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【NEXT 9月特集】フィットネス・スポーツ業界で活躍する 栄養士の食事指導法 for Fitnsss&Sports

2016.08.25 木 スキルアップ

フィットネスやスポーツ分野での、栄養や食事の重要性が広く認識されてきたことで、この分野で活躍する栄養士が増えている。ここでは栄養士としての専門的知識や経験はもちろん、いかにフィットネスやスポーツをする人たちに適切な食事習慣を続けてもらえる環境がつくれるかが重要となる。 今、フィットネスはスポーツ分野で活躍している栄養士が、どのようにそれを実現しているのか。その具体的メソッドと継続手法を探る。

Fitness&Sports Situation

身近で実践的だから続けられる生活密着カウンセリング法

松田幸子さんが管理栄養士の資格を持ちながらフィットネス業界で働き始めたのは約20年前。自身がジュニア時代に競泳選手として活躍した経験をもとに、フィットネスやスポーツの業界で栄養や食事の重要性を早くから啓発してきた一人である。現在までにパーソナルトレーナーやアスリートチームのサポーターとして実績を積み、活動の拠点としている大泉学園周辺の地元主婦から、日本ジュニア競泳界のトップレベルで活躍する選手たちまで、広く信頼を得ている。

その松田さんの食事指導の特徴は、身近で実践的なこと。個別カウンセリングでは、白紙の紙に、クライアントの生活の情報を自由に書き込んでいく。話しながら、あいまいな内容はタブレットですぐに検索。クライアントの生活と食事を、できる限りリアルに把握していく。そのうえで、食事のアドバイスも生活に密着した情報で提供していく。例えばクライアントが料理をする人であれば、普段その人が食材を買うスーパーのチラシをタブレットで検索して表示。その日の特売品も話題にしながら、食品の選び方や組み合わせ、買う量などもアドバイスしていく。学生や男性でコンビニエンスストアを利用することが多い人には、利用するチェーンの弁当や惣菜ラインナップをタブレットに表示。具体的に選び方をアドバイスしていく。

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松田さんはこう話す。「いくら目的意識が高い人でも、栄養士から押し付けられる情報ではモチベーションが上がりません。そこでカウンセリングは井戸端会議のような雰囲気にして、とにかく生活に密着した内容で会話をして、できそうなことを一緒に見つけていくようにしています」

その後の進捗確認に活用するのは、人気アプリのLINE。写真もコメントも送りやすく、ガラケーユーザーも含め、誰でも簡単に利用できることがメリットだ。ジュニアアスリートの場合は、食事をつくる母親とも別スレッドでコミュニケーションをとり、心身ともにサポートしていく。「ジュニアアスリートの場合は、さらに手書きの交換日記もしています。成人からジュニアまで、『自分を見てくれている』と感じられることが何よりモチベーションにつながります。 また、一人で悩まず相談できる人がいるだけで気持ちが楽になって頑張れるものです。今後はこのカウンセリング方法や指導方法を栄養士仲間とも共有して、より多くの方々をサポートしていければと考えています」

Total Wellness Consulting 松田幸子さん
ジュニア競泳選手時代に合宿の食事が要因でケガをしたことで女子栄養大学へ進学。卒業後、株式会社レヴァン(現株式会社ティップネス)に入社。退職後フリーのパーソナルトレーナー・管理栄養士として年間1000件以上の個人指導を実施。2011年10月にフィットネス業界初の日本体育協会公認スポーツ栄養士登録。栄養士対象講座やスポーツトレーナー専門学校、一般の小学生に運動と食の大切さを伝える鹿島アントラーズ食育キャラバン講師などを務める。

心理学専攻の栄養士による気持ちに寄り添う食事指導法

カリテスといえば、人気のグループエクササイズ「リトモス」をはじめ、ダンスフィットネス界をリードするイベントや情報発信で知られている。代表取締役の桑原裕子さんは管理栄養士の肩書きを持ち、学生時代から現在に至るまでトップアスリートから一般生活者までの食事指導に携わってきた。クライアントには、プロゴルファーでリオ五輪にも出場した片山晋吾さんや、女子プロゴルファーで賞金ランキング4位(2016年7月末時点)の笠りつ子さん、チームでは神奈川大学水泳部や春日部 競泳高校水泳部など強豪校の栄養管理にも携わり、アスリート向けにオリジナルサプリメントも開発している。

その桑原さんが食事指導で大切にしているのはクライアントや選手たちの気持ちに寄り添うこと。大学時代に健康心理学を専攻していた背景もあり、その人の気持ちと生活習慣に寄り添うことを何より大切にしているという。

「ダイエットしたい方にとっても、トップアスリートにとっても、食事は大切な息抜きの時間。ストレスにならないように、簡単に実行できることで、続けられることをアドバイスします。『これだけやればいいの?』というようなシンプルな行動でも、続けることで自然に意識が変わり、身体も変化していきます。それが実感できれば、自分の身体や食事に対する意識も高まり、興味を持って取り組めることにつながります。一方で、確かな結果を求める人には遺伝子検査に基づくアドバイスもしています」

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最近では、女性アスリートが増えてきていることから、女性アスリートの食事セミナーを増やし、敢えて男性コーチや監督にも参加してもらっている。女性の生理や貧血による心理面への影響を、女性本人も関係者も理解することで、女性アスリートのモチベーションを適切に維持できるからだ。また、ジュニアアスリートには、保護者向けにお弁当のつくり方セミナーなども開催。お弁当箱で簡単に適切な分量と栄養バランスのとれた食事ができることを伝えている。

「栄養についての情報は、運動の情報以上に溢れていますが、一人ひとりの食事を見ると偏っている人がほとんどです。一人ひとりの気持ちに寄り添い、それぞれに快適な大きさで一歩を踏み出せることをサポートしていきたいと思います」

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株式会社カリテス代表取締役 桑原裕子さん
管理栄養士、健康科学修士「バランスの良いおいしい食事」をキーワードに数々のクライアントをサポート。プロアスリートから一般まで、個人の目標や環境に合うアドバイスを提供。トップアスリートのトレーニングキャンプに帯同し栄養面でのサポートも行う。中京女子大学大学院健康科学研究科での健康心理やリフレッシュ学の研究を活かし、クライアントの気持ちを考えた栄養サポートをめざしている。

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