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熟練運動(10歳以上)協応運動(3~9歳)基本運動(1~4歳)反射運動(0~1歳)練習することが必要な運動誰でも自然に身に付けられる運動少学校低学年までにテレビやゲームより運動好きにする 運動の好き嫌いについての調査もある。短大・大学生300名にアンケートで「あなたは運動(身体を動かすこと)が好きですか?」という問いから、そうなった原因を探ったものだ。そこでは、「運動が嫌い」と答えた人のうち8割の人が、幼少期から小学校の低学年に嫌いになったと答えたという。つまり、幼少期から低学年での運動に対する体験が、一生の運動に対する認識を決めてしまっているということだ。 小学校の低学年までに運動が嫌いになってしまうと、テレビやゲームなどに没頭するようになる確率は高まり、脳への刺激や血流はさらに減る。諏訪東京理科大学篠原菊紀教授との共同研究で、ゲームによって脳が活性化されるのは、最初の数分で、あとはほとんど脳は使われないことも分かっている。ゲームのリモコン操作を覚える段階で脳が使われるものの、画面の状況に反応してボタンを押すという行為に使われる脳はほんの少しの部分だけなのだ。 ここで柳澤教授は、幼少期の運動の重要性を改めて協調する。 「子どもがゲーム好きになってから『ゲームばかりするのはやめなさい!』と言っても、ゲームを我慢すること自体子どもにストレスになります。ストレスはさらに脳へのダメージを引き起こします。重要なのは、幼少期までに『運動のほうが楽しい』『時間があったら運動したい』と思えるように導くことです。小さい時に身体を動かすことの楽しさを知った子どもは、ゲームを楽しいと感じないので、ゲームに没頭するということはなくなるのです」 子どもは、何かができるようになると「見て!見て!」と自分から進んでやるようになる。また、もっと上手になりたいと自分から練習するようになったり、自分からもっと難しいことにチャレンジし出す。運動好きになる最初のきっかけさえ作ることができれば、自然に子どもの運動量は増えていく。運動好きな子に育てるコツ 生まれてからの運動行動は4つの階層構造になっている。「反射運動」「基本運動」「協応運動」「熟練運動」で、図のように年齢に応じて、より複雑な運動ができるようになっていく。 「反射運動」は生まれたばかりの赤ちゃんが、おっぱいを吸う、手のひらに指を置くと握るといった、動物として備わった本能的な行動。また、「基本運動」は「立つ」「掴む」といった行動で、個人差はあれ誰でも自然に身につけられる行動。だが残りの「協応運動」と「熟練運動」には練習が必要となる。「ボールを掴んで投げる」といった「協応運動」や、さらに「ボールを掴んで、できるだけ速い速度で的に当てる」といった「熟練運動」は練習が必要で、学校体育でいう「できる」「できない」の差が出てくる部分である。そして、この「できる」「できない」が、運動の「好き」「嫌い」を規定してしまう。柳澤教授はこう加える。 「ただ『協応運動』も『熟練運動』も、練習すれば子どもは必ずできるようになります。いかに遊びの中でこうした運動を繰り返し練習できる機会を作れるかがポイントになるわけです」運動好きな子どもを育てる運動種目 柳澤教授はまた1977年から幼少期の子どもを対象に、どういう種目が子どもたちの運動能力を伸ばすうえで効果があるかについても研究をしてきた。その結果導きだされた種目が鉄棒の「逆上がり」、縄跳びの「連続跳び」、跳び箱の「開脚跳び」、そしてマット運動の「側転」など。「できる」「できない」が、子どもの目から見ても明確に分かることがポイントだという。「できなかったことが、できるようになる」ことを体験できることで、練習したら「できた!」という自己効力感が得られたり、できたことを思い切り褒められて「嬉しい!」と純粋に感じることが、子どもを運動に惹きつける。「『できる』ことが、『楽しい』『嬉しい』に繋がり、運動が『好き』になり、自分からどんどん難しいことにもチャレンジする『自主性』も育てていきます。運動によりその脳の習慣をつくることで、運動だけでなく、勉強や、将来の人生にも大きな影響を与えていくことになるのです」子どもを運動好きに育てることが、何よりの知育運動が好き ←嬉しい ←楽しい ← できる自己抑制・自主性を生む ← 心を司る脳が育つ問題の解決法を発想し行動できる知育が活きる8August,2012 www.fitnessjob.jp

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