FITNESS BUSINESS

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【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "ベトナム"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

ベトナムから見る日本のフィットネス
エンターテイナーとしてのトレーナー・インストラクターコミュニケ―ション力と語学力で急成長

日本の古き良き時代がここに

2015年10月28日にハノイにルネサンスのベトナム2号店がオープンしました。その準備で、2015年5月から毎月、ベトナムで月の半分を過ごす生活を続けています。新店オープンに向けて、日本からは私を含め3名のトレーナーが、現地トレーナー10名とともに準備を進めてきました。ここで何より感じるのが、色々な意味で「日本の古き良き時代がここにある」ということです。

たとえば、人と人が信頼関係で結ばれていて、グループで何かすることに抵抗感がなく、何にでも仲良く取り組みます。日本から来た私たちにも同じように接してくれて、びっくりしたのは、私が飲んでいたペットボトルの水を、ベトナム人の女性スタッフが喉が渇いたとそのまま飲むんです。それだけ相手を疑わないから、すぐに誰とでも仲良くなる。当然、クラブでもグループエクササイズが人気で、大手クラブにはスタジオが3~4面あります。ジムではウェイトトレーニングが人気です。これも、日本人も昔そうだったように、ベトナムの男性には身体が小さい人が多いことから、欧米人のような身体に憧れて、筋肉をつけようとトレーニングに励むのです。そのため、ハノイのルネサンスでは近年の日本のルネサンスには通常導入されないプレートローデッドのマシンなども配備しています。

また、インストラクターやトレーナーがキラキラした存在になっていることも、日本にフィットネスクラブが出来始めた頃を思い出します。インストラクターもトレーナーも、しっかりトレーニングされた身体をアピールするいで立ちで、女性インストラクターやフロントスタッフも、しっかりお化粧をして、メンバーから憧れられるエンターテイナーとしてのセルフイメージを大切にしています。

一方、日本と違う部分もあります必要以上にゴージャス感を好むことや、実力以上のプレゼンテーション力を持つことなどです。どちらも“見栄え”にこだわるということだと思いますが、施設も、ベロア調の家具や、ワインレッドの色調など、とにかくゴージャスにした方がベトナムの人を惹き付けますし、インストラクターやトレーナーも、運動理論への理解が不足していても、とにかくプロフェッショナルに見える立ち振る舞いで、多くの人を惹き付けています。

クラブ運営に関しては、まだ産業として黎明期にあるため、日本と環境がかなり違います。今ベトナムのフィットネス施設は二極化していて、高級感あふれる世界最先端の設備とプログラムを備えたクラブと、地元のエアコンもない質素なトレーニングジムとに二分されています。また、ベトナムの商慣行として“値切る”文化があるため、同じフィットネスクラブでも、人によって月2,000円で通っている人もいれば、月10,000円払っている人もいるという状況です。ルネサンスでは、中上級層をターゲットして、日本円にして6,000円一律で、交渉には応じませんということを予めアナウンスしています。

アジアのフィットネス指導者に学べること


ベトナムに来て改めて感じた日本のフィットネス業界の良いところは、サービスやプログラムの品質の高さと、働く人たちの勤勉さです。日本のサービスは、「おもてなし」の精神からの礼儀があり、フィットネスプログラムは科学的根拠に基づいた、安全で効果的な内容になっています。そして、働く人もまじめでお客さまの立場に立って仕事に臨んでいます。一方、ベトナムでは、指導者は運動理論やプログラミングにおいては、まだまだ勉強が必要で、サービス業で働く人の意識も低いのが現状です。これはハノイでルネサンスが入っている商業施設イオンモールの家具屋さんのエピソードですが、次の日にオープンを控えているのに、店員さんたちが商品のベッドで寝てたりするんです。他のお店でも、店先に座ってのんびりしている店員と思われる人の姿も多く見られます。

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ただ、若い人たちの成長力はすごいです。ルネサンスで働いてくれるベトナム人スタッフは、今では日本の礼儀やみだしなみをしっかり身に着けて、持ち前のコミュニケーション力でメンバーの方々に「また来たい」と思っていただけるサービスを提供し始めています。さらに、ベトナムでは英語教育が日本より充実していますので、インストラクター・トレーナーとして本気で勉強をし始めると、欧米の情報をダイレクトに吸収して、指導者としての専門性も、あっという間に高められる可能性を秘めています。そうなると、日本で日本語で学んでいるトレーナー・インストラクターは、世界的視野で見ればすぐに抜かれてしまうことになるでしょう。ベトナムではトレーナー・インストラクターの給与も高く、大卒初任給の平均が3万円程度のところ、10~20万円を稼ぎ出すトレーナーも増えています。そうした経済力も、彼らの成長力を支えていくはずです。

今後、ベトナムをはじめアジア諸国のフィットネス指導者に日本のトレーナー・インストラクターが学べることは多々あると感じます。特にエンターテイナーとして人々を魅了する力はベトナム人の方が圧倒的に高い。指導者という立場だけではなく、エンターテイナーとしての魅力を高めることが、メンバーの方々の「また来たい」という気持ちにつながるのではないでしょうか。指導者としてアジアの市場を見たり、そこで勝負することも、将来への大きな力になると思います。

インタビュー:海老根 勝則さん
株式会社ルネサンス海外営業部 専任課長指導歴20年。港南中央クラブ支配人の後、2014年4月からフィットネススーパーバイザーとしてベトナムとの行き来をスタート。2014年11月にはベトナム1号店をビンズン省にオープン。現在はハノイを拠点として、ベトナム人トレーナー10名とともに運営にあたっている。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