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ドイツ最先端のスポーツ科学研究と、オリンピック金メダルを目指して究極的にパフォーマンスを高めることを目的に体系化された「コオーディネーショントレーニング」。2013年設立のNPO法人スピッツェンパフォーマンスが、このトレーニング理論に基づいたスクール展開をスタートさせている。ジュニア世代に究極のファンクショナルトレーニングを提供し、エリートアスリートの排出を目指す。ジュニアアスリートのコオーディネーショントレーニング 理論開発ライプチヒ大学(研究)、デーハーエフカー、国立応用トレーニング学研究所など(実践研究) ドイツは総人口比あたりのオリンピックメダルの数が多い。それは、国を挙げてトップアスリートの育成に取り組んでいるからである。「コオーディネーショントレーニング」の研究が進められているライプチヒ大学は今から約90年前の1925年にドイツで初めて「スポーツ学科」を設置した大学。コオーディネーショントレーニングの理論は40年前頃から提唱されている理論であるという。ライプチヒ大学の研究をもとに、民間スポーツクラブのデーハーエフカーや国立応用トレーニング学研究所で実際にアスリートのトレーニングが行われ、その成果が再び大学にフィードバックされている。現在は同大学のハルトマン博士を中心に理論構築がされており、日本ではライプチヒスポーツ科学交流協会(KoLeSpo)が2003年から情報交流を行ってきており、現場での指導と検証がNPO法人スピッツェンパフォーマンスによって進められている。 基本理論 「コオーディネーション」の語源は「CO+ōrdinātiōnem」であり、たとえば「神経―筋」の運動の整合・共同作用という意味がある。「コオーディネーショントレーニング」は競技パフォーマンスを総合的に高めるために、「スポーツ技術=スキル」や「スピード」「力」「持久」「敏捷性」などと同等に重要な能力として、トレーニング要素に含めている。その各能力発揮を支えるものとして「可動性」つまり柔軟性やモビリティを位置づけている。 コオーディネーションの狙いは、スキルの固化(ステレオタイプ化)を防ぎ、体得したスキルに変幻自在性を与える。つまり、実戦において状況変化に応じて実施できるようにすることである。また、パフォーマンスの診断という観点では、エネルギー系能力がどの程度パフォーマンスへと結実したかを判断する目安ともなる。 したがって、競技パフォーマンスの向上に含まれる必要項目の中でも、特にジュニアアスリートの場合「スポーツ技術」については、競技別にコーチが技術そのものの反復練習を実施することがほとんどであり、「自在性」を賦与するために、コオーディネーションスクールではその他の赤枠で囲まれた5つの能力についてアプローチするトレーニングとなっている。 セッションの基本構成 ①挨拶、前回の復習と説明(5分)②ウォームアップ(25分) ダイナミックストレッチ→股関節や肩甲骨の可動性を出すモビリティドリル→ステップドリル→神経と筋の反応を高める反応ダッシュ③体幹・スタビリティトレーニング(10分) 体幹部や股関節回りの身体の安定性を高めるトレーニング④コオーディネーショントレーニング(20分) コオーディネーションを司る7つの能力(「定位能力」「リズム化能力」「変換能力」「反応能力」「バランス能力」「分化能力」「連結能力」)から毎回2~3の能力向上にターゲットしたドリル⑤その他の基礎的体力トレーニング(10分) 「敏捷性」「パワー」「力」「スピード」などから月ごとにテーマを決め、その運動能力を高めるトレーニング⑥スタティックストレッチ(10分) 使った筋肉の回復を促すとともに、可動性を確保するうえで必要となる柔軟性を高めるストレッチコオーディネーショントレーニングにおける身体能力の相関図ドイツトレーニング科学 運動パフォーマンス前提(HARTMANN,2010)アスリート向けファンクショナルトレーニングマーケティングsec5NPO法人Spitzen Perfor-mance代表理事米国でNATA-ATCを取得後、実業団野球チームの専属アスレティックトレーナーを経て、日本ハムファイターズトレーナーとしてコンディショニングを担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ医学の修士課程を経て、現在はジュニア世代のコオーディネーションスクール運営の傍ら、JISSトレーニング体育館での非常勤指導員や高校や大学のチームトレーナーとしても活動中。ライプチヒ大学認定コオーディネーショントレーナー。JATI公認上級指導者。お話を聞いた方多田久剛さん※①目的に応じた動作の実施を可能にする筋の収縮と力の発揮②最大限の随意的な筋収縮を実施し最大の力を発揮する③疲労に対するパフォーマンス低下を最小限に抑えることを可能にする能力④大きく長く続くスポーツ負荷に対して力を発揮し続ける能力スピッツェンパフォーマンス コオーディネーションスクール小中学生アスリート向け80分セッションの例July,2014 www.fitnessjob.jp25

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