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December,2013 www.fitnessjob.jp37在は、オリジナルのダンスエアロにZUMBA、そしてRADICAL FITNESS社のMEGADANZを指導していますが、今後は少しずつ『教育』側の立場も勉強していければと思っています」 インストラクターからエデュケーターへのステップアップを考えているという彼女だが、家族の理解なしにはできていないという。 「4年ほど前に結婚をしたのですが、幸い主人が私の仕事を応援してくれているので、とても気持ちよく仕事をさせてもらっています」 一番近くにいる人の応援は何よりの活力だと思うが、昨年までの約3年間それまで活動をしていた関東を離れ、旦那様をサポートするため、旦那様の転勤先である愛知県で活動を行っていた。 「突然の転勤で戸惑いましたが、いつも応援してくれている主人をサポートするのも私の仕事だと思っていますので、躊躇なくついていきました」 そして、愛知での活動を開始したナツに試練が待っていた。 「今まで自分が得意としてきた中上級のエアロが、『これはダンスだ』と言われ、お客様に全く受け入れてもらえなかったんです。集客も落ち、今までの自分のスタイルを貫き通すか、お客様の望むクラス内容に変えるべきなのか、かなり悩みましたが、自分のスタイルを押し付けるのではなく、まずは自分を信用してもらう事から始めようと思いました」 そう考え方を変え、とにかくお客様のニーズを吸い上げるために積極的にコミュニケーションを取り、レッスンに活かしていった。今では東京に戻り 細かな校則にいたるまで非常に厳しく指導されたという監督の口癖が、「生活態度の乱れがプレーに出る」というものだったらしい。いわゆる普段の生活態度さえも徹底できない人間は、一点、一秒を争う勝負の世界では、大切な場面で大きなミスを犯す可能性が高いという事だ。この考えには、私も同意する。昨今は、部活中の体罰が大変問題になっており、指導者が自分の指導スキルの低さを暴力という力技で、しかも短時間で何とかしようとしている節が見て取れるが、選手や生徒の躾、教育、指導というものは、そんなものでは根本的な改善にはならない。無論、普段の生活態度を改めるだけで選手のパフォーマンスがあがるなどとは思っていないが、生活態度が乱れている選手に大きな成功を掴むことが難しいという事はどのスポーツにおいても明白の事実だ。これは一般社会に生きる私たち大人にも言えることで、基本的なビジネススキルであるレスポンスや期限に対する意識、また、自己都合ばかりを主張し他人との価値観の共有が出来ない人間に、まともな仕事なんてできるはずもない。中高という多感な学生時代にこの事に気づかせてもらったナツは、一生の中でも大きな財産を得た時期だったのではないだろうか。 「中高の6年間で、監督からは多くのことを教わりました。その中でも一番身についたのは“諦めない精神力”です。どんなに辛くても絶対に諦めずやり抜くしつこさだけは誰にも負けない自信があります」 そんな、しつこい(笑)ナツが今最も力を入れているレッスンジャンルがダンス系だ。 「とにかく踊ることが大好きで、現ら思いもよらない感謝の言葉を頂くナツのようなケースを経験したことがある方も多いだろう。そして、その度に自分の職業が成す意味とは何なのかを考えさせられるとてもいい機会になっているはずだ。貴重な気付きを得たナツだが、学生時代はバスケ一筋の生活を送る、いわゆる“女バス”所属の体育会系女子だったという。 「小学校3年から高校3年までバスケ中心の生活を送ってきたんですが、なぜだか社会に出てから『学生時代、ヤンチャだったでしょ?』って、よく言われるんです(笑)。中高の6年間なんて、バスケットと監督が恋人と言われるくらい、校則厳守、監督絶対の生活だったんですけどね…」愛知での経験を活かし各クラブで大活躍のナツだが、先日、私が愛知出張の際に彼女がかつてレッスンを担当していたクラブの関係者にナツの話を聞くことができた。 「ナツさんのパワフルなレッスンはお客様も大変喜んでくれていて大人気でした。今でも東京までレッスンを受けに行く方もいるくらいですよ!」 なんだか私まで嬉しくなるような話だったが、ナツにこの話をすると相変わらずのオーバーリアクションで恐縮しきりだった(笑)。 最後に今後の活動展望を聞いてみた。 「やはり、ダンスを軸に活動の場を広げたいと思っていますが、先ほども話したようにインストラクターを育成する側の人間になりたいという思いがここ数年自分の中で強く芽生えてきていて、とある教育チームのテストを受けることを決めました。今はこのテストをパスすることが最大の目標ですが、この教育チームに入ることができたならば、インストラクターやインストラクターを目指す多くの方々に、スキルだけではなく自身の経験を活かした『インストラクターがお客様に与える影響力』という部分をロジックな視点で伝えられる指導者になりたいと思います」 お客様はスタジオの一番前に立つインストラクターの一挙手一投足を見、そして一言一句聞き入っているものだ。ナツの言う、『インストラクターの影響力』というものは計り知れない。その「影響力」について、多くのインストラクターが気高い自覚を持てるよう、ナツという新鮮な感度を持った教育者が、鋭い視点で伝えていってもらいたい。ナツの今後の健闘を祈り、今回の章を終わりたいと思う。有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/取材後記ナツが「インストラクターを教育する側の仕事を行いたい」と言ったとき、ナツには申し訳ないが正直意外だと感じたし、その動機を若干斜めから見てしまった自分がいた。しかし、話を聞き進めていると、彼女のその思いが営利的なものであったり名声のためではないという事がしっかりと伝わってきた。指導者を教育するというのは、生半可な気持ちで務まるような代物ではない。それは、指導スキルの優劣よりも「人間スキル」が重要視されるからだ。ナツはそれを中高の6年間でバスケットボール部の監督から叩き込まれたはずだ。そんなナツには表面的な結果ばかりに囚われた“指導者風インストラクター”ではない、本物の指導者を育成して欲しいと期待している。INTERVIEWER 丸山 寛

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