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感動を与えられる仕事がしたい 開発者の野木さんがパンツの開発を始めたきっかけは、2002年のワールドカップ。水沼貴史氏の縁でピッチで観戦していると、目の前でシュートが決まった。その瞬間、涙が溢れ、全身が震えるほどの感動を覚えたという。 その感動のゴールに触発されて、自分も何か感動を与えられる仕事がしたいとサラリーマンを辞め、父が経営していたアンダーウェア工場に入社。当時メンズスポーツ用アンダーウェアが日本になかったことから、新規事業として開発をスタートさせた。 世界各国をまわってはありとあらゆるメンズアンダーウェアを買い込み、履き心地をメモする日々。そんな中、ロサンジェルスでまさに思い描いていた「感動の履き心地」のパンツに出会う。わくわくしながら、その夜パンツをはいたままジョギングに出かけると、その感動が嫌悪に一変した。汗をかいた瞬間、ベトベトと肌にまとわりつき始め、何とも気持ちが悪かったのだ。そこで、商品開発の第一歩を、やわらかい肌触りと、汗をかいた時の快適さを両立させる素材探しに絞り込んだ。 だが、やわらかい肌触りの通気性のあるメッシュ調の繊維はすべて合成繊維で、汗をかくとベタベタになる。一方、汗をかいたときにも快適な綿では、感動のやわらかな履き心地を実現するのは難しい。包帯をパンツに?! そんな矢先に、父が「これどうや」と持ってきたのが包帯だった。最初は包帯をどうやったらパンツにできるのか見当もつかなかったが、その道の専門家である父の紹介で工場を訪ね歩くと、ついに「やってみましょう」と言ってくれる工場にたどり着いた。通常の包帯は使い捨てなのでスフというレーヨン素材のコストの低い糸が用いられるが、糸の素材をコットンにすることで丈夫で快適な生地ができるかもしれない。そう思うものの、包帯よりもかなり幅広な布が必要となり、商品として量産できるクオリティの安定性をつくることにも苦労した。そうして10回以上の試作を繰り返し、結果、1332本の針を使った「経編み機」という特殊な機械での生地づくりが実現した。 布ができれば、次の課題は縫製である。感動の履き心地を実現するために、ソフトさとフィット感を同時に実現するべく、生地の裁断から縫製にいたる一つひとつの行程にもこだわった。その結果、「ヘム仕様」という裾部分を縫わないで最終形にできる裁断方法を採用することにした。神社での展示会でブレイク。「履くと勝つ」縁起かついでトップアスリートに浸透Hit File07感動の履き心地を追求して行き着いた包帯パンツ。その独特の履き心地とクオリティは日本でしか実現できない。開発者の野木志郎さんのユニークなマーケティングで、「これを履くと勝つ」という評判がクチコミで広がりアスリートに支持者を増やしている。包帯パンツ開発者 ログイン株式会社代表取締役 野木志郎さん「糸」「裁断」「縫製」に加え、4つ目のこだわりとなった「染め」。それぞれに日本だからこそ実現できる技が生きているMarch,2014 www.fitnessjob.jp21

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