【キッズ・ジュニア向け プログラム& ツール】運動への苦手意識を解消する逆上がり練習器 くるっと
2017.09.21 木 トレンドサービス
運動への苦手意識を解消する逆上がり練習器
サッカーや野球、テニスなど、特定のスポーツと異なり、「逆上がり」は義務教育の課程のひとつである。多くの子どもたちが、小学校、早ければ幼稚園や保育園で経験する運動だ。一方、ある調査結果では逆上がりができない子どもは全体の約50~60%にものぼり、この経験から運動自体に対してネガティブな感情をもってしまう子も少なくない。こうした苦手意識を克服し、逆上がりができるようになるための練習用ツールとして発売されたのが逆上がり練習器「くるっと」である。
【今回お話しを伺った方】
セノー株式会社 開発本部 企画開発部 企画開発課 課長 馬場岳志氏
ミズノスポーツサービス株式会社 東日本営業部 営業1課 目黒区民センター体育館 矢澤弘章氏
当初は教員志望者への補助ツールとして開発
くるっとは、富山大学人間発達科学部准教授である佐伯聡史氏が、教員を目指す学生向けに逆上がりを行う際の身体の使い方を覚えてもらうために考案された。その後、セノー株式会社(以下、セノー)が本格的に製品開発を行い、商品化された。開発当初は、教員を目指す学生に向けた補助ツールとしての利用が目的であったが、発売開始後は小学校や、民間の体操教室、公共体育施設の子ども向けイベントなどで利用されることが多いという。
「一般的な逆上がり補助器は下半身の上方移動を補助するためのものが主流です。しかし、この補助方法では、下半身のみの補助に終始してしまい、逆上がりを成功させるために重要な感覚である、後方回転感覚(頭を後ろに投げ出すような感覚)を効率的に身に付けることができません。くるっとの場合には、上半身は鉄棒から離れることなく後方回転を、下半身は勢いをつけるための蹴りだしの感覚を、それぞれ同時にサポートすることにより、後方回転感覚をしっかりと身体に覚えさせることができるため、最終的には補助器なしであっても逆上がりができるようになっていきます」(馬場氏)
あくまでも、逆上がり補助器を利用して逆上がりに成功することが目的ではなく、子どもたちの練習効率を向上させ、早期に逆上がりができる感覚を覚えさせるためのツールなのだ。
【逆上がり練習器「くるっと」開発ヒストリー】http://www.senoh.jp/recruit/spirit/sakaagari.html
苦手意識を克服し積極性を引き出す
東京都目黒区にある目黒区民センター体育館では、小学校の低~中学年生を対象に「鉄棒」「マット運動」「跳び箱」の運動指導を行う「スポーツ塾」を2~3ヵ月に1度のペースで開催している。1回の開催につき、週1回、計4回/月の運動指導を行うが、逆上がりは3種目のうちで、最も苦手意識をもつ子どもが多い。
「参加者のうち、逆上がりができない子どもは毎回約半数程度います。これが原因で『自分は運動自体が苦手なのだ』と考えてしまう子どもたちも多いです。しかし、くるっとを利用し、繰り返し練習を行うことによって、徐々に逆上がりのコツがつかめてくるため、最後の4回目の授業では、多くの子どもたちが自分の力だけで逆上がりができるようになっています。こうして、子どもたちが『苦手な逆上がりを克服できた』『目標を達成できた』などの感情を抱くことにより、はじめは消極的であった子どもが、ほかの運動に対しても徐々に積極性をもち意欲的に取り組んでくれることが何よりもうれしいですね」(矢澤氏)
指導者側の負担も大幅に軽減
逆上がりの指導を行う場合、補助者が子どもの背中を支え、一気に上に持ち上げるなどのサポートを行うことが多い。このため、必然的に一度に多くの子どもたちに対して指導を行う、学校や、運動教室の指導者側の補助にかかる負担も大きくなる。一方、くるっとを利用した場合、鉄棒への製品装着後は、子どもだけで練習を行うことができるため、補助やサポートにかかる指導者側の負担も大幅に軽減される。地域のイベントや教員向けの勉強会を開催した際にも、「サポートがほとんど必要ないため指導が楽になりそう」「力が無くても簡単に補助ができる」など、指導者負担が減ることにメリットを感じる方も多いという。
「スポーツ塾では、約20名前後の子どもたちをスタッフ2名で担当しています。以前はスタッフ同士、交代しながら子どもたちの逆上がりの補助を行っていましたが、それでも1回の指導が終わるころには、体力的にかなり消耗していました。くるっと導入後は、補助を行うこともほとんど無く、子どもたちが自主的に練習をしてくれるので、運営が非常に楽になりました」(矢澤氏)
現在は、運動やスポーツのイベントでの活用が多い同製品だが、今後はスポーツクラブのキッズ向けの体操教室や幼稚園や小学校への導入を拡大していきたい狙いだ。これに先駆けて、今秋には幼稚園生でも利用できるサイズの提供を開始する予定である。長い人生のなかで、逆上がりを体験するのはごく短い期間である。一方、この時期に「できない」という苦手意識をもってしまうと、その後も運動に対するネガティブな感情をもってしまいやすい。こうした苦手意識を取り除き、「できた」という達成感を感じてもらうためのツールとして、今後の広がりが期待される。