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ウェルネスの科学 第3回−

2015.06.24 水 オリジナル連載

ヘルスケア業界に突如現れた新星 “石川善樹”。本連載では、予防医学研究者・医学博士としての立場から見た、業界でのイノベーション創造に向けた考え方・ヒントを伝えていく。
【バックナンバー】
ウェルネスの科学ー
ウェルネスの科学 第2回ー

こんにちは。予防医学研究者の石川善樹です。

今回は、「ダイエットの科学」がテーマです。

もうかれこれ10年以上、私はダイエットの研究をしているのですが、どれだけ調べても分からなかったことがあります。

それは、「なんでリバウンドに関する理論がないのだろうか?」ということです。ちなみにここでいう理論とは、「○○でやせる!」といった巷にあふれるダイエット法ではなく、「定量的な予測ができる方程式」のようなものだと思って下さい。

たとえば、「減量に関する理論」でもっともシンプルなのは、「体脂肪1キロ減らすのに7000キロカロリー」というやつです。この理論を使えば、3キロやせたい場合に、一日あたりどれくらいカロリー制限をすればよいのか、具体的な計画を立てることができます。

一方で、「リバウンドに関する理論」は、なかなかパッと頭に浮かばないと思います。もっと具体的に言うと、次の質問に答えられる理論を、私は一度も習ったことがありません。

「1キロやせた場合、それをキープするためには、具体的に何をどれだけすればよいのか?」

そのため、ある方から次のような質問をされたとき、私はどれだけ知恵を絞っても、きちんとお答えすることが出来ませんでした。

「いやー、なんとか3キロやせることが出来ました。もうリバウンドはこりごりなので、これを“最後のダイエット“にしようと思います。だから、大事なのはこれからですよね。そこで教えてください。私はこれまでの生活に比べて、プラスで何分間歩けば、3キロやせたままでいられるのでしょうか?

くり返しますが、体重を減らすときは、7000キロカロリー理論を使えば大体OKです。しかし、3キロ減ったままでいるためには、この7000キロカロリー理論を適用できません。あたり前の話ですが、「3キロ減らすための努力」と、「それをキープするための努力」は全然違うからです。

困った私は、「リバウンドに関する理論」を自分で作ることにしました。こういう時、研究者という仕事をしていると便利ですね。ちなみに一部のマニアックな方のために記しておくと、リバウンドに関する理論は、「EE=PAL・RMR」という式を体重で微分していくと導くことができます。とはいえこれは大変難しく、私ではとても解くことができなかったので、数学やコンピューターサイエンスを専門とする友人に助けを求めました。

・・・さて、先に結論から述べておくと、「1キロやせた場合、それをキープするためには、今までの生活より約40キロカロリーのギャップをつくる必要がある」ことが分かりました。これは、50キロの女性がいた時、1キロやせて49キロの体重をキープするには、今までよりプラス16分歩く習慣を身につければいいことになります。

もちろん、これはあくまで目安であり、減らした体重をキープするための努力量は、個人差があるものです。

そこで、「どうすれば体重を減らし、そしてキープできるのか」、個人差を考慮して具体的に計画ができる「体重シュミレーター」を開発しました。

体重シュミレーターはコチラ

さらに、せっかくなので、現時点での世界最新かつ最善のダイエットに関する知見もまとめておくことにしました。それが、つい先日発売された、「最後のダイエット(マガジンハウス刊)」という本です。

20150624_石川善樹さん連載画像①

・・・「なんだ、宣伝かよ!」と思われた方がいましたら、すみません、その通りですm(_ _)m

この本は、専門の方が読まれたら「そんなこと全部知っていたよ」という内容ばかりだと思いますし、そうであったなら嬉しい限りです。一つだけ新しいことがあるとすれば、それはこれまで述べてきた、「リバウンドに関する理論」が入っていることです。

ぜひ、手に取ってご覧いただきたく、よろしくお願いいたします。

(「ウェルネスの科学」次回のレポートは8月上旬を予定しています)

>>>Write by Yoshiki Ishikawa

石川 善樹

予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。
NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法(マガジンハウス)』。