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合わせも頂いたりしております。これまではお客さまのほうから当社の施設に来ていただきましたが、これからはこちらから出向いて、今お住まいの場所でずっと元気に過ごしていただけるような街づくりをしたいと考えています。相川 現在フィットネスクラブに通っているご高齢の方というのは、お金に余裕があり、健康への意識も高い、ある意味高齢者のなかでもエリートな方々だと思います。それ以外の、元気な高齢者の方たちの意識を高めて、「今からきちんと運動していれば、要介護にならずに済みますよ」という啓発をしていきたいと考えています。――現在取り組んでいるなかで、課題は何でしょうか?安澤 やはり“人”の部分でしょう。「元氣ジム」にしても、今“人”がいるなら、20~30施設でも展開できる自信はあるんです。しかし、きちんとした知識や技術、そしてこの分野に情熱がある方を見つけるのは非常に難しい現状があります。「元氣ジム」は小さな施設ですから、施設長であっても何役もこなさなければいけません。ときには送迎をやることもあるでしょう。さらに、理学療法士や看護師など、いろいろな業種の方と接する機会がありますし、利用者やケアマネジャーとのやりとりもありますから、介護全般の知識も必要です。制度や状況を理解して、相応の施策をとることも求められます。そういう意味でも“人”の養成には時間がかかります。桑田 当社も同じく、課題の1つ目は“人”の育成ですね。スタジオでレッスンを行っているインストラクターの方はグループ指導に長けており、キャリアがあれば全体を見る能力も高いですから、そういう方たちとうまく連携していければと考えています。2つ目は、地域支援事業でどう差別化を図り、その違いを自治体に理解していただき、選んでもらえるかという部分です。自治体の担当者も2年おきぐらに変わり、担当者が変わるとよくも悪くも180度状況が変わってしまうことがあります。自治体の方とも密に連絡をとり、見学に来てもらったり、プログラムを体験してもらうことで、そのよさを理解してもらうよう働きかけることがとても重要だと考えています。相川 当社では先ほど述べたように、介護予防運動指導士の養成を行っていますが、実際に介護予防事業では、理学療法士をはじめ国家資格を持つ人材も必要で、そうした人材の確保も難しい状況にあります。さらに、介護保険法の改正によって、デイサービスの経営環境や自治体の介護予防事業の体制が変わりますので、特に今後の要支援に該当する虚弱者層の受け入れ態勢を整えていくことも課題になると思います。――地方のフィットネスクラブ事業者や指導者が介護予防事業を始めるには、具体的にどこから取りかかるとよいでしょうか?安澤 それぞれの自治体によって窓口や事業方針が異なりますから、まずは市役所などへ行って確認することが大切かと思います。桑田 先日、静岡のある介護事業者の方から研修の依頼を受けて、行ってきました。その事業者の方はデイサービスを提供しているのですが、施設が休館する日曜日などに地域の高齢者を集めて教室を開くことを希望されていました。すぐには利益に結び付かないかもしれませんが、まずは自分たちを認知してもらう、自分たちが介護予防事業を行っていることを理解してもらうための投資と考えて、地道に継続していくことが必要かと思います。そのほか、まずは現在のフィットネスクラブ会員の方のご両親や、ご近所の高齢者の方をクラブや教室に呼んできてくださいという働きかけ方もありかと思います。相川 自治体によって考え方や取り組み内容も違いますから、まずは自治体の担当者とコミュニケーションをとることが非常に大切だと思います。自治体によって、金額入札で金額の安い企業を選ぶところもあれば、プロポーザル方式で提案内容を吟味してから決定するところなど、さまざまです。また、自社ならではの介護予防プログラムを持っていることも重要です。「当社はこういうことができますよ」「これはいかがですか」など他にはできない提案ができると強いと思います。自治体の担当者がネタを探していれば、「それ、いいね。ちょっと見積もり出してくれる」という流れにもなります。さらに言えば、水中運動など、フィットネスクラブの施設や資源を活かしたものにするといいですね。そのような行動を積み重ねることで、自治体の担当者から相談されたりということも結構あります。地方のフィットネスクラブや指導者であれば、自治体と密な関係を築きやすいと思うので、そうしたコネクションづくりから進めていくのも有効な方法だと思います。――10~20年後のフィットネス市場についてのお考えをお聞かせください。安澤 これは私見ですが、10年後には、従来型の総合型フィットネスクラブからの売り上げは現在の半分ほどに縮小しているのではないかと考えています。ですから、当社としては、高齢者向けをはじめとしたヘルスケア関連事業や、海外事業を含む新規事業で残りの50%、またはそれ以上を稼げるようになっていたいですね。桑田 今、高齢者をターゲットにした事業でうまくいっていない理由のひとつには、ターゲットが絞り切れていないことがあります。高齢になればなるほど体力のある方とそうでない方の差はどんどん大きくなりますから、高齢者のなかでもどういう方をターゲットにするのかを明確にしてから、プログラム開発やセールス方法を考えることが必要です。そうすることで、自治体などへの提案も説得力のあるものになると思います。相川 介護法改正もあり、介護予防事業はこれから必ずニーズが高まる分野です。現状では、ビジネスとして成り立たせるのはなかなか難しい状況ですが、社会貢献事業としても取り組むことは大事だと思います。今後も人材の育成とプログラムの開発は必須です。また、指定管理事業もこれから増えて行くと思いますので、介護予防事業ともども、しっかり取り組んでいきたいと思います。また、今後は他業種とコラボレーションするなど、自社が持っていない部分をお互いに補完しながら取り組む方法も有効かと考えています。―最後に、介護予防ビジネスに取り組むうえで今後最も大切となることを教えてください。安澤 先ほど述べたように、やはり人材の育成に尽きるでしょう。桑田 運動にこだわりすぎないことでしょうか。日本のフィットネスクラブへの参加率はわずか3%ですから、97%の方は運動があまり得意ではない、もしくは嫌いな方かもしれません。高齢で体力が低下してくれば、もともとはそうでなくとも運動が嫌いになる場合もあるでしょう。そのような方に対して、「健康には運動が大切だから」と強く勧めることはあまりよくないかもしれません。まずは「あそこに行くと楽しいんだよね」と思っていただけるような環境づくりが大切かと思います。相川 私も人材の育成だと思います。とくに介護予防事業は、強い思い入れがなければ、難しさや大変さを先に感じてしまうかもしれません。人生経験も豊富な方たちを相手に、優しくも、しっかり効果を出せる指導を提供することが必要ですから、知識はもちろんのこと、“人間力”も含めた人材育成が大事だと思います。もうひとつは、高齢者の方々の運動に参加するモチベーションを高めていただくために、効果をきちんと数字でみせられるようにすることでしょう。「この運動を行ったらこれだけ効果がありました」と、しっかり示せることが重要です。November,2014 www.fitnessjob.jp17する拡大高齢者マーケットを狙え!

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