多くの地域で、コロナウイルスによる外出自粛要請が2ヶ月目に入り、企業や政策立案者は経済を再開する時期や方法を検討し始め、いくつかの国では、米国の州と同様に、特定の状況下で徐々にビジネスを再開することを検討している。また、中国を含む各国では、1ヶ月以上前から厳しい規制を段階的に緩和して営業を開始しており、スウェーデンや台湾などの国では終始営業を続けている。
フィットネスクラブの再開には、初期段階における、広範囲なソーシャルディスタンスと清掃の強化が必要とされている。
現在、国際的なガイドラインや各国のガイドラインでは、公共の場では少なくとも6フィート(約2メートル)離れた場所にいることが推奨されているが、それにもかかわらず、事業を再開する場合には、これ以上の距離をとる必要がある。フィットネスクラブは、新しい清掃方法をまとめ、これらの計画を実行するのに十分な人員と物資を確保する必要がある。
ただし、どのような計画においても、再開の決定は、国、地域、州、地方自治体からの最新の情報に基づいて、再開のタイムテーブルや再開時に実施しなければならない制限事項を遵守することが必要不可欠だ。
ここでは、いつ、どのようにフィットネスクラブを開くかを計画する際に、経営者が自問すべき項目を18個紹介する。
これらの項目を4つのカテゴリーに分類すると、下記のとおりだ。
◯抑制施策について
◯清掃および衛生管理について
◯スタッフの配置について
◯オペレーションについて
1. 自分たちのクラブが、ソーシャルディスタンスを保つために一度に施設に入る人数を制限し、これを監視し施行するにはどうすればよいか
補足:ピュア・インターナショナル・グループCEOのコリン・グラント氏によると、中国でクラブがオープンした当初は、会員は90分単位でクラブへのアクセスを予約することができ、その間の1時間はスタッフがクラブ内を清掃していた。政府が制限を設けている場合は、スタッフは一度にクラブに入る人数を考慮する必要がある。
2. 極端にソーシャルディスタンスを取ってでも、グループエクササイズを再開するかどうか
補足:もし再開するのであれば、そのクラスが器具やスペースの共有を避けるように構成されていることをどのようにして保証するか
3. オンラインでのグループクラスやパーソナルトレーニングは継続するのか、クラブを再開した場合、オンラインでのレッスンにどのような影響があるのか
補足:例えば、リスクのあるグループ(高齢者、慢性疾患のある人)は、すぐにクラブに戻ることができない可能性の方が高いだろう。オンラインサービスはこれらのグループに大きなメリットをもたらす可能性がある。再開に向けたプランニングは、オンラインサービスが今後のプランにどのように適合するかを検討する良い機会となるはずだ。
4. カーディオマシン、フリーウエイトエリア、ロッカールームやプールエリアなどのクラブ内で、ソーシャルディスタンスをどのように取るようにするか
補足:クラブによっては、すべてのマシンの上にタオルや注意書きを置いたり、安全であればマシンのプラグを抜いたり、スイッチを切ったり、フロアーから移動させている場合もある。フリーウエイトエリアや動きがより流動的なエリアでは、ソーシャルディスタンスを保つことがより困難になるかもしれない。
5. 特定のエリアに人が集まらないようにするために、ポリシーや手順をどのように変更するか
補足:例えば、通常のチェックインの設定では、人が密集し、適切なソーシャルディスタンスを保つことが不可能になるだろう。再開したクラブの中には、ソーシャルディスタンスを保つために、トイレ以外のロッカールームを閉鎖しているところもある。
6. スタッフはどのくらいの頻度でマシンや外観を掃除するのか・いくつかのグループスタジオを提供している場合、クラスの合間にどのように掃除をするのか・それぞれどのような清掃用品を使用するのか
補足:清掃マニュアルや清掃スケジュールの概要があれば、スタッフの調整や必要な物の補給がやりやすくなるだろう。
7.フロアから取り除いた方がいい掃除のしにくいものはあるか
