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【NEXT 9月特集】フィットネス・スポーツ業界で活躍する 栄養士の食事指導法 for Fitnsss&Sports

2016.08.25 木 スキルアップ

胃腸の働きを高めて強い身体をつくる食事法 食アスリート理論

2人の男の子を出産して、育児をしながらフリーの管理栄養士の活動をスタートした馬淵恵さん。子どもたちが始めたサッカーを通じて、スポーツをする人の栄養サポートに強く惹かれ、日本体育協会公認スポーツ栄養士を取得。「食 を育てる」をモットーに、アスリート寮の献立作成や栄養セミナー、スポーツの分野で活躍できる栄養士の育成に邁進している。

その馬淵さんが勧める食事法は「食アス理論」。2014年に設立された食アスリート協会が提唱する食事理論で、日本の食習慣をベースにした実践しやすい食事法である。馬淵さんはその効果をこう説明する。

「アスリートにとって栄養や食事は重要ですが、成長期のアスリートにとっては尚更です。一般的にアスリート食の基本は6皿と言われており、主食、主菜、副菜、汁もの、乳製品、果物を揃えることが理想です。ただ実際に日々の食事でそれを継続するには手間もかかります。そこで開発されたのが、3皿でその基本に近づける食アス理論。3皿とは、『お米』『おかず』『具だくさんみそ汁』で、胃腸での消化吸収力を高めることでアスリートの心身の力を育てようとする理論です。シンプルなので習慣として採り入れやすく、栄養士でなくとも、トレーナーやコーチにとっても指導しやすいこともメリットです」

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食アスリート協会では、アスリートにとっての食事の基本をシンプルな食事法にまとめるとともに、“食べる力”のつけ方が学べるワークブックをつくり、アスリートが学びやすい仕組みを整えた。さらに、この理論やワークブックを活用した指導法を形式知化することで、一般の栄養士やトレーナーでもアスリートへの食事指導ができる指導者認定もスタート。栄養士がスポーツ分野でセミナーを開催しやすくなったり、トレーナーが自分がかかわっているチームで栄養指導ができるようになることで、より多くのアスリートが実際に食べる力を向上していけることを目指している。

「スポーツの分野では、専任の栄養士を雇える環境があるチームはまだ少ないのが現状です。アスリートに食事指導が届きやすい仕組みをつくることで、一人でも多くのアスリートや関係者の方々に食事や栄養に興味を持っていただきたいです。またそれにより栄養士やトレーナーの活躍の場が広がることにも繋げられることを期待しています」

食アスリート協会理事主任講師、管理栄養士 公認スポーツ栄養士 馬淵恵さん
共立女子大学食物学科管理栄養士専攻を卒業後、 大手食品メーカーで営業を経験しフリー管理栄養士として独立。行政、病院、企業での生活習慣病・ダイエットなどで延べ3万人超の食サポート経験を有す。現在は高校(野球、ラグビー、サッカー)、大学(ラグビー、アメフト)、実業団バレーボールなどのチーム栄養サポートを担当する。また、管理栄養士達が自分らしい働き方を見つけられる仕組み作りをミッションとして様々な活動を行う。

一人暮らし初心者や学生アスリートのための ライフスタイルに合わせた健康の土台づくり

近年、充実したフィットネスセンターを備える大学が増えている。青山学院大学では、約154坪のフィットネスセンターを整備し、運営はプロスポーツチームやトレーニングルームへのトレーニング機器導入実績を豊富に持つ株式会社ザオバが受託。トレーナーが常駐して、学生へのフィットネス指導と、大学のスポ ーツチームに所属する学生アスリートのトレーニングをサポートしている。中村志織さんは、管理栄養士として同フィットネスセンターに常駐し、学生の食事指導や、選手たちへの栄養カウンセリング、セミナーなどを行っている。中村さんの食事指導のコンセプトは、「ライフスタイルに合わせた健康の土台づくり」。大学に入って一人暮らしを始め、初めて自分で食べるものを選び、料理をするという学生も少なくない。そこで、学生の生活環境に合わせて、食事の基本が学べて、無理なく実践できるように配慮している。

「学生さんの生活環境では、あまり食事にお金がかけられず、料理のレパートリーも少なく、生活が不規則になりやすいといった特徴があります。まだ若いからといって健康を過信せず、この時期にしっかりと望ましい生活習慣を身につけ、食事の大切さを学んでおくことで、生涯にわたって健康に過ごせる可能性が高まります。そこで、お金をかけなくても、料理のスキルがなくても、強い身体を作ることができる食事のしかたや、食品選びが実践できるように工夫しています」

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青山学院大学では一定の基準をクリアした体育会学生は高い重量のフリーウェイトが整備された「アスリートルーム」を利用することができ、中でも「強化指定部」に所属する選手たちは、月1回の頻度でインボディ測定の数値をもとに栄養カウンセリングも受けられる。中村さんは、その他にも広くスポーツをする学生フィットネスに興味を持つ一般学生たちに栄養や食事の大切さを啓発したいと、合同セミナーを企画したり、季節に応じたレシピを用意したりときめ細かく情報を発信している。

「学生スポーツの場合、秋にリーグ戦があるスポーツが多く、夏休みに入る前に『ここで差がつく!夏バテしない身体づくり』というセミナーを開催したところ、100人の定員を超える参加がありました。とても意識の高さを感じます。目的が明確でモチベーションが高いときに本質的な情報を伝えることで、長い人生にも役立つ生活の土台がしっかり作れるサポートをしていきたいです」

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青山学院大学フィットネスセンター 中村志織さん
管理栄養士。趣味でマラソンを約10年続けているランニング愛好家でもある。ランナーとしての経験を活かし、2014年よりスポーツ現場で管理栄養士としての活動を始め、多くのスポーツ愛好家やアスリートとの交流を深めている。 青山学院大学では一般学生や体育会学生向けの栄養サポート(食事相談・セミナー講師)やマラソンチャレンジプログラムなどを担当している。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/September No.114 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟

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