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June,2012 www.fitnessjob.jp1111になるのです」 金澤さんはさらに、「物事の考え方も180度変わった」と、その好影響は身体だけではないとも話す。 「以前はとにかくがむしゃらに頑張っていましたが、ピラティスで身体を効率的・効果的に動かせる方法があることを知ったことで、身体をつくるための食事や、試合前の減量も、効率的・効果的な方法を研究するようになりました。強くなるためには根性ももちろん必要ですが、同じだけ根性を使うなら、こうした考え方を採り入れることで、さらに強くなれる実感があります。自分が変わっていける実感があることで、きついトレーニングも高いモチベーションでのぞめます」 若手ボクサーの成長を助けるピラティスピラティスとの出会いは、少年野球のためのトレーニング講習会で桑原匠司さん(現 PHI ピラティスジャパン代表)の講義を受けたことがきっかけ。桑原さんが主催していたピラティスのインストラクター養成コースに参加すると自分の姿勢がみるみる良くなったことに衝撃を受けた。柔道整復師として痛みの治療に携われる知識と技術をもつが、ピラティスは特に自分の身体を自分でケアできるようになる点や、部分ではなく全身のアプローチで痛みやケガの根本的な原因を改善できることに特にスポーツ界や医療業界においての可能性を感じていると話す。ボクサー独特の競技スタイルに合わせたピラティス パーソナルトレーナーとして、ピラティスや柔道整復師の資格をもつ小田島正樹さん。最近はピラティスを格闘家をはじめとするトップアスリートに紹介することが増えていると話す。 「格闘技はどれも、外的から加わる予測が難しい負荷に対して、自分の芯や軸を安定させ、相手からの攻撃をかわしたり吸収したりしつつ、自らが攻撃することが求められます。そのため、動きの安定性と柔軟性がつくれ、そして身体のコントロール力が身につくピラティスは動きの基盤をつくる上では最適です」 ボクシングの世界チャンピオンを目指して挑戦を続ける金澤晃佑(かなざわ・あきよし 19歳)さんも、ピラティスをはじめて大きくパフォーマンスを高めた一人だ。 「腰痛で下半身に痺れがでて、練習もできなくなった時に知り合いの紹介で小田島さんのもとでピラティスをはじめました。始めて2〜3週間たった時には痛みもほとんどなくなりボクシングジムのコーチから『動きが安定してきた』と言われたんです。そう言われてみると、以前よりも楽に動けてスタミナもついていて、動きが変わってきた実感がありました」 ボクシングには、相手からの攻撃を防御するために両手を顔の前に構える特有の姿勢がある。体のしくみや動きを充分に理解せず、単にこの姿勢をとることは非効率的な動きに繋がると小田島さんは説明する。実際に背中をまるめ、骨盤を後傾させているだけの選手も多くいる。ピラティスで身体の正しいアライメントや動きを知り、自分の身体でその動かし方を理解したうえでこの姿勢をとることで、そこからの動きのパフォーマンスが大きく変わると話す。 「ボクシングでは相手の動きを上手く交わしながら、素早く強いパンチを出すことが必要になりますが、骨盤が必要以上に前後傾してしまうと股関節の周囲の筋が効果的につかえず、前にでる動作や切り返し動作の時にも影響を与えてしまいます。ここで骨盤をニュートラルポジションに近づける一方で股関節、膝、足首、足趾のアライメントを意識させバランスをとるようにすると、下半身が安定し、次の一歩が素早く大きく踏み込め爆発的なパワーを生み出すことができるのです。また、上半身は背中をまるめて肩が前にでているようにみえますが、肩甲骨の位置、肩関節の位置はパンチ力、パンチのスピードにも大きく影響を与えます。肩甲骨を正しい位置に維持する筋、上腕骨の骨頭を正しい位置に維持する筋それぞれにアプローチをかけ最も効率的かつ効果的に動く身体のポジションを自分の身体で理解することが大切です。そのポジションを覚えたうえで、ボクシングの姿勢をとることで、高いパフォーマンスが発揮できる状態を維持することができるのです」動きを改善すると、スタミナもパワーもつく 金澤さん自身も、以前は見よう見まねで過酷な練習に望み、上半身が前に倒れ過すぎていたことで腰に過度な負担がかかっていたことに気づいたと話す。CASE 02 身体が安定感を得た今後の課題はKOできるパンチ力。そのために体幹部からのエネルギーや、下半身からのエネルギーを無駄なく肩甲骨から腕へ、そして拳へと繋げる動きづくりに興味津々だ。小田島さんはこう話す。 「アスリートや格闘家は、専門のスキルトレーニングが非常に重要で、ここはパーソナルトレーナーとはいえ入り込むことができないことがほとんどです。そこでピラティスで伝えようとしているのは、とにかく選手本人に正しい身体の仕組みや、正しい身体の動きを知ってもらうことです。その理解が深まれば怪我や故障の予防だけでなくどんどんパフォーマンスを自ら高めていくことができるようになります。PHIピラティスは各肢位でのニュートラルポジションを重視して、そのポジションが崩れない範囲の小さな動きから導入していきます。アスリートや格闘家など、激しいトレーニングに慣れている方には最初理解することが難しい場合もありますが、正しい位置で各筋肉や各関節を動かしていく事で正しい筋の長さ、正しい関節の位置を身体自体が理解していくため、姿勢の変化や動きの変化に気づかれる方が多くいらっしゃいます。そこまでくれば、自分に必要なピラティスエクササイズを普段のトレーニングに必要に応じて採り入れていただけるようになります。私自身も毎日ピラティスをしていますが、1日やるのは3〜4エクササイズ、10分程度です。アスリートや格闘家にとってはケガの予防も大きな課題となりますが、日々の状態に合わせてピラティスを採り入れていただけるようになれば、自身のメンテナンスもパフォーマンスアップも効果的に行えるようPILATESStory小田島正樹さんとピラティス

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