補足:例としては、バンド、ハンドウエイト、ヨガブロック、ストレッチ用のマットやタオル、特定のタイプのフォームローラーなどが挙げられる。
8. 紫外線や噴霧洗浄など、追加のクリーニング手順はあるか
補足:それが新たに補給すべきものやスタッフの配置にどのような影響を与えるかの検討が必要だ。早めに業者の調査を開始して、計画の実施に必要な備品を確保。さらに、噴霧洗浄などの特定の手順に従業員が立ち会うことができるかどうかを検討し、できない場合は、作業を行う時間をどのように設定するかを検討するべきだろう。
9. 清掃を担当するスタッフを、どのように感染から守るか
補足:例えば、手袋やフェイスカバーの着用が推奨もしくは義務付けられているか。地域によっては、法律で義務付けられているところもあるが、個人に判断を委ねているところもある。中国では、クラブのスタッフと会員はマスクを使用している。しかし、世界の多くの地域では、医療従事者用のマスクが不足しているため、それ以外の人々がマスクを手に入れることができないという現状がある。
10. 会員や清掃をしていないスタッフにも、フェイスカバーなどの防護服の着用を要求するか
補足:CDC(米国疾病予防管理センター)は現在、ソーシャルディスタンスを保つことが難しい公共の場では、布製のフェイスカバー(主にマスク)を着用することを推奨している。 新型コロナウイルスは、症状がなく、感染していることを知らない人々によって感染する可能性があることを考えると、マスクの着用はより感染リスクを下げることになる。
11. どのようにして会員に良い清掃習慣を伝え、実施するか
補足:例えば、メンバーが使用前と使用後に器具やスペースを清掃し、定期的に手を洗い、咳をカバーするようにするにはどうしたらよいか。適切な清掃・衛生習慣を会員が簡単に行えるようにするためには、どのような工夫ができるだろうか。
12. リニューアルオープンを実施するためには、何人のスタッフが必要か
13. どのスタッフをリニューアルメンバーとして配置するのか、責任や役割の変更をどのように伝えるか
14. 復帰したスタッフを新型コロナウイルスの感染から守るために何をすべきか・もし検査が可能であれば復職前に従業員のPCR検査するか・従業員の健康状態を毎日モニタリングするか(例:体温チェック)
15. ウィズコロナ、もしくはアフターコロナの環境でクラブが再開する前に、従業員にどのような追加研修が必要なのか
16. クラブのさまざまなセクションの再開時期をどのように設定するか・一度にすべて再開するのかそれとも段階的に再開するのか
補足:コリン・グラント氏によると、中国では、クラブは第一段階でメインの設備を再開したが、ロッカールーム、シャワー、プールは閉鎖されたままだった。一部のクラブでは、ロッカールームはバスルームのためには開放しても、着替えのためには開放しないことを選択している。クラブのどの部分を最初に開放するかを検討し、その後の再開のスケジュールを簡単にまとめるべきだろう。
17. 制限を伴う再開における新たなニーズに対応するために、現在のサービスをアップグレードしたり、変更したりする必要があるか
補足:例えば、クラブにいつ来るかを会員に予約させる必要があると判断した場合、現在のソフトウェアでそれをサポートできるか。
18. 閉鎖中に実施したサービスで、再開後も継続するものはあるか
補足:これらのサービスが一般の人が利用できるかどうか、価格はどのように設定するのか、既存のサービスとの連携は誰が取るのかを検討する必要があるだろう。
これらの18の項目は、クラブ運営者やオーナーが再開計画を練る際に、今まさに頭を悩ませている多くのトピックの一例に過ぎない。
IHRSAは、世界の保健当局者や政府機関と協力して、利用可能な最善の科学に基づいて重要な考慮事項を特定していく。また、世界中のクラブからベストプラクティスを収集し、フィットネスクラブ再開計画を支援するための清掃・衛生・運営に関するリソースをさらに開発していく予定だ。
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