属しながら、日本のフィットネス業界の地位を向上させるべく、奮闘する。