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16April,2015 www.fitnessjob.jp石川善樹さん Yoshiki Ishikawa (株)Campus for H共同創業者。広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。NHK「NEWS WEB」金曜日ネットナビゲーター。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法(マガジンハウス)』。石川善樹さん(34歳)campus for H 共同創業者 / 医学博士最優秀賞 2014年、彗星のごとく各種メディアに登場し、人々にとっても、フィットネス業界にとっても、非常に有益な、全く新しい健康情報を発信する石川善樹さん。予防医学研究者・博士であり、行動科学研究者である。膨大な知識と研究からの知見を、非常に分かりやすく伝える、新進気鋭の研究者だ。 その、石川さんが、2014年に発表したのが、“リバウンドしない”ダイエットの目標設定方法「Di理論」と、ウェイト・シミュレーター。そして、自身の書籍『友達の数で寿命はきまる』で提言した、「健康に最も影響するのは、“つながりがあること”」という全く新しい考え方。それぞれについて、簡単に解説しよう。リバウンドしない革新的ダイエット まず、「Di理論」は動的エネルギー配分理論(Dynamic Energy Partition Theory)に基づき、ダイエットを「減量期」と「維持期」に分け、その人の年齢、性別、身長、体重、体脂肪率、職場での活動、休日の活動など、その人のプロフィールから、適正な減量の目標設定ができるもの。これまでの各種ダイエット理論と特に違うのが、「維持期」に着目して、すべてを構築している点である。そのことについて、石川さんはこう説明する。 「私はこれまで国の健康施策に関連する研究も数多くしてきていますが、肥満については、他の生活習慣病の原因にもなりやすいことから、世界的に国家的な取り組みがなされています。人々の“ダイエット”への関心も大きいことから、常に様々なダイエット法が話題を呼んでは消えていきます。ただ、このダイエット法は、残念ながらこの2000年間、目立った成果を上げる方法が見つかっておらず、イノベ量をすることで、リバウンドしないダイエットができるわけです」 このDi理論に基づいた、適切な各種の目標数値は、表1にある複雑な数式で算出できるという。この数式は、同様の問題意識から、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のケビン・ホール博士らが2011年に開発したウェイト・シミュレーターに組み込まれているもの。今回石川さんが開発したウェイト・シミュレーターは、これに日本人の代謝特性や生活特性などを加味し、さらにきめ細かい算式を組み込んだという。 さらにこのダイエットを成功させるための行動変容の考え方も、石川さんは行動科学研究者の知見から、これまでにない新たな提言をする。 石川さんは、「ある行動を続けるのに、モチベーションは関係ない」と言い切る。そして、新しい生活習慣を得るために、主に2つのことを挙げる。それが「習慣づくり」と「自己効力感」をーションも起こっていない。その原因は減量期だけに着目していることによる『リバウンド』。これまでのダイエット法の98%くらいは、結果的にリバウンドしてしまう方法ばかりでした。みなさんご存じのとおり、リバウドするたびに次のダイエット効果は得られにくくなり、肥満体質に近づいてしまいます。よかれと思って行う提言や指導が、実は人々の健康を害してしまっているのではないかと思ったんです。そこでどうしたらいいんだろうと考えた時に、『痩せるということは、体重を減らすことと、キープすることの組み合わせ』という極めてシンプルな構図に気づきました。これまでのダイエット法は“キープする”部分が抜けていたんです。さらにこれまでの様々な研究から『体重を減らすのは食事制限、維持するのは身体活動が効果的』というエビデンスは十分得られていますので、それぞれの人が目指す体重を維持するうえで、どのくらいの身体活動が必要なのかを先に見つければいいと考えたんです。維持することを前提にした減「Di理論」と「つながりづくり」で、21世紀の新たな健康づくりを提言ρF(dF/dt)=(1-p)(EI-EE(t)-ρG(dG/dt)ρL(dL/dt)=p(EI-EE(t)-ρG(dG/dt)EE= K+γFF+γLL+δBW+TEF+AT+(EI-ρGdG/dt)[ pηL/ρL+(1-p) ηF/ρF] 1+pηL/ρL+(1-p)ηF/ρFF:体脂肪(kg)、L:除体脂肪(kg)、G:グルコース(kg)、EL:1日当たり摂取カロリー、EE:1日当たり消費カロリー、p:変化したカロリーのうち、除体脂肪に分配される割合、ρF・ρL・ρG:体脂肪、除体脂肪・グルコースにおける1k当たりのカロリー、K:初期状態によって決まる定数、γL・γF:安静時代謝に関連した値、δ(physical activity):身体活動の表すパラメータ、TEF(thermic effect of feeding):食事によって発生する熱量、AT(adaptive thermogenesis):適応性熱産生(人間のカラダは体重が減ると基礎代謝と消費エネルギーを減少させて適応しようとすること)、ηL・ηF(biochemical efficiency):除体脂肪・体脂肪に関する生化学的効率出典:ターザン2015年1月5日発売664号(マガジンハウス)表1 Di理論の礎。シミュレーターの心臓部である動的モデルの方程式Program Directorインストラクター部門プログラムディレクター部門

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