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じ、いつも勝てなかった競合チームの主要選手に話を訊きに行くと、その選手は農家出身でジムに通ったことがないのだという。そこで農家の人の動きに強い興味を抱くようになる。ミショルさんは、農家の人の動きと都市部に住む人の動きを研究した。都市部の人はデスクに座りっぱなし、電車移動と動きが極端に少なく身体に様々な問題を起こしている。農家の人は重さのある物質(土やシャベルなど)を持ちながら、多面的に動いている。それがアスリートのパフォーマンス向上に役立つのはもちろん、一般の人の日常生活の動きも向上させられるはずだと気づいた。ミショルさんは農家の「掘る」「ひっぱる」「投げる」といった動きをトレーニングに採り入れられないかと考え始めた。2005年頃のことである。原形は丸めたゴムマット 最初に目をつけたのが、ゴムマット。縦に丸めて筒状にすると、まるで農家のシャベルのように適度な長さと重量を確保できる。農家での動きをバイオメカニクスなど科学的な知見に照らし合わせながらトレーニングとしての動きを考案していった。 その後、さらに理想的な動きをトレーニングできるよう、ハンドルをつけた。外付けのハンドルでは耐久性が弱いことから、筒自体をカットしてハンドルにするなど、改良が加えられていった。また商品化に向けて、材質や加工方法、色なども検討を重ねた。 製品を市場に出すには製造、販売が必要になるが、そのパートナーとして名乗りをあげたのが、イギリスのフィットプロ社である。フィットプロは、世界で11万人以上の会員を持つ教育システム「PTオンザネット」や、ミショルさんも共同創始者であるPTA グローバルを運営する企業。数々のトレーニングギアの代理店経験もある。ViPRでは、フィットプロが製造販売をはじめ全体のビジネスマネジメントを行い、ミショルさんがトレーニングコンテンツの開発や指導者の教育システムを構築するという役割分担でスタート。見事なチームワークでViPRを育て上げた。るに至った最初のきっかけは、農家出身のホッケー選手だった。ミショルさんは大学を卒業後、幸運にもカナダの国技であるアイスホッケーのナショナルチームで活躍する選手のトレーナーとして働き始めた。自身が学んできたトレーニング理論をもとに、腕、脚、胸のストレングストレーニング中心にメニューを組んでいたが、なかなか実際の試合での成果が上がらない。行き詰まりを感ViPR人間の動き専門家が目をつけた農家の人の動き 開発者のミショル・ダルコートさんは、高校時代からとにかく人間の動きに興味があり、その探究心から大学で運動科学を専攻、トレーニングがいかに身体のパフォーマンスを高めていくのかの研究に没頭していた。 ViPRのトレーニングを発想す開発者PTAグローバル共同創業者ミショル・ダルコートさんアカデミックな視点から農家の動きを科学的に再現するトレーニングギア&プログラム世界的に広がりを見せるファンクショナルトレーニングをさらに一歩進めた、Loaded Movement Training (ローデッド・ムーブメント・トレーニング)を可能にするギアViPR。この種のギアでは珍しく、開発はトレーニング実践者やコーチではなく、研究者としての発想から生まれている。発案から5年で商品化、その後約3年で世界40ヶ国で販売するヒット商品となっている。Hit File0416March,2014 www.fitnessjob.jp

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