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OASISています。クラブに来るのは地域の3%で、健康づくりにお金を投資できる人たちです。意識が低い方にも情報や体を動かす機会を届けられる仕組みが必要だと思います。フィットネスから介護予防、次は医療や自治体との連携や、要介護レベルの方等へのレッスンに広げて、『自立』のレベルをさらに上げるために、より多くの人たちに対応していきたいですね」 オアシスでは自治体から受託する介護予防教室に加え、自社の高齢者向けプログラム「はつらつ体づくり教室」で、椅子を使った転倒予防運動等も行う。フットケアやレッグエクステンション等、日常生活を改善する視点でレッスンを組み立てる。自治体の介護予防教室は、参加者のモチベーションが低いケースが多い。初回で参加者交流や会話を引きだし、簡単なストレッチなど敷居の低いところから少しずつ段階を上げていくことが重要だ。 「エクササイズの内容は、対象が一次予防でも二次予防でも、シニアマンションの要介護のレベルでも変わりません。腿の筋肉が落ちやすいこと、猫背について、年をとると抗重力筋が弱まることなどをお話します。一回のレッスンで、はっきりと効果が実感できることが大切です。フットケアをする前とした後で立った時の足裏の感覚の違い、肩をゆっくりまわすと、首の回りが楽になり見える視界が広がること、手を揉むと赤くなって血行が良くなること。『朝のドラマがスタートしたら、かかと・つま先上げをしましょう』など、宿題も出します。シニアマンションでは、自宅で暮らしていたころよりも体力や運動能力が落ちていることが多く、歩くことや転倒予防が重要です。高齢者の方の腿の筋力は、20代の5〜6割と言われています。大腿四頭筋の選択的萎縮によって、腿の前側の筋肉が急激に落ちてしまう。下肢筋力を鍛え、片足立ちなどをやります。車椅子の方でも、認知症や麻痺など状態は様々です。手をグー・パーして握ったり、声を出したり、口腔体操をしたり、楽しくできるようにします。『今日やってよかったことを二つ挙げて、隣の人と話してください』と、コミュニケーションを生むことも大事です」「安心」「効果的」「楽しい」を軸に、広げていく フィットネスクラブにお金を払って能動的に通うのとは違い、介護予防教室は、諦めたり後ろ向きの気持ちになると、継続が困難になる。だからこそ最初に、「肩を上げたい」など、無理のない目標を設定して、小さな達成を積み上げていく。石川さんは日々悩み、迷いながら、考え続けている。 「介護予防教室に来るきっかけを大事にしたいです。『安心』『効果的』『楽しい』の3つを軸におきます。心穏やかに運動できる環境であること。何か少しでも気付いて、達成感を得て、続けてみようと思っていただき、効果を出すところまで導く。そしてインストラクターの仕事の根本は「楽しい」を提供すること。教室のなかで笑いが出るようにしています。用意されたものをただ提供するのではなく、お互いに引お話を聞いた方石川啓子さん株式会社 東急スポーツオアシス ヘルスケア事業 サブマネージャー2003年入社、フィットネススタッフとして運動指導に従事。シニアマンションやデイサービスでの体操指導、自治体の介護予防教室運営に携わる。2006年より介護予防プロジェクトチーム発足、介護予防事業の企画運営や介護予防運動指導員養成に従事、現ヘルスケア事業に至る。クラブの外へ、敷居の低いところから少しずつ 東急スポーツオアシス(以下オアシス)のヘルスケア事業サブマネージャーの石川啓子さんは、社員として店舗のスタッフ、グループレッスン等の職を歴任。高齢者も多かった大田区の多摩川店では、シニア向けのエクササイズや水中ウォーキング、膝痛・腰痛予防のレッスンを担当した。その後、聖路加ガーデン店に異動し、シニアマンションで出張型の運動教室等を行う。平成18年に介護予防の運動機能の向上が主軸になると、現場での指導・運営・営業、高齢者向けのプログラムの作成等、同社の介護予防事業の立ち上げ期から幅広く仕事をしてきた。 「フィットネスクラブ内では、6〜7年前には、まだ介護と介護予防の違いも認知されていませんでした。最近は介護予防という言葉も浸透し、介護予防運動指導員の活躍できる場所も増えっ張り出しあいながら、関係のない言葉や会話も拾って繋げます。『いま、ここの筋肉使っていますよ、わかりますか?』と触ったり、エアロビクスなどのレッスンとは違うコミュニケーションとケアが必要です。片耳に耳栓を入れて話したり、聞きづらさを体験して、伝え方を考えたりもします。個人個人の課題のピックアップが大事です。この仕事をはじめた6年ほど前に、指導方法やケアの仕方に悩んでいた頃、74歳で体操教室に初めて参加された方に『この教室を続けていたら、膝がすごく楽になった。一生杖をつかなければと残念に思っていたけど、人生が変わりました』と言っていただけました。その方はいま80歳ですが体操教室を継続されて、今も杖なしです。人生が変わるほど影響があることは、とてもやりがいがあります。今は介護予防事業として、出前講座もしています。囲碁の会などに行くと、運動をしたくない方もいらっしゃる。それでも囲碁を一緒に見ていると、そのうち「やってみよう」と運動をはじめてくれたり。いまはそれが楽しいですね。『予防』に必要性を感じない方もいるので、認知症予防に有酸素運動は効果的なことなど、体を動かすことの良い影響を広く伝えて、人生に寄り添っていきたいです」自立のレベルを上げる、自治体・自宅・出張型の運動指導大手企業インストラクターによる介護予防の取り組みstudy 0114November,2012 www.fitnessjob.jp

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