【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "ダンスフィットネス"篇
2015.11.25 水 スキルアップフィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。
世界のダンスフィットネストッププレゼンターとして見る日本のフィットネス動向と今後
ダンスフィットネスインストラクターの世界的リーダーの一人としてルーキーコンテスト世界大会の審査員を務め、世界のトップインストラクターたちとの強いネットワークを持つ竹ヶ原佳苗さん。アルゼンチンから世界に配信されているリトモスのコリオグラファーとして、またフランスから配信されているインストラクター向け動画サイト「モーションシステム」のプログラム提供者としても活躍。世界の指導者たちを惹きつける竹ヶ原さんが見る日本の業界動向と3つのアドバイスとは。
5年前のヨーロッパが、今日本に
竹ヶ原佳苗さんが世界的なプレゼンターとして活躍し始めたのは約10年前。IDEA2003コンベンションでプレゼンターを務めたことをきっかけに世界各国から招待を受けるようになった。
2010年に日本でJAPANFITの開催をスタートしてからは、世界でもっとも旬のプレゼンターを招聘しようと、常に世界のダンスフィットネスの動向を注目してきている。その竹ヶ原さんは今の日本のフィットネス業界の状況を「5年前のヨーロッパを見ているよう」と表現する。
「近年日本でも毎週のように、インストラクターたちが企画するイベントが開催されていますが、欧州でもちょうど5年前、そうした状況にありました。特に欧州は陸続きなので、プレゼンターたちも行き来がしやすく、イタリア・フランス・スペインを中心にさかんにイベントが開催されていました。ただ、参加者の人々も行き来がしやすいことから、お客さまの顔ぶれも決まってきてしまい、現在までにかなり集約されてきています。生き残るイベントは、プレゼンターたちに信頼されているインストラクターが組織として運営し、旬なプレゼンターを起用し、オーガナイザーがプレゼンターたちをきちんとおもてなしするといった共通項があると思います」
フランスでは、レミー率いるリーダーフィット、イタリアではルチアーノ率いるIFA、ポーランドではセバスチャン率いるIFAAが底堅い支持を集めているという。
日本のJAPANFITも世界的に見ても最も成功しているイベントの一つとなっているが、竹ヶ原さんの“旬”なインストラクターを見抜く目と、オーガナイザーとしての企画遂行力がその人気の要因にある。竹ケ原さんは毎年フランスで開催されるルーキーコンテスト世界大会で審査にあたることで、いち早く将来性のある若手指導者とのネットワークも築くことができ、その他にも、各国から審査委員として集まるプレゼンターからの情報をもとに、フェイスブックなどで活動をチェックしながら毎年のプレゼンターを選んでいる。また、竹ヶ原さんはこうしたイベントを継続開催していくうえで大切なこととして、参加費の価格設定にも注意を促す。
「以前は、イベントレッスンの参加費相場は1本3,000円程度だったところが、最近は複数のレッスンを受け放題での価格設定が増え、1本あたりに換算すると1,000円くらいになってしまっています。プレゼンターに支払われるフィーも同様に、以前の3分の1くらいのイベントもあると聞いています。お客さまは、いいものにはお金を払ってくださいますし、価格を下げることは、自分たちの価値を下げてしまうことにも繋がります。イベントをオーガナイズする場合は、長期的な視点も持っていたいものです」
ダンスフィットネス指導者としてのキャリアを高める3つのアドバイス
竹ヶ原さんは、日本のダンスフィットネスインストラクターの指導力は確実に上がってきており、世界で活躍できるレベルに近づいている人も増えているという。そこで、次の段階にキャリアを進めるうえで、3つのアドバイスをする。
1つめは、フィットネスクラブとの関係を大切にすること。近年クラブ外でのイベントが増えたり、小規模スタジオを構えるインストラクターも増えてきているが、グループエクササイズ市場を支えるのは、フィットネスクラブであり、スタジオに通うお客さまたちだ。指導力を高めるうえでも、キャリアを積んでいくうえでも、フィットネスクラブとは良好な関係を持っておくことを勧めている。
2つめは、インストラクターに支持されるインストラクターを目指すこと。近年レッスンでは高いスキルと指導力を備えるインストラクターが増えてきているが、ワークショップで集客できる人が少ないことを危惧する。ワークショップでは、自身がやっていることを論理的に説明したり、参加者を惹き付ける話術も必要となる。これについては、人気を集める先輩プレゼンターからOJTで、現場感覚を習得することを勧めている。人気プレゼンターのワークショップに参加したり、ワークショップのアシスタントを申し出るなどして、現場で学べる機会を自らつくっていく必要もあるだろう。竹ヶ原さんは、将来ワークショップができるようになることを目指す気概のあるインストラクターには積極的にそ のチャンスをつくりたいとも話している。
そして3つめは、英語でのコミュニケーション力を磨くこと。これについても、近年英語でレッスンができる人は増えているものの、海外のプレゼンターとコミュニケーションしたり、ビジネスの話ができる人は少ない。SNSの浸透もあり急速にグローバル化が進むダンスフィットネス業界では、英語でのコミュニケーション力は、掴めるチャンスの量と相関する。
若手指導者が数多く育ちつつある ダンスフィットネス業界。竹ヶ原さんはこの3つに注力することで、次世代のリーダーとして頭角を現せると期待している。
インタビュー:竹ヶ原佳苗さん
大学卒業後体育の教師になるが、フィットネスインストラクターへの夢を捨てられず、スポーツクラブ「ATHLIE(アスリエ)」へ転職。1994年まで約5年間、ATHLIEのチーフインストラクターを務める。その後、ワーキングホリデーでカナダ・バンクーバーへ留学。カナダの大手チェーン「Fitness world」にてインストラクターとして活躍後、帰国。ATHLIEのスーパーバイザーとしてレッスンや養成コース、新規プログラムの開発などに携わる。2003年のIDEAを機に世界的に注目されるプレゼンターに。現在はリトモスのコリオグラファーとしても活躍中。
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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105
【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子 悟