【シニアマーケティング】らくティブ赤羽-「はざまシニア」をターゲットに運動・栄養・交流をワンストップで提供
2017.03.18 土 トレンドサービス【シニアマーケティング】
年々、日本の高齢化は進み介護予防ビジネスが大きな広がりをみせている。これに伴い、高齢者特化型ジム、デイサービス施設、地域支援事業の受託などを行うフィットネスクラブ運営事業者も増えている。本稿では、高齢者層にフォーカスしたプレイヤーが提供するプログラムと施設を紹介する。
「はざまシニア」をターゲットに運動・栄養・交流をワンストップで提供
昨年11月株式会社東急スポーツオアシス(以下、東急スポーツオアシス)は、東京都北区赤羽に同社初の大人のための健康サロン「らくティブ赤羽」をオープンした。フィットネスクラブに通うほどアクティブではないが、シニア住宅や介護住宅に入居するほどではない「はざまシニア」をターゲットとした新規事業として運動・栄養・交流を柱に事業を展開している。
【今回お話しを伺った方】
株式会社東急スポーツオアシス ヘルスケア事業推進部 シニア事業開発推進 マネージャー 齊藤 卓氏
従来とはまったく異なるアプローチ方法を選択
同サロンは北区の赤羽駅から徒歩4分ほどのダイエー赤羽店の2階にある。北区は65歳以上の高齢者の割合が25%以上と、東京23区のなかで最も高齢化が進んでいるため、東急スポーツオアシスでは高齢者にとって、日常的に利用する場所に施設が立地することは極めて重要であると捉えていた。
ダイエー赤羽店は競合との差別化のため「食と健康」をコンセプトにしており、お互いの事業理念が合致。両社にとって相乗効果が期待できる場所であると判断し、出店を決めた。
同サロンの延床面積は約40坪ほど約20坪のラウンジ兼フロントと約20坪のスタジオがある。スタジオでは、筋力減退に伴う運動機能低下の抑止を目的とした「パワトレ」、認知症予防向けの「脳活ウォーク」などの運動プログラムを提供。また、栄養バランスの取れた献立づくりにをレクチャーする「健康レシピ 講座」を隔週で開催。
同講座内では食材選びの目を養うプログラムとして、実際に管理栄養士とともにダイエー店舗内の売り場に赴き、その場で栄養価の高い食材選びの基準などの解説を行っている。
ラウンジ兼フロント
「入口となるラウンジ兼フロントは、扉をあえて設置せずに、どなたでも気軽に入ってきやすい雰囲気をつくっています。また、レッスン後にお茶会の時間を設けることで積極的にお客さま同士の交流を図っています。たまたま、こうしたお茶会の様子を見た買い物中のお客さまがご家族に勧めて、ご入会へつながるケースも見られます」こう語るのは東急スポーツオアシス ヘルスケア事業推進部シニア事業開発マネージャーの齊藤卓氏だ。
同社にとって今回の事業は、対象顧客へのアプローチ方法や提供価値が従来のフィットネスクラブとは大きく異なる。齊藤氏は事業を始めるにあたり、100名を超す高齢者の方に事前ヒアリングを実施し、徹底的に顧客ニーズの理解に努めた。
「今回、ターゲットに設定した顧客層は『自身の健康に関して興味はあるが、運動するためだけにわざわざ施設に足を運ぶようなことはしない』という方です。このため、当サロンでは『健康のために運動する場所』ではなく、『他者との交流と健康プログラムを楽しむ場所』という、これまでのフィットネスプレイヤーとはまったく違うポジショニングをとっています」(齊藤氏)
順天堂大学と共同開発した運動プログラムを提供
一方で、提供する運動プログラム内容にはこだわりをみせる。運動をあえてメインコンテンツに見えないようにしているが、運動プログラムはフィットネスクラブで提供されるプログラムと同等以上のものである。
同サロンで提供する「パワトレ」は順天堂大学の内藤久士教授と町田修一先任准教授が中心となりCOI(※)プロジェクトの一環として開発されたロコモ予防のためのトレーニングプログラムである。マシンなどは一切使用せず、自重のみで行う。ストレッチから始まり、全身を使った筋力トレーニングを行い、最後にストレッチを行い終了となる。
「はじめてサロンに来る方は運動することに対して不安をかかえています。果たして自分にできるのだろうかと。しかし、スタッフと他の会員からのサポートを受けながら、何度か運動プログラムに参加いただくことで、『身体が軽くなった』『今まで手が届かなかったところに手が届くようになった』『表情が明るくなった』など運動の効果を着実に実感していただけています。私たちの狙いはまさにここにあります。
栄養指導プログラムなど、ラウンジでセミナーを開催
これまで運動をしたことがなかった方が、運動の効果を実感していただくことで、ご自身の周りの方に対してサロンの存在を口コミで広げてくださるようになり、新規入会者が増えるという好循環が生まれるようになってきています」(齊藤)
同社では、これまでほかのどのプレイヤーもアプローチできていなかった「はざまシニア」を着実に取り込みつつある。今度は東急グループ沿線を中心に、高齢者の多い地域に同サロンを展開していくことを検討しており、今後も同サロンの動向に注目である。
※COI(センター・オブ・イノベーション)プロジェクト
10年後の目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型のチャレンジング・ハイリスクな研究開発を文科省が最長で9年度支援するプログラムで、順天堂大学は平成27年より立命館大学と共同で採択。
【企画・取材】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子 悟