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November-December 2014 ◎ Fitness Business 7531CSV時代の健康マーケティング特 集Featureをしている。さて、そんな川﨑氏であるが、どうしてプレイケアを事業化しようと思ったのか、まずその経緯から紹介することにしよう。川﨑氏は、大学卒業後、玩具を扱う大手、株式会社バンダイに入社。入社して数年後の1997年ごろ、当時マーケティングを担当していた同氏は会社から近隣の特養、老健などにボランティアに行くきっかけをもらった。そこで出くわしたのが、「そうした施設は遊びに困っている」(川﨑氏)という現状だった。施設の職員は、レクリエーションという時間に何らかの遊びを提供することが日課になっていたのだが、反応の乏しい高齢者の方々に日々工夫してそれを提供し続けることがとても難しかったのだった。一方、玩具業界では、少ない子どもに対して何百社もの玩具メーカーが、日々たくさんの遊びをつくって、しのぎを削る競争をしていた。そこで川﨑氏がひらめいたのが、「対象を子どもから高齢者に変えて、相応しい遊びを開発・創造して提供すれば、玩具業界の資産をもっと活用でき、役立てるのではないか」ということだった。さっそくボランティアを5人ほど集めてチームを作成。これを拡大発展させていき、企業や業界の壁さえ超えて広く賛同者を募り、将来1,000人規模の団体にしていこうと考えた。それが「プレイケアセンター」構想の始まりだった。この構想を事業化プランにまとめて、 ’03年、バンダイ社内で行われるベンチャー事業コンテストに応募したところ、総計1,000の事業化プランのなかから優れた10のプランの1つに選ばれて、数百人を前にプレゼンテーションをすることになる。すると、そこでも見事に社長賞を獲得。同年、バンダイから出資と人材の供給を受け、株式会社プレイケアを設立し、構想を具現化していくことができた。会社にも「言った者がやれ!」「駄目ならやめろ!」といった権限移譲と試行錯誤、スピードなどを大切にする組織文化があったため、事業化は矢継ぎ早の展開をみせた。バンダイとしても、新たなマーケットの開拓につながっていった。ここでのポイントのひとつに、製造業のサービス化がある。「特養・老健施設に、『バンダイです。玩具はいりませんか?』とアプローチしても、相手にされません。ところが、『プレイケアです。レクリエーションのクラス、お困りになっていませんか?』とアプローチすると、とても興味をもって話を聞いてくれるのです」。こう川﨑氏は語り、ソリューションとしてのサービス・コンテンツの提供に大いなる需要があること、サービスプロバイダー、平たくいうとレクリエーションの先生としての立ち位置でアプローチすることの優位性を知り、自ら構想した「プレイケア」事業に自信を深めていった。利害関係者のすべてが win-winとなる仕組みの構築「プレイケア」はサービス提供事業であるため、それを提供する人材の育成がとても重要になる。そこで同社は、まず「プレイケアリーダー」を丸一日で育成できるように教育体系を整え、全国の介護職員140万人(当時)を対象に、「プレイケアリーダー養成講座」の受講を促し、資格取得を推し進めていこうとした。つまり、事業以前に介護マーケットに向けた人材を、一気にたくさん育成してしまおうと考えたわけだ。そうした人材インフラさえつくることができれば、やがてシニア全般のマーケットにまで自然に手を広げられると考えた。対象市場の選び方も秀逸だった。川﨑氏が、なぜ介護マーケットから参入しようとしたかというと、それは「(対象顧客の)居場所が明確だったから」(同氏)。そうしたマーケティング戦略が奏功。当時、介護保険制度がスタートして間もないころだったこともあって、介護マーケットに「プレイケアリーダー」が、“標準”として受け入れられるのに時間はかからなかった。タイミングは絶妙だった。しかも、同社はこの研修を希望すれば誰でも無料で受けられることにした。そのからくりは3つある。1つ目は、毎年スポンサーを募り、資金を拠出してもらい、運営面の費用にあてたことである。その見返りとして、同社はスポンサー企業が実現したい介護サービスの普及に協力した。スポンサー企業としては、モノが売れにくくなった時代に、対象顧客の経験価値を高められるリアルな場所をもち、そこで“コト消費”を促すことによって“モノ消費”を活発にしたい意図があり、同社からの提案は渡りに船だった。スポンサー企業には、資生堂やロッテ、味の素、パナソニック、第一興商など、名だたる企業が名を連ねた。例えば、資生堂の場合、プレイケアがサービスを提供する施設内で、化粧療法というプログラムを提供した。もちろんこのプログラムはあらかじめ、化粧をしていると認知症軽減に効果があるというエビデンスをとったうえで提供した。また、ロッテの場合も、ガムをかむことで口腔ケアができるプログラムについて、資生堂同様にエビデンスをとってから提供した。2つ目は、無料で受講した施設に

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