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――まずは皆さまの直近の取り組み内容について教えてください。安澤嘉丞さん 最初に、まだ介護予防事業に携わったことがない方のために、クラブを取り巻く環境について簡単に説明させてください。介護予防は、一次、二次・三次の3つに分かれており、一次予防には、主に元気な方を対象に「この先も介護を必要としないようにする」という目的があります。二次予防は、少し虚弱で「もしかすると介護が必要になりそうなので、何か手を打たなければ」という方を対象に、自治体が地域支援事業などとして取り組んでいる場合が多いですね。三次予防は、「すでに介護状態だが、重症化を防ぐ」ことを目的にしています。 現在この市場は健常者が7割ほどで、要介護、要支援状態で二次予防の対象者といわれている方はまだ30%にも満たない状況です。しかし、日本の人口は2008年をピークに減少の一途をたどっており、要するに人口減少と高齢化が同時進行しています。2015年には団塊の世代がすべて65歳以上へ移行し、さらに2025年には75歳以上という後期高齢者に移行します。団塊の世代が後期高齢者に移行すると、日本人の4人に1人が75歳以上の高齢者となります。 現在の健康寿命が70歳前後といわれているところ、平均寿命は男性も80歳を超えてきていますから、その差である約10年間は身体に何かしらの不具合を抱えた状態で生活することになります。このような方がこれから増え続け、10年後には、今までクラブに通えていた方が(体力が衰えて)通えなくなるということが起きてくると予想されます。 一方、総合クラブは建築コストの高騰により、新規出店がますます難しくなってくるでしょう。これまでは人口が増えていくことを前提にしたビジネスモデルであったため、20年などの長い契約期間でも成り立ちました。しかし、今、もし新しい店舗を20年契約でつくった場合、満了は2030年。人口が大きく減少しているなかで、本当にそこまでやっていけるでしょうか。これからの出店には、これまで以上に市場などをよく分析してから判断する必要があります。 このような状況のなかで、ルネサンスでは介護予防に向けていろいろな取り組みを始めました。まずは1995年にシニア会員制度を導入し、これによって高齢者の会員比率がぐんと増えました。2005年からは、東京都健康長寿医療センターの指定事業者として、介護予防運動指導員の養成をスタートしました。さらに同年、筑波大学の田中喜代治教授と協同で、転倒予防プログラムの効果検証を行ったり、2006年からは自治体の地域支援事業の受託を開始しています。2011年には五感を刺激することによって脳を活性化させる「シナプソロジー」を開発し、2012年からはリハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」を、そして今年度からは訪問型のリハビリサービスをスタートしました。これらの取り組みによって状態の異なるそれぞれの方に対応し、地域全体の元気を底上げしていくことが当社の目的です。桑田勇人さん 東急スポーツオアシスでは、介護予防事業によって高齢者の方が介護にならないようにすることはもちろん、その方の家族のサポートにもつながればと考えています。私は店舗のマネジャー時代、家族の看護や介護を理由に退会される方を何人も見てきました。家族のなかで1人、病気や介護が必要になるだけで、家族はクラブに通えるような状態ではなくなるのです。介護になる方を1人でも減らすことによって家族の負担も減らし、その地域の雰囲気を明るくできたらと考えています。 そういう思いから2006年、新宿区の東京都健康プラザ「ハイジア」の地下1階に、高齢者専用スタジオ「新宿エクササイズルーム」を開設しました。新宿区の介護予防事業を、二次を2回、一次を3回、3ヶ月ごとに年4クール実施しています。空いている時間には、60歳以上の方に通ってもらえるように有料スクールや「太極拳」、「らくらく体操」やマシンを使った筋トレなども提供しています。 現在は、首都圏、近畿地方のみで介護予防事業を行っており、店舗の休館日や開業前の時間帯大手フィットネスクラブ担当者によるパネルディスカッションこれからの介護予防事業戦略2014年6月に成立した「医療介護推進法」、および厚労省が発表している2015年の介護法改正の概要を受けて、2014年8月26日、第36回フィットネスビジネス勉強会「これからの介護予防事業戦略」にて、フィットネスクラブ事業者大手3社のヘルスケア部門担当者によるパネルディスカッションが行われた。今後の介護予防や高齢者への運動指導をめぐる環境変化をどのように捉え、どのような課題や展望を持っているのか。インストラクター・トレーナーにとっても、今後の活動に繋がる多くのヒントが得られる。東急スポーツオアシス フィットネスクラブ内高齢者施策例フィットネスクラブ内のスクールプログラムとして、60歳以上の運動参加に慣れていない方や、地域支援事業(介護予防教室)を終了した方向けに展開。14November,2014 www.fitnessjob.jp地域の介護予防ニーズにトータルで応えるルネサンスの高齢者向け施設事業要介護リハビリテーション元氣ジム地域支援事業スポーツクラブ高齢者を元気に!!要支援2次予防1次予防

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