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【NEXT 3月特集】 マインドフルネス ヨガ&ピラティス "Pilates"篇

2017.02.25 土 スキルアップ

【Pilates】

CASE #1 - 第二世代ピラティスティーチャー櫻井淳子さんに学ぶマインドフルネス
 
CASE #2 - ピラティススタジオを展開する株式会社ぜんにおけるマインドフルネス
 
CASE #3 - ピラティスの大手流派STOTTピラティスにおけるマインドフルネス
 
CASE #4 - 生理心理の研究を行うピラティスティーチャー高田香代子さんに学ぶマインドフルネス
 
CASE #5 - 米国でピラティスとヨガ両方に精通するトップインストラクターゾーイ・トラップさんの特別インタビュー

CASE #4 生理心理の研究を行うピラティスティーチャー高田香代子さんに学ぶマインドフルネス


日本を代表するピラティス指導者の一人であり、ピラティススタジオの経営者であり、研究者でもある高田香代子さん。

ピラティス大手流派の一つピークピラティスにおける、世界のリーダーシップチームの一員として、ピラティス市場の拡大に尽力してきている。現在、大学院で検証を進めるピラティスによる心理や感情への効果から、ピラティスのマインドフルネス効果に改めて注目している。

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ピラティスが感情に与える効果を検証


高田さんは2005年に日本で一早くピラティス専門スタジオ「ピラティスアライアンス」を設立、2006年からはピークピラティスライセンストレーニングセンターとして、日本に数多くのピラティスインストラクターを輩出してきている。

その高田さんはここ数年、大学院の学生生活も続けている。修士課程で体育学、MBAを取得したことに続き、大学院で心理学の研究を進めている。現在の研究テーマは、「ピラティスによる、生理的心理的効果について」。

まさにピラティスのマインドフルネス効果の研究である。その経緯についてこう説明する。

ピラティスの価値は、指導者や関係者たちは体験から実感として分かっているものの、その効果が、インナーマッスルへの効果だったり、脳への刺激による感情や心理的な効果だったり、測定が難しいものばかり。世界的に見ても、研究実績が少ない現状があります。ヨガと比べても、研究論文の数はまだまだ少ない。

それでも、ピラティスの効果はマインドフルネスの効果と同様に、現代社会に必要とされるものばかりだと感じています。そこで、今は、ピラティスをすることによる感情の変化、自律神経や脳への刺激に着目して研究を進めています。

高田さんが筑波大学との共同研究で2016年9月の体力医学会で発表した論文「短時間のピラティス実践が成人女性の気分に与える一過性効果」では、近年こうした学会が焦点を当てている自律神経や脳に関するテーマでの新たな研究結果として注目が集まった。

研究では、ピラティスとストレッチによる気分、感情の違いを測定。主な結果は、両方ともネガティブな感情は抑制されるものの、ピラティスでは顕著にポジティブな感情が高まる一方で交感神経が抑制されるという結果が出た。ピラティスは厚労省でも推奨されている4メッツ以上の強度を確保したのに対して、ストレッチは2メッツ程度の強度であることも確かめられた。

これらの結果を予備的調査として把握し、「筋肉を使うこと」による感情や脳への効果に注目して、研究を進めている。ある別の認知症に関する研究では、ダンスとチェスでの認知症予防要因を比較したところ、ダンスのほうが効果が高いことが報告されている。これらのことから、身体の動きを伴うほうが、脳への刺激が得られやすいと推測している。

ピラティスは、瞑想初心者向きのマインドフルネス手法


高田さんはこうした視点からマインドフルネスについて考察すると、マインドフルネスの方法としてよく紹介される「座った姿勢で、呼吸や今の自分に意識を向ける」よりも、ピラティスで筋肉に意識を向けるほうが、瞑想初心者には分かりやすくマインドフルネス効果が得られるのではと推測する。

特にマインドフルネス効果の中でも、「集中力が高まる」「生産性が上がる」といった効果は、副交感神経が優位にありながら、ポジティブな感情が生まれた状態で、高田さんのピラティスの実験で確認された状況に通じる。また、マインドフルネスもピラティスも、その場で即効性や達成感が感じられない分、継続のモチベーションが得られにくい側面もある。

高田さんは、ピラティスでは身体が変わるという効果もあることから、心と身体にバランス良くアプローチできることで継続しやすいのではと提案する。ピラティスはエビデンスがまだ少ないものの、マインドフルネス同様に、生産性の向上や、認知症の予防など、今後の日本社会の課題解決に繋がる可能性を秘めている。

高田さんはそれを実証し、多くの人がピラティスの価値を享受できることを目指して活動を続ける。


【プレピラティス】

ピラティスワークアウトの前に5分程度で行うエクササイズ。関節の動きを確認する、筋肉の働きを確認する、筋肉や身体の使い方を感じるなどの目的で行う。

身体の意識が高められることで、ピラティスのマインドフルネス効果と身体への効果を、両方高めると考えられる。

「クロックワーク」(仰向きの状態で、骨盤の前傾後傾、ニュートラルポジションの位置や動かし方を確認するエクササイズ)、「リブケージアーム」(体幹部をマットに安定させた状態で、肩関節を動かすことで、体幹部と腕の連動や、肩関節の可動域を確認するエクササイズ)、「ニースターズ」(体幹部をマットに安定させた状態で、手で支えて腿を円を描くように動かすことで、股関節の動きや動かし方を確認するエクササイズ)をはじめ、数多くのエクササイズの中から、毎回数個を選んで行う。


お話を聞いた方 高田香代子さん
ピラティスアライアンス代表、恵比寿と鎌倉にピラティス専門スタジオを経営。養成コースやワークショップ企画・開催も定期的に行っている。ピークピラティスレベルIV マスターインストラクター。ピークピラティスフル認定。体育学修士。2012年筑波大学大学院ビジネス科学研究科にてMBA修了。現在、同研究科博士課程にて心理面に着目した運動の継続についての研究を進めている。

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