感情を整えることが、家族の健康の土台をつくる
2017年2月15日
先日、講演で福岡に行きました。福岡には、高校時代の部活(ラクロス部)の友人2人が住んでいます。友人らと会うのは、かれこれ、7~8年ぶり。2人とも、2人の子どもを持つ母親になっていました。
待ち合わせは、日曜日の夜のレストラン。道に迷った私は10分ほど遅刻。強風と雨と寒さで、息を切らしながら到着しました。
学生時代の友人とは、どんなにブランクがあっても、会った瞬間学生に戻ります。何も、本当に見事に何も変わっていない友人たち ―ある1つを除いては―。
彼女たちは、しばらく会わないうちに、見事な「母親」になっていました。赤い顔で到着した私に、次々ティッシュやらお水やらを差し出してくれます。
道中も、福岡行きのフライトが出発する時間、着いた頃、帰る頃、ところどころでぴったりのタイミングでやさしいメッセージのLINEが入ります。
実際会えたのは3時間ちょっとでしたが、その前後も含め包み込まれるようなあたたかさで迎えられ、送り出されたのでした。
相手を気にかける度合いや、メッセージの内容やことばそのもの、私の好みにぴったりのおみやげなど、福岡を出発した後も、そのあたたかさが、温泉のように続いて、幸せな気持ちになりました。
母親の愛情は、家族の感情に与える力が大きい?
昔から「母は強し」といいます。
女性は母親になると子どもや家族を守るために、強い力を発揮することを表現したことばです。
私になりに解釈すると、この「強い力」というのは、まさに母親の「愛情」で、この愛情が、子どもやだんなさんの「感情」に与える影響が大きいのではないかと、今回の旅を通じて思いました。そういう意味で、母の力は強しなのではと思っています。
行動科学や行動経済学の分野では、感情が健康の選択に与える影響についての研究が進められています。
これらの研究から、健康に悪い習慣を取ってしまう背景に、「怒り」や「悲しみ」などの感情が関わっていることが明らかになってきています。
例えば、健康的な決断を取れない背景の1つには、遠くの「健康」よりも、目の前の刺激(喜びや楽しさ)を選んでしまう人間の心理があります。
健康に悪いとわかっていても、目の前の悪習慣(タバコやお酒、ジャンクフードなどなんでも!)を選んでしまうのは、この心理が影響しているのですが、この傾向は、感情的になっているときや、ストレスが溜まっているようなときに強まることが知られています。
呼吸を整えて、感情を穏やかに保つ
こういった話をすると、「それでは、感情を穏やかに保つにはどうしたらよいのか」という質問を受けます。
1つおすすめの方法は、呼吸を整えることです。
私自身、その方法を知りたくて、昨年、私は、アメリカでヨガの先生の資格を取りました。科学的にも、ヨガやマインドフルネス、瞑想の効果は、健康の分野で実証されつつあります。
呼吸と感情は密接なつながりがあります(深い話は、今度ここで取り上げます!)。深い腹式呼吸は、感情を落ち着かせるだけでなく、心拍数を下げ、血圧を安定させる効果があると言われています。
(参照 http://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/relaxation-techniques-breath-control-helps-quell-errant-stress-response)
口呼吸は、呼吸を浅くしてしまうので、特にこれからの花粉症シーズン、鼻のとおりをよくしておくことも、大事なポイントです。
他人の感情をコントロールするのは不可能に近いでしょう。
でも、同時に、北風と太陽のストーリーのように、あたたかい気持ちは、必ず相手の心に届き、次第に人を変える力を持つと思います。
皆さん自身が穏やかな気持ちでいることが、家族の健康の大きな土台をつくります。
家族の「健康のため」に何か具体的に行動するのはもちろん大切なのですが、彼らが穏やかな気持ちで日々毎日過ごせるようにすることも、健康的な習慣づくりにとって、とても大事な要素です。
心が落ち着かないときや、不安なとき、イライラしてしまったときは、一瞬でもよいので動作をとめて、深くお腹から息をしてみるようにしてください。
今回、ニューヨークに来てからも、ことあるごとに彼女たちのやさしさを思い出して、ほっこりする気持ちになります。彼女たちが放つ愛情は、きっと家族の健康を守る土台になっているのだと思います。
☆林 英恵