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ウェルネスの科学-

2015.03.20 金 オリジナル連載

ヘルスケア業界に突如現れた新星 “石川善樹”。本連載では、予防医学研究者・医学博士としての立場から見た、業界でのイノベーション創造に向けた考え方・ヒントを伝えていく。

はじめまして。予防医学研究者の石川善樹と申します。

毎月1回、WellnessPostに連載をさせて頂く機会を頂きましたので、これから何卒よろしくお願いいたします。

さて、私は大学などで講義をさせて頂く機会も多いのですが、よく学生の方から次のような質問を受けます。

「もし、ウェルネス分野で何をしてもいいと言われたら、何から始めますか?」

このような疑問を持たれるのは、当然だと思います。というのも、ヘルスケアやウェルネスという分野は、あまりに専門的かつ広大なので、どこから手を付けていいのか分からなくなってしまいがちです。全体像を眺めずに、自分の狭い経験だけで突き進んでしまうと、大いに迷ってしまうことでしょう。そのような時に羅針盤となるのが、「グランド・チャレンジ」です。

話は今から10年以上前にさかのぼるのですが、2003年にビル・ゲイツが、「もし解くことができれば、世界の健康課題を劇的に解決する問題(グランド・チャレンジ)」を発表しました。これまでに世界中から無数のアイデアが寄せられ、選りすぐられた1,689個のアイデアに対して、すでに10億ドル(1,000億円)もの資金提供が行われています。 たとえば、グランド・チャレンジの一つは次のようなものです

「コンドームの歴史は400年と長い。でも過去50年間、ほとんどイノベーションが起きていない。劇的に気持ちがよくて、誰もが使いたくなるコンドームはないのか?!開発費用として、一つのアイデアにつき、10万ドル出そう!」

このようにグランド・チャレンジのいいところは、ヘルスケアやウェルネス分野において、どのような問いがあるのか、明確に優先順位をつけて示してくれている点です。取り組む問いさえ決まれば、あとは力をあわせて知恵を持ち寄れば、必ず解決策が生まれてくるものです。 そもそもビル・ゲイツがこのような取り組みを始めたのには、次のような理由があります。

「とても重要な問題なのに、市場に任せていたのでは、解決に至らないことがある。そのとき出来る唯一のことは、世界が抱えるグランド・チャレンジを示すことだ。そうすることで、きらめく才能をもった人々を呼び込むことができる」

ぜひ日本からも多くの方に挑戦して頂き、グランド・チャレンジを解決していってほしいなと願っております。

>>>Write by Yoshiki Ishikawa

石川 善樹

予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。
NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法(マガジンハウス)』。