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荷で高速レジスタンストレーニングをやった方が低速よりも身体活動能力の改善には効果があるのではないかという仮説をたて実験をしました。その結果、低速群と高速群を比較したところ、高速群の方が、歩行能力や椅子からの立ち上がり動作を含む機能的移動能力が有意に改善されました」 これは国外で行われた先行研究をもとに研究を行ったもの。段階的に導入すれば速い動きも安全性に問題はないと確信していたという。 「次に、低強度は本当にいいのか。アメリカスポーツ医学会(ACSM)のガイドラインは、これまでの有酸素運動の強度は、酸素摂取予備量(・VO2R)の40/50%~85%が推奨されていたため、国内の指導者もそれに沿って、低体力の人は40%、それ以外の方であれば50%以上の強度で指導が行われていました。これが2011年に、ACSMの運動処方の指針が改訂され、・VO2Rの40~60%は最低強度とされ、・VO2Rの60%以上の運動も組み合わせることが健康体力の維持・改善を達成する理想的な強度とされています。つまり、これまでのような低~中等度の強度だけではなく高強度運動も重要であることが示唆されているわけです。持久力トレーニングに関しても低強度でゆっくりとした運動が良い、という既成概念は、すでに変わりつつあるということです」HIITは健康維持にも効果 さまざまな先行研究において、高強度運動を間欠的に繰り返すHIITが伝統的な有酸素運動と同様に健康維持にも有効であるというエビデンスが揃ってきている。HIITは、これまで行われてきた中等度の強度で長時間行われる有酸素運動と同様の効果があることが報告され、最大酸素摂取量の増加、平均血糖値の改善、血中脂質の改善、善玉(HDL)コレステロールの増加などが報告されている。菅野さんはこう加える。「さらに、30秒~1分間の高強度の運動は、エネルギー供給が解糖系であるため、筋トレと同じように運動時や運動後に血中乳酸の蓄積に伴い成長ホルモンの分泌が増加し、脂肪分解を促進するために、効率的にダイエットを達成できる可能性があります」 アスリートの持久力トレーニングでは1960年代からHIITに類似するインターバルトレーニングが導入されており、無酸素性持久力と有酸素性持久力の両者を高めることに有効であることが知られている。一方で一般生活者の日常生活でも、無酸素性持久力と有酸素性持久力を高めることが、ある程度必要だと菅野さんは説明する。 「有酸素性持久力は最大酸素摂取量で評価され、この能力は死亡や生活習慣病の発症リスクなどと関連性があることが報告されています。これに対して無酸素性持久力は、30秒~3分間以内の最大下の運動であるため、例えば朝の通勤などで遅刻しそうなときには、速い速度でランニングを行ったりする能力に相当します。さらに、少し話が逸れますが、これよりも短い時間の高強度運動は、エネルギー供給システムがATP-PCr系になり、パワーや敏捷性などの体力要素に関連します。このような能力は日常生活においても競技スポーツほどではないものの、ある程度の水準で必要となり、また事故回避や障害物をとっさによけるといった危険回避に不可欠な体力要素になります。しかし、加齢に伴って低下する体力要素は、持久力やバランス能力、次いでパワー、敏捷性、筋持久力、柔軟性であり、筋力については50歳代以降から徐々に低下することが報告されています。それなのに、フィットネスクラブでは、有酸素運動か筋力トレーニングが中心に行われ、顕著に低下するパワーや敏捷性に対する取り組みはあまり行われていません。一般の人は、もっとパワーや敏捷性を高める必要があるのです」 HIITは工夫次第では加齢に伴い低下する体力を総合的に高めることができる。だからこそ、一般生活者もHIITを採り入れるべきと菅野さんは力説する。一般生活者のHIIT導入法 では、一般生活者がHIITをどのように採り入れればいいのだろうか。 「アスリートも、シーズンの始めには、LSD(Long Slow Distance:比較的ゆっくりと長い時間をかけて一定距離を走るトレーニング法)タイプの有酸素運動を行います。しかし、試合期に近づくにしたがって、競技との類似性が高い専門12July,2013 www.fitnessjob.jp

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