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現在の体育指導と子どもたちの生活変化(運動と脳の発育について) 私は25年間、中学・高校の教員を務めました。体力テストの結果、1980年をピークに子どもの体力は低下している。その頃の特徴と今とどこが違うかというと、子どもたちが遊んだり運動したりスポーツをする時間の“マ”、友達=仲間の“マ”、場所=空間の“マ”。「時間・仲間・空間」の、3つの間(サンマ)が減少してしまったのです。 運動は習慣化されないといけません。学校で良い指導を受けても、家庭や社会に戻ったときにそれを反復して楽しくできる環境がないと、なかなか上達はしない。 筋肉活動をすると、脳も発達するというエビデンスが揃ってきています。脳には海馬が2本あります。国際誌にも論文が発表されていますが、MRIで見てみると、よく寝た子は寝不足の子よりも海馬が10%太いということがわかっています。運動をしたら、「食べて寝る」ということが大事です。授業プログラムのポイント 小学校に授業観察に行くと、子どもたちはあっちこっちみて集中していません。お昼の給食のことばかり考えています。 たとえば走り幅跳びをやらせると、跳ぶ人と砂場の係りに分かれますが、跳ぶ方は砂場の準備がOKなのかどうか、いつスタートしていいか分からないですね。こういう時は、サッカーの副審が使っている旗を使います。旗をビシッと挙げると、色と音で分かるので一生懸命やるようになる。1分間あたり6回しか飛べなかったのが、回を重ねるごとに改善し、10回は跳べるようになりました。こうした教具を使って集中させ、密度の濃い授業・指導をしなければいけないんですね。「意味のあることを・熱意を持って・上手に」教えること。 喜びを表現するときのポーズもやっています。「やったね、よかったね!」「ナイス!」と声を掛けてハイタッチする。心から喜んであげます。これがダイナミックな、次世代型の運動指導です。 「楽しかったけどきつかった、きつかったけど楽しかったよね!」子どもたちにそう言われるような指導が大事です。〔実技の提案(一部)〕●ボイスアンサンブル●ボディパーカッション●人間知恵の輪●シンクロラダー最新指導授業の提案〜子ども体育指導者への提言〜 今回いくつかの実技を行いましたが、最後に模擬「全日本シンクロラダー選手権」をやりました。県大会は規定演技、次に全国大会を実施。全国大会は自由演技。どんなコリオグラフィーにするか、子どもたちで知恵を絞って話し合うんですね。ここで、言語活動が大事になるんです。知育・徳育・体育といいますが、実は体育には「知育」も「徳育」も入ります。本番はみんなが注目しています。すべてのチームが終わったら、表彰式もやる。音楽をかけて、各チームごとにクラブ旗を持つ。表彰状の授与もします。音楽は極めて重要です。こうして、ある程度の緊張感を作る、高揚感を与えることで、脳の血流量が増えるんです。非常に元気な生活を送ることができる。子ども時代に動ける身体を作ること、指導をするうえで仕掛けがあると楽しいですよ、ということをお伝えしました。 ラダートレーニングは日本代表もなでしこも行っていることです。小学生向け、中学生、高校生向け、素材としての「運動」をその年代やクライアントの特性にあわせていかに料理するか?ということが、指導者の腕の見せ所です。 みなさんが行う運動指導も、子どもたちの身体のためになり、脳の活性化のためになる。そんな運動指導をしていただければと思います。お話を聞いた方 小澤治夫さん東海大学体育学部体育学科教授・医学博士筑波大学付属駒場中・高等学校教諭等で勤務したのち2003年より北海道教育大学教授。2007年より現職。2010年〜2014年3月まで東海大学大学院体育学研究科長。日本発育発達学会理事、日本フィットネス協会理事、文部科学省 「子どもの体力向上プロジェクト」「子どもの生活リズム向上プロジェクト」研究代表など。イベント主催団体 OKJエアロビックファミリー1998年より、親子・子どもフィットネスに関するプログラム研究・指導者育成・普及を行う団体。 北海道から九州まで約200名の認定インストラクターがいる。東海大学体育学部体育学科教授・小澤治夫先生が、OKJ主催のイベントで「こども体育・フィットネス指導のマストプログラムとコツ」について講義と実技を行った。「日本一受けたい体育の授業」を大公開!COLUMN先生のダイナミックな講義・指導に全員注目自由に歩き、太鼓の音が鳴ったらハイタッチ!各グループごとに発表した、模擬シンクロラダー選手権表彰式も実施。授業でも、「高揚感」を生み出す仕掛け作りが大事という24August,2014 www.fitnessjob.jp

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