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November-December 2014 ◎ Fitness Business 75155『CSV時代のイノベーション戦略』『「バカな」と「なるほど」』『社長の掟』Recommend Books ヒントになる本 ◉Text by Takenori Furuyaデロイト トーマツ コンサルティング パートナー 藤井 剛著株式会社ファーストプレス刊価格:1,800円+税吉原英樹著PHP研究所刊1,300円+税吉越浩一郎著PHP研究所刊840円+税CSV(Creating Shared Value 共通価値の創造)とは、企業が事業を営む地域社会や国、あるいは世界の経済条件や社会状況を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行をいう。今、その潮流は、GEやグーグルなど、世界の経済界に広がってきている。日本の各地でフィットネスビジネスに従事するプレーヤーは、本業を通じて地域の生活者の価値向上に十分貢献していて、それでよしと考えがちだが、視野をもう一フレーム拡げて社会全般を見渡したとき、あるいはそもそも我々はなぜこの仕事をするのかと根本を突き詰めて考えたとき、もっと社会と経済の両方の成長に貢献し続けることの重要性に気づく。本書は、その実現に向けたアイデアを案出するためのヒントや仕組みを構築し、成果を導き出し競争優位に立つためのキーポイントについてわかりやすく解説している。特に、CSV×イノベーションを具体的に推進する5つの処方箋は、役立つだろう。著者の藤井剛氏は、デロイト トーマツ コンサルティングで、これまで数々のCSV×イノベーションを実現するプロジェクトに携わり、現在もその第一線で活躍するコンサルタントだ。今号の特集記事巻頭の基調論考にもご登場いただいている。特集記事と併せて、本書を熟読することで、自社が目指す「CSV時代の健康マーケティング」を浮かび上がらせることができるだろう。戦略の本質を「部分は非合理でも全体では合理である」と喝破したのは、楠木建氏であるが、そのことを解説した著書『ストーリーとしての競争戦略』に触れて、大いに首肯した読者は多いのではないか。本書(以下、「バカなる」)は、今から25年以上も前に書かれたものであるが、その『ストーリーとしての競争戦略』のネタ本となったものである。「復刊によせて」と題した前書きで、楠木氏自身がそのことを次のように告白している。「従来の〈模倣障壁系〉の話に代わる持続的な競争優位の論理はないものか。僕はこのことをずっと考えていたのだが、そこに突然降ってきた恵みの雨が『バカなる』だった。〈非合理の理〉、これだ!〈バカなる〉の論理こそが持続的な競争優位の本命だ!と唐突に興奮した。その興奮を数年かけて本にしたのが、拙著『ストーリーとしての競争戦略』である」。フィットネス業界の関係者のなかにも、当初「カーブス」や「エニタイムフィットネス」などの新業態に「バカな」と感じていた人もいよう。しかし、今日そうした新業態が既存業態をしのぐ勢いで成長している様子を知り、さらに『フィットネスビジネス』誌などでその戦略の合理性を理解し「なるほど」と思い、脅威や機会を感じるようになった人も多かろう。 本書では、成功する企業が備える部分非合理と全体合理の構造を説明している。いつも実力を発揮して、継続して結果を出し続けられることこそが、社長としての第一条件であり、絶対的資格なのだ」。かつてトリンプ•インターナショナル•ジャパンの社長を務め、同社を飛躍的に成長させた著者はこう言う。そして、本書でそれを実現するための60則を示す。どこの業界にもまったく好業績をあげられない社長がおり、その理由をすぐ業界の構造や景気の悪さ、社内人材の欠如などに求めたがる。こうした社長に対して、著者は「社長失格」と一刀両断し、次のように言う。「昨年より今年のほうが売り上げが伸び、利益が拡大しているというのが、会社が正常に機能している状態であり、そしてそのことに無条件に責任をもつのが、会社という組織のトップに立つ社長なのだ」。とりわけ、著者が重視するのが、リーダーシップである。著者は「それを得るには自ら経験し試行錯誤するしかない」と言い、次の3つが大事だと指摘する。(1)常に結果を求め、絶対に諦めず、必ずやり遂げる(2)部下に仕事をまかせ、自ら育つ環境を設定し、報連相へのこだわりを捨てる(3)デッドラインを導入し、残業をなくす。そして、「これらを達成すれば、自然と成果の出せる組織になっているはず」という。本書は、社長でなくともリーダーとして組織をまとめる立場に身を置く者なら、誰もが身に付けるべき原理原則を説いている。「

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