FITNESS BUSINESS

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【シニアマーケティング】ラクっちゃ-区の介護予防事業で施設利用者の自立支援をサポート

2017.03.19 日 トレンドサービス

【シニアマーケティング】
年々、日本の高齢化は進み介護予防ビジネスが大きな広がりをみせている。これに伴い、高齢者特化型ジム、デイサービス施設、地域支援事業の受託などを行うフィットネスクラブ運営事業者も増えている。本稿では、高齢者層にフォーカスしたプレイヤーが提供するプログラムと施設を紹介する。

区の介護予防事業で施設利用者の自立支援をサポート


東京都港区にある「港区立介護予防総合センター ラクっちゃ」は区が主導して開設した介護予防事業を専門に行う施設だ。マシントレーニングルームに加え、研修室なども充実している。同施設はセントラルスポーツ株式会社(以下、セントラルスポーツ)が指定管理者として施設運営を行っている。

【今回お話しを伺った方】
港区立介護予防総合センター長 國井 実氏

港区最大の複合施設内で介護予防事業を展開


セントラルスポーツが介護予防事業を始めたのは、介護保険法で自治体に介護予防事業が義務付けられた2006年から。運動が介護予防に効果があるというエビデンスをもとに、これまでのフィットネス事業での経験が活かせると考え、着手した。同社は70ほどの自治体から地域支援事業を受託しており、地域支援事業で行う介護予防プログラムは、東京都健康長寿医療センターが提唱する包括的高齢者運動トレーニング(CGT)に基づき、運動器の機能向上、口腔機能向上、低栄養予防、認知症予防などがある。

東京都港区の田町駅から徒歩5分にある「みなとパーク芝浦」は地下1階地上8階立ての港区最大の複合施設。1階には区の総合支所があり、平日は行政手続きのために多くの区民が訪れる。3階から上にはプールやトレーニング施設などを展開する港区スポーツセンターがある。介護予防総合センター ラクっちゃは2階に施設を構え、65歳以上の区民であれば誰でも無料で利用することができる。

s_IMG_2348運動に関する相談会も定期的に開催

同センターでは地域支援事業に加えてトレーニングマシンを利用した運動や、同区オリジナルの介護予防体操「みんなといきいき体操」などの運動プログラムの提供、栄養や食事に関する教室も定期的に開催。また、「英会話教室」や「タロット占い」など、運動には直接的に結び付かない教室も積極的に開催している。

「運動ありきでの訴求方法では、はじめから“運動をしたい”と思っている方にしか来ていただくことができない施設となってしまいます。運動以外で高齢者の興味を引くような教室を開催することによって、これまで運動に関心がなかった高齢者層に対しても、積極的に施設の利用を促してます。施設の認知拡大に向け発刊している季刊誌『ラクっちゃ通信』の表紙や内容構成も読みやすいデザインにするなど、多くの方に手にとっていただけるように工夫しています」(國井氏)

施設利用者の自立支援に向けて


施設内には壁にミラーが設置されたスタジオ型のトレーニングルーム、11種19台のマシンが並ぶマシントレーニングルームに加え、座学教室を行うための研修室も2部屋用意されている。生活機能の低下がみられる、いわゆる「フレイル」の方に対しては下半身の筋肉を中心としたマシントレーニングや、椅子に座った状態で行う運動を勧めている。

港区オリジナルの体操運動「みんなといきいき体操」は、同区歌に合わせて全26種類の動きを取り入れたプログラムとなっており、椅子の上で足腰の筋力向上と身体のバランスを意識した運動を実施する。一方、比較的元気な方に対しては自分に合ったマシントレーニングを継続してもらえるように促しており、同施設以外の場所であっても自立的にトレーニングを行うことができるようになってもらうことを目指している。

s_IMG_2347スタジオでは運動を中心とした各種プログラムを日々開催している

港区内には同施設以外にも「いきいきプラザ」と呼ばれる介護予防や健康づくり、区民の交流を目的とした施設が点在している。同社では、これらの施設利用も積極的に推進しており、区全体での介護予防事業の底上げを図ろうとしている。

「当施設の最終的なゴールは、一人でも多くの方に施設か“卒業=自立”をしてもらうことです。当施設で効果的な運動手段や、食事方法などを学んでいただき、ほかの施設やフィットネスクラブでも自らの力で運動を行うことができるようになっていただきたいと考えています。そのため、トレーニング中も過度にサポートすることなく、マシンの重量設定や回数なども自身で決めていただくようにするなどしています」(國井氏)

政府は財政的な理由から要支援認定者を介護保険対象から外したいと考えている。その際、非要支援認定者に対して自立的に運動習慣をつけてもらい、高齢者一人ひとりが積極的に介護予防に向けた日常的な運動習慣をつけていく必要がある。

今後、高齢化が加速する日本社会において、同施設が担う役割は一層重要性を増すだろう。



【企画・取材】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子 悟