NEXT75
18/68

彼に気に入られた人だけが諮問委員会で認められてようやくエルダーになれるという厳しい制度だったという。さらに、エルダーとされる人たちの間でも、ジョセフから習った時期や、感じ方が違い、マニュアルがなく共通した見解がないことから、“分かりにくい”という問題が常にあった。 現在日本に導入されている主なピラティス流派も、アプローチやエクササイズの流れも様々。高田さんは日本人では数少ないエルダーからピラティスを学んだ一人だが、そのジレンマを感じると話す。 「私の場合、ジョセフ・ピラティスの指導したクラシカルなエクササイズを習っており、そこにはオーダーといって、決まった順番があります。ですから、この順番を崩すことに違和感があります。たとえばハンドレッドというエクササイズは本来ウォーミングアップ的な役割ですが、それを最後にやるピラティスもあります。否定はしませんが、流派ごとに考え方や目指す方向性に違いがあるので、なかなか融合しにくい。ピラティススタジオで複数のインストラクターがエクイップメントを使ってプライベートレッスンを進行しようとしても、エクササイズの順番が違えば、お互い提供しようとするレッスンの流れが読めない。スムースにレッスンが提供しずらく、効率も悪くなってしまうのです」 ただ、そんな中でも、ピラティスが持っていた人生観に注目することがブレークスルーに繋がると高田さんは話す。 それは「体を変えれば、人生の質が変わる」という考え方。手法ばかりでなく、ピラティスの人生観や哲学を共有していく。流派を超えて共通する考え方を大切にすることが、今後のピラティスの浸透に繋がると考えている。そして、そのために重要なのが継続することだ。 高田さんは今後ピラティスインストラクターに求められる役割についてこう話す。 「様々な流派が日本でも盛んにティーチャートレーニングの機会を提供してきたことで、ピラティスの動きやアウトラインを理解するインストラクターは多数育ってきています。ですが、もっと本質的なクライアントへの気配りに目を向けて欲しいと感じます。ピラティスの哲学に照らし合わせると、お客さまの身体だけでなく、心をいかに進歩させることができるか。そうした意味では、ピラティスというエクササイズのアプローチをつかわずとも、ピラティスの本質的な考え方で、お客様の微妙な心のヒダに触れ、変わろうとする気持ちをサポートする。そうした指導者を目指すことで、ピラティスの良さをより多くの方に伝えられるチャンスが広がっていくと思います」プライベートからグループへ 高田さんは自身でもスタジオを経営し、フィットネスクラブでもスタジオディレクターを務める立場から、ビジネスとしてのピラティスの今後については、こうアドバイスする。 「プライベートレッスンの1対1のピラティス、10人以下のスモールグループ、そして多人数のグループエクササイズと、様々なスタイルの提供方法が日本でも浸透してきていますが、それぞれの指導環境に応じた心がまえと指導力を持つことが、今後のピラティス需要に応える大前提となるでしょう。私も多い時では50名以上の方を対象にグループレッスンをしますが、50名もの人が集まれば、身体も心も、共通項は一切なく、教えるのは本当に難しい。ライン®」を日本でいち早く導入。また、骨盤底筋群をファンクショナルムーブメントの中でエクササイズできる「ペルビックフロアピラティス―PfilAtesTM」のアジアでのライセンス権を取得し、今後、インストラクターの育成もスタートさせる。 武田さんは、ピラティスの信頼を高めつつ、ピラティスを分かりやすく伝えることで、日本のピラティス市場はまだ伸びると活動を加速させている。ピラティス拡大のジレンマからブレイクスルーへ 「ピラティス」が日本に導入された頃のトレンド感が薄れ、現在フィットネスクラブでも、地方都市でも「ピラティス」そのものの広がりは限定的とも見える状況にある。日本のピラティスの第一人者の一人である高田香代子さんはその現状をこう捉える。 「ただ別の見方をすれば、大都市を中心にマイクロジムが増え、エクササイズとしてピラティスを取り入れているところは増えている実感があります。パーソナルトレーナーがピラティスの資格を取得して、パーソナルトレーニングの延長線上で提供するスタイルですね。この状況はある意味、ニューヨーク的とも言えます。アメリカのピラティスの歴史は約100年、日本のピラティスの歴史は約10年。その米国でも、ピラティスの広がり方は独特で、多くの人に広めるにはピラティスそのものが抱えるジレンマがあったのです」 ピラティスの創始者ジョセフ・ピラティスがニューヨークにピラティススタジオを創ったのは1926年。最初の約50年間は、ピラティスを教えて良いとされたエルダーはたったの10名。しかも、何十年もジョセフの傍で習い、それでも、『50人、一人ひとりを進歩させる』ことを目指して指導力を磨いていく。特に、今後日本が迎える高齢化社会においては、グループレッスンによるピラティスは、社会の役に立てる可能性が高いと感じます。今後はインストラクターがそうした指導力をつけることをサポートしていきたいと思っています」 高田さんは、日本でピラティスを学ぶ指導者向けに、流派を超えて学び合える環境づくりを進めている。昨年12月に開催されたピラティスフェスタを皮切りに、違う流派のワークショップも継続単位として認められるようにするなど、メソッドや形でなく、ピラティスの本質的な考え方を共有する取り組みを今後も進めていく。高田香代子さんピラティスアライアンス代表恵比寿と鎌倉にピラティス専門スタジオを経営。養成コースやワークショップ企画・開催も定期的に行っている。ピークピラティスマスターインストラクター。ピークピラティスフル認定、ストットピラティスフル認定。海外のフィットネスプログラム情報にも通じており、株式会社文教センターで商品開発にも携わる。お話を訊いた方撮影協力 スポーツスパ アスリエ旗の台18June,2013 www.fitnessjob.jp

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です