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June,2012 www.fitnessjob.jp43れまでの彼の活動の足跡を聞いてみた。 「出身地である新潟のスポーツ系専門学校を卒業後、金沢にある〝フィットネスクラブエイム〟に就職しました」 エイムと言えば、北陸のみならず全国的にその名を轟かせ、業界内外からも一目置かれるフィットネスクラブであるが、駒澤君はそのエイムで今の基盤となる部分の多くを学んだという。 「3年半、正社員として働かせてもらいましたが、上司の笹木文雄さんをはじめ、アドバイザーの島田厚さん、そして福島三和子さんから、クラブマネジメントの大切さや、インストラクターとしての実務的な事まで、多くの事を近くで学ばせて頂きました」 彼と話をしていると、多くのインストラクターの名前が出てくる。その方々全てに心から感謝をしているというが、その中でも、特に島田厚さんと福島三和子さんには足を向けて眠れないと言う位、お世話になったという。 「3年半正社員として勤務をしたのちに、3年間金沢でフリーインストラクターとして活動をしたのですが、社員からフリーに変わるとき、そして変わってからも、公私に渡りたくさんのアドバイスを頂き、この二人には感謝してもし切れないんです」 多くの方にアドバイスを頂けるというのは、それだけ彼に魅力があるという事だろう。アドバイスをする側も、する価値があるかないか見極めているものだ。彼の話を聞いていて感じた事は、とにかく吸収しようとする意識が高いということだ。私との会話の中でも、「具体的に教えてください」、「それはなぜですか?」など、疑問に感じた事や興味を持ったことについて、即座に質問をしてくるなど、こちらも話をしからないが、レッスン直後まだ汗が引けぬ中、私なんぞに挨拶に来てくれたその姿に好意を持たない訳がない。その時は、簡単なあいさつ程度ではあったのだが、この時の彼への印象が私の記憶に刻み込まれていたのだろう、奈蔵から駒澤君を紹介された時に感じた〝直感〟は、この時の事が頭の中に残っていたのだと、今、取材を終え、その時の事を回想しながらキーボードを叩いている。 その駒澤君であるが、今日本における若手男性インストラクターの中でも、最も勢いのある一人と言っても過言ではない。出身は新潟なのだが、現在は活動拠点を関西に移し、精力的に活動をしている。しかし、関西を活動場所として選んだ事には何か理由があったのだろうか。 「今年の4月から大阪で生活を始め、関西を中心に活動を行っています。関西での活動を決めた最大の理由は、ルーキーコンテストで優勝した山川君をはじめ、同世代で頑張っている男性インストラクターが多いことと、今は海外留学をしていますが、魚原さんの活躍を見たり話を聞かせて頂き、近くに切磋琢磨できるインストラクターがいる関西で揉まれることが、更なる成長には必要だと感じたんです」 確かに今、関西の男性インストラクターは勢いがある。貪欲に前に出る姿勢が際立っており、クラブイベント、インストラクターの自主イベントの数も東京のそれを凌いでいる。環境が人を変えるというが、彼は自ら競争の激しい関西に拠点を移し、その厳しい環境の中で、駒澤悟というブランドを確立しようとしている。彼は現在27歳。まだまだ発展途上の段階であるが、こリンクのサンプリングを行っていた私は、レッスンを受講している島田厚君を見つけた。手足の長さを存分に活かした彼のダイナミックな動きは、さすがの一言だったが、その隣でナチュラルでいてしかも躍動感ある動きの男性に目が留まった。 「彼は誰だろう?」 クラスも終わり、頭の中で島田君の隣で伸び伸びと動く彼の残像がまだ消えぬころ、その彼が挨拶に来てくれた。 「初めまして、駒澤と言います。よろしくお願いします」 私の視線を感じていたかどうかは分ていて、とても楽しくなってくる。こういう感覚は、幼少期の親御さんの躾による部分が大きいと思うのだが、どのような教育を受けてきたのだろう。 「父は単身赴任でほとんど家にいませんでしたので、正直、家族皆で一緒に過ごした記憶が余りありません。でも、とにかく両親の事が大好きで、本当に父と母が親で良かったと思っています」 息子が両親の事を大好きだと言うこの一言だけで、どれだけしっかりとした教育を施してきたのか、十分に理解できる。最後に今後のビジョン、そして、彼の思いを聞いてみた。 「当面のビジョンは、日本でトップクラスのプレゼンターになることです。その先の事はまだ何も考えられないのですが、その延長線上に教育者としての自分も少しずつですが、イメージできるようになってきました」 自分が目指すべき方向性がようやく具体化され、建設的な歩みを進めている彼だが、その思いはまだまだ貪欲だ。 「自分の可能性をどう切り開くのか、試行錯誤しています。正直、先輩方にはもっともっと色んな可能性を教えてほしいですし、見せてほしいと思っています。そして、自分のポジションを脅かすような僕よりももっと若いインストラクターの台頭も、期待しています」 私が、『先輩、後輩に何か言いたいことはない?』と促したところ恐縮しながらもこのように答えてくれたのだが、彼は本当に終始謙虚な受け答えだった。インストラクターのような人前に出る仕事に必要な要素にタレント性というものがあるが、しかし、インストラクターに必要なタレント性には、俗に〝タレント〟と言われる方々と絶対的に違う部分がある。それは、「人間的な謙虚さ」という要素だ。集客しようが、何か賞をもらおうが、レッスン単価が上がろうが、インストラクターは常にユーザーと直接触れ合う仕事であるため、人間性を評価されることが多い。だからこそ人間的謙虚さの欠如は、インストラクターとしての成功を掴む上で致命的となるのだが、彼にはその心配は全くなく、社会人形成がしっかりと成されていた。そんな駒澤君に、今までの日本にいないタイプのスケールの大きいインストラクターになって頂く事を期待し、今回の章を終わりたいと思う。取材後記有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/とっても人懐っこい笑顔が印象的な駒澤君だが、その眼の奥には、将来を見据える強い意志を感じた。自分をどうやって向上させるか、まだまだその方向性と方法に迷いがあるというが、彼は確実に自分の意志で前に進んでいる。新潟から石川、そして次なるステージに大阪を選び、今後は世界をも視野に入れているであろう。現に、今この原稿を書いているまさにこの時、彼はイタリアのコンベンションでプレゼンターとしてステージに上がっている。世界中のフィットネスファンからの喝采や厳しい意見を謙虚に受け止め、一回りも二回りも大きくなった駒澤君の活躍をこの目で見届けていきたいと思う。INTERVIEWER 丸山 寛

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