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ビジョンを持つことが必要だと高橋さんは警鐘を鳴らす。 「ビジネスとしての成立しやすさから、マイクロジムを設立する人の若年化が進んでいます。專門学校を卒業して数年間フィットネスクラブに勤めて、『指導に専念したい』と、すぐに独立の道を選ぶパターンです。多くの場合、低いリスクで始めようと賃貸マンションでスタートしますが、ここで課題にぶつかっている人も多くいます。近隣の方の目が気になったり、マーケティングを体系的に行わないことで、収入もすぐに頭打ちになる可能性があるのです。今後パーソナルトレーニングの市場をさらに拡大していくためには、マイクロジムのオーナー・経営者として、将来的に人を雇用して経営・運営できるスタイルを目指すことが必要で、長期的なビジョンを明確にしたうえで小さく始めることが大切です。仲間と一緒に経営・運営してリスクを抑えようと考える場合でも、契約関係を明確にしてスタートすることが、将来ビジネスを確実に成長させていくうえで重要です。2013年はこうしたビジネスオーナーとしての情報交換や、ビジネスに必要な知識、スキルを学ぶニーズも高まっていくと考えられます」医療との連携に注目 高橋さん自身も現在、パーソナルトレーニングジムとピラティススタジオの2軒を経営し、ジムのスペースを約2倍に拡張したところである。マイクロジム経営7年目を迎える2013年は、医療との提携に注目していると話す。健康関連分野の専門家との協業も、マイクロジムやトレーナーの強みを活かすうえで注目される動向の一つになりそうだ。ピラティススタジオnano代表の亀谷なおみさんは、こう話す。 「ピラティスや機能改善のパーソナルトレーニングに関心を持つ医療従事者の方々が増えています。特に理学療法士の方々は、スタジオのお客さまとしても養成コースや勉強会などに参加される方も増えてきています。今後は地域のドクターとも共同でイベントを開催するなどして、メディカルコミュニティの中で、ピラティスやパーソナルトレーニングの価値を啓発していければと思っています」 特に医療従事者がピラティスやパーソナルトレーニングに学ぼうとしているのが、クライアントに対する声がけだという。例えば肩が上がり猫背の方に、医療の現場では「肩を下げて」と伝えるところが、ピラティスでは「耳と肩の距離をとって」と伝える。それだけでクライアントの姿勢が改善され、可動域が広がることも多いという。こうしたクライアントとのコミュニケーションを切り口にすれば、トレーナーが医療関係者に提供できる情報も多くある。 高橋さんは栄養や介護予防の分野でも、トレーナーが活躍できる領域が多ビジョンを持ったマイクロジム経営への移行の年に!低いハードルでも、高いビジョンを 日本のマイクロジムはここ数年倍増している。その要因として、パーソナルトレーニングが一般生活者にも浸透し、ビジネスとして成立しやすい環境が整ったことがある。2013年益々増えることが予想されるマイクロジムの動向について、「ジム・スタジオ経営者コミュニティ」をフェイスブック上で運営し、マイクロジム経営者との広いネットワークを持つ高橋順彦さんに話を聞いた。 「2013年は2012年の流れを受けて、大きく3つのトレンドが見られると考えられます。一つは、起業の若年化。2つめに、マンションからテナントスペースへの移転新設、3つめに一人での運営から、仲間との共同運営への移行です。2013年のトレンドは、マイクロジムオーナーたちが、長期的ビジョンを見直し、それに整合する動きが出てくるということだと思います」 パーソナルトレーニングジムをオープンして、初期投資も含め黒字化させることを一定の成功と捉えるならば、今、マイクロジム経営は非常に成功しやすい環境にある。ワンルームマンションを賃借し、内装への初期投資をかけなければ、トレーニング備品の購入費として数万円の初期投資でスタートできる。月々の経費も家賃の数万円ほど。それに対して収入は、1時間のセッションが6,000円とすれば、1ヶ月に10〜20セッション程度提供すれば、家賃や水道光熱費などはすぐに賄うことができ、それ以上の売り上げがあれば黒字化が可能。月々の売上に合わせて自身の給与を設定すれば、利益も出せる。極めてシンプルな構造でビジネスが成立する。 だが、参入障壁が低いからこそ高い亀谷なおみさんNaomi Kamegaiピラティススタジオnano代表ピラティス指導を軸に10年以上の運動指導経験を持つ。月間120レッスンを超える指導を行い、クライアントは脊柱損傷者から腰痛改善、膝痛改善、四十肩改善、パフォーマンスアップなど幅広い。ピラティス指導者の育成にも力を注ぐ高橋順彦さんTakashi Norihiko株式会社nano代表取締役社長 パーソナルトレーニングスタジオnanoと、ピラティススタジオnanoを経営して7年目を迎える。フェイスブック上で運営する「ジム・スタジオ経営者コミュニティ」には、全国のマイクロジム経営者50名超が参加し、日々情報交換をしつつ、個々のビジネスと業界発展に寄与することを目指すく残されていると話す。マイクロジムオーナーとして、トレーナーとして、提供できる価値はトレーニング以外にも広がっているということだ。自身の強みを活かしつつ、専門家と協業しながら自身のビジネスの存在価値を高める。そうしたビジョンと戦略を描いて2013年を過ごすことで、マイクロジム市場もトレーニング市場もまだまだ伸びる余地が残されている。高橋順彦さんの動向予測Trainer12February,2013 www.fitnessjob.jp

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