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Fitness Business 75 ◎ November-December 201490ティップネス、戦略・コンセプトの転換を象徴するアイテムとしてTRXを導入スモールグループエクササイズとしてほぼ全店に導入、定着進む株式会社ティップネスが、機能的なトレーニングをセリングポイントに革新的なクラブづくりをしていこうとするなかで、それを象徴するコンテンツとして選んだのがTRXサスペンショントレーニング。導入から3年が過ぎ、TRXを使ったスモールグループエクササイズは、今どうなっているのか。同社商品部小林知之氏に、これまでの経緯、現状などについて訊いた。平均参加率は実質的な定員に対し 7割、参加者数が安定2009年9月「ティップネス丸の内スタイル」店の出店に際し、ティップネスは従来の常識にとらわれないコンセプトを打ち立て、業界に先駆け革新的なクラブをつくろうとした。このとき、従来からフィットネス業界で一般的だったマシンによるセルフトレーニングに換えて、当時ファンクショナルトレーニングとして認知されつつあった、より機能的なトレーニングを指導するサービスを主体に提供していこうと考えた。ファンクショナルトレーニングとは、このころアメリカの先進的な施設で取り入れられていたトレーニング概念であり、身体のコアの安定性を高め、さらにそこを軸に身体の各部位が連動してスムースに動けるようにすることで、パフォーマンスの向上に効果を発揮するトレーニングとして徐々に広まっていた。同社は、日本においてどこよりも早くこうした機能的なトレーニングが行えるフィットネスクラブであることを訴求して、フィットネスクラブのコモディティ化から脱し、差別的優位に立とうと考えた。そして、その機能的なトレーニングを象徴する有力なコンテンツのひとつとしてTRXサスペンショントレーニングを導入し、主にスモールグループ形式で導入を加速していくことになる。以降、ティップ.クロス TOKYOブランドの各店やティップネスブランドの各店にも続々導入を進め、’12年末に30店、’13年末で52店、現在ではほぼ全店といえる55店に導入されている。今や立派に標準スペックに育ったといってもよかろう。そのことは、スモールグループエクササイズへの参加率にもよく表れている。現在、実質的な定員がおよそ10名のところ、平均およそ7名の参加が安定的にある。お客さまからも「簡単そうに見えるけれど実際にやってみると奥が深く、確かに身体に効く」「胸のトレーニングをしているはずなのに、お腹が筋肉痛になるなど、効いていることが実感できる」「自分がトレーニングしている様子がアスリートのようで、かっこいい」など、マシンでは得られにくい魅力を感じ、評価する声が数多く聞こえている。同社商品部小林知之氏は、「最近は、3Dサーキットという、TRXやサンドバッグなど複数のギアを使ったサーキット形式でのスモールグループエクササイズを提供していますが、こちらもたいへん人気があります」と言う。参加者同士でコミュニケーションがとれることもよいのだろうが、トレーナーとお客さまとのコミュニケーションも適度にとれるところが、こうしたスモールグループエクササイズの魅力だろう。メリットばかりのように思えるが、小林氏は「必ずしもそうとは限りません」と言う。「専用フレームを設置するとなると相応のスペースをとることになります。また、それを教えるための研修費も必要になります。実際に指導する局面ではスモールグループ形式ならではの難しさもあります。さらにいえば、そもそも初めて機能的なトレーニングに関わるスタッフにはその価値から説明しなければなりません」。経済的に換算すると、こうした部分に関わるコストは、従来以上にかかってしまうのだろう。だが、楠木建氏が『ストーリーとしての競争戦略』のなかで指摘しているように、部分不合理・全体合理の戦略ほど、他社がまねしにくく、またまねしようとも思いにくいことから、成功する割合が高まる。同社も全体最適を意図して、TRXなどを使った機能的なトレーニングを、覚悟をもって導入し、ブレることなく提供し続けてきたからこそ、マーケットのなかで、今独自のポジションを確立することができつつあるのだろう。逆にいうと、コンセプトや提供サービスが従来と変わらないまま、一部に機能的なトレーニングを取り入れるだけでは戦略適合性、全体最適性を欠き、経営的には成功しづらいということだろう。ティップネスのさらなる進化に期待したい。

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