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“地域の課題を解決するサービスを提供する セントラルスポーツ株式会社

2018.11.25 日 オリジナル連載 スポーツクラブ情報

現在、グループ会社を含め35軒の運営受託を行っているセントラルスポーツ株式会社(以下、セントラルスポーツ)。その実績を活かし、2020年のオリンピックイヤーに向けて、さらに受託施設数を伸ばすべく、取り組んでいる。

ポイントは「地元目線」と「皆さんに共感いただける提案」

指定管理では、5~ 10年ごとに更新時期が訪れる。一般的に6月ぐらいに公募が出ると、そこから提案書や一次審査の準備など、慌ただしい数ヶ月が訪れる。

「その地域や施設の状況は? どのような問題や課題を抱えているのか? それはなぜか? 我々がその課題解決と改善のためにお手伝いできることは何か? これらの点を提案書およびプレゼンテーションでも明確に説明できることが大切です。事前にその地域の特性やニーズをよく把握・分析することはもちろん、当社が受託している類似施設での事例を取り上げ、『○○のような案件にこう対応したところ、○○が改善した。だから、この施設でも活きるはず』と伝えると、相手も真剣に聞いてくれます。なお、前提として資料や説明はわかりやすく簡潔であることも大切です」

その施設を実際に利用してみることはもちろん、地域特性を知るためにその地に何度も足を運び、競合の把握や、さらには行政の担当者のもとを訪れるなど「泥臭い行動こそ大切」(安藤氏)になる。担当者とよい関係を築くことで、向こうから新たな事業提案を受けることもあるといい、同氏は「担当者は一般的に2~3年で変わってしまうが、常に密な関係を築く努力が大切」と語った。

受注獲得後は、常に「利用者が楽しめる」「効果を実感できる」「地域の皆さまに継続的に通っていただける」ことに重点を置いたサービス提供と、利用者の反応を見ながら、その地域に合った内容に最適化していくことが大切になる。この点においては民間施設の運営においても同じであろうが、プログラムなど新たなレッスン、サービスの導入となると、大きく異なる。都度、行政への確認が必要になるからだ。

「その地域の条例などもありますので、簡単にはいかない場合もありますね。また、行政の方が特に気にかけるのが、公平・平等さと安全・安心であることの2点です。あまり人気がないレッスンでも、『〇〇な方のために残しておいてください』や『〇〇な方のためにこういう機器や設備も導入できないだろうか?』とお願いされることもあります」特定のターゲットに偏ることなく、幅広い人々が快適に利用できる施設づくりが大切になるということだろう。

一方で、逆の例もある。ある施設では、直営店舗で導入している遠赤外線パネルをスタジオに導入することを提案。これにより、人気のホットプログラムを提供できるようになった。当初は「天井部が熱くなり過ぎて危険では?」「火事の元にならないか?」など安全面が憂慮され、なかなか前向きに検討してもらえなかったが、直営店舗での実績と、公共施設ではあまり例のない設備導入が利用者増につながる点を粘り強くアピールすることで許可が出た。結果、女性の利用者が増え、集客増に成功したという。

金額より「内容」重視の傾向にシフト

一時期、盛り上がりをみせていた指定管理であるが、受託までの準備の大変さや、行政側の「内容より金額重視」の考えから、「せっかくのノウハウを活かすことができない」と、手をひく企業も出始め、近年はやや落ち着きをみせているように感じるが、かつてと比べ、行政側の対応はどうなっているのだろうか。

「近年は事業収支とともにその裏付けとなる提案内容を深く見られる傾向になってきていると思います。今は、人件費や水道光熱費、工事(建築)費などあらゆる費用が値上がりしていて、管理運営コストを下げることが難しい時代です。それでも下げるとなると、必要なものまで省くことになり、『安全』と『サービス』の低下になりかねません。そのことを行政も危惧しているようです。

また、公共施設は地域のサークルや、行政の外郭団体・競技団体などがよく利用するので、そのような関係団体との連携を築こうとする姿勢、地域貢献に対する積極性なども重視されてきているように思います」最後に、行政からの問い合わせについて聞いたところ、「近年は増加傾向にある」と言う。それには、公共施設の老朽化への対応、施設整備費や運営費の縮減、医療費などの財政負担増、スポーツ実施率向上による健康寿命延伸など、地域が抱える課題解決のために、民間の力をうまく活用したいと考える自治体が増えていることが挙げられる。

「建物の損壊や設備の故障によって施設が使えなくならないよう、ましてや施設の瑕疵による人身事故が起きてからでは遅いので、『建て替えを検討したい、新たにこういう施設をつくろうと思うが、どうでしょうか?』という相談も増えました」以前からすると、より行政側が民間を頼るかたちになっているようだ。

金額重視より内容重視に変わってきたことで、民間も自社のノウハウや技術をアピールしやすくなったともいえ、状況はよい方向に向かっているようだ。