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June,2013 www.fitnessjob.jp33ました」 しかし、この運命を手繰り寄せたのも束の間、否運が訪れる。「ZESとなった直後に、主人の転勤で渡米しなければいけなくなり、ZESとしての活動を行う事ができなくなりました」 なんとその期間は3年。しかし、運命とまで思ったZUMBAのZESとしての立場を簡単に諦めきれなかった古川さん。彼女はここである事に気づいた。 「ZUMBA発祥の地はアメリカです。そのアメリカに住む訳ですから、これはチャンスだと思いました」 そして、渡米後3年間の間に数えきれない程のカンファレンスに参加し、ZESとして認定トレーニングのOJTに入り勉強を重ね、ZUMBA創始者のBetoとも面識を深めた。帰国後は、リードZESとして日本のZESのスキル面の強化を引っ張る役割を担っているが、私は古川さんのこのエネルギーの塊のような思考、行動にいたく共感を覚え、勇気をもらった。今回の取材中、古川さんが発する一言一言には、何か言葉では言い表せないパワーを感じたのだが、フィットネス業界に入ったきっかけは何だったのだろう。 「幼少時から大学まで、陸上、水泳、卓球、バスケットボール、テニスなど、あらゆるスポーツを行っていたので、フィットネスクラブで運動をする事なんて必要ないと思っていました」 しかし、この考えを覆す大事件が起こる。大学卒業後、一般企業に就職し海外事業部のシステムエンジニアとして忙しい毎日を送っていたある日、友人とドライブ中に交通事故にあってしまったという。大事には至らなかった “誰でも楽しめる”。確かに分かり易いフレーズではあるが、一歩間違えるとターゲットがぼやける恐れも十分考えられる。しかし、これだけ多くのZUMBAファンを創出し、獲得しているのだから、そのフレーズが“本当”であった事を結果が証明している。多くのフィットネス指導のエキスパート達が、老若男女、体力・スキルレベルなどを問わず、一つのプログラムで網羅できることが理想的だとは分かっていても、なかなか越えられなかった壁をZUMBAは軽々と超えてみせた。しかし、古川さん曰く、一気に広がりを見せたが故の懸念材料もあるという。 「先ほども言った様に、ZUMBAは誰でも楽しめる壁の無いプログラムです。インストラクターのライセンスも同じように受講条件に壁はありません。二日間のZUMBAトレーニングコースを受講いただければ誰でもインストラクターの道が開けます。しかし、受講条件がない分、運動処方に関する基礎知識のない方が、トレーニングコースの二日間を境に“先生”と言われる立場になってしまう事を私たちZESは危惧しており、国内のZUMBAインストラクターのレベルアップを行うブラッシュアップトレーニングを積極的に行っています」 古川さんがここまでZUMBAに思い入れを見せるには理由があるという。 「ZUMBAに出会う前からラテンダンスは大好きで、ラテンを取り入れたフィットネスライセンスには興味を持っていました。しかし、どのライセンスも認定トレーニングの日に都合がつかず受講を断念していたのですが、ZUMBAのトレーニング日程だけは予定が何もなく、これは運命だと思い ZUMBAの盛り上がりは、私がアドバイザーを務めさせて頂いているフィットネスクラブのオーディションを見ても、その発展ぶりが見て取れる。通常、特定プログラムを指定しての応募は、せいぜい多くても7~8名というところだが、ZUMBAに至っては20名を超えるインストラクターが集まるから驚きだ。なぜここまでZUMBAが日本で発展し浸透しているのか。 「音楽、プログラムが革新的であることは当然ですが、ZUMBAの謳い文句である、“誰でも楽しめる!”というシンプルなこのフレーズが、今のZUMBAの盛り上がりの最大の理由だと思います」が念のため病院で精密検査をした時にその事実が発覚する。 「背骨のレントゲン写真を見て、お医者さんが何度も椎骨を数えては、難しい顔をしているんです」 この時医師が数えていた部分は頸椎だった。直後、この医師の口から衝撃的な言葉が発せられる。 「通常頸椎は7つなのですが、古川さん、あなたは9つあります」と。更に腰椎にも先天的な異常があると告げられ、筋力でカバーするためにウェイトトレーニングを行うよう勧められた。これがフィットネスに触れる事になるきっかけとなった。しかし、黙々とトレーニングを行うよりもスタジオで音楽に合わせて動いているエアロビクスに惹かれ、間もなくして“スタジオデビュー”する事となった。そこからはスタジオプログラムに引き込まれ、気が付けば最前列に陣取り、後ろで受ける参加者のお手本のような存在になっていったという。 「一緒に参加している方から、動き方について質問を受けるようになり、『この人達にいい加減な事は言えない』と思い、養成コースで勉強しようと思いました」 この時点ではインストラクターになるつもりはなかったというが、今では人に関わり、何かを伝える事は“天命”だと感じているという。 最後に今後の活動について聞いてみた。 「私は、ビジョンを描いてそれに向かって行動してきたわけではなく、目の前の興味ある事ややらなければいけないと直感的に思った事に対し、精一杯取り組み、後悔しないように生きてきた結果が今です。これからも、とにかく一つずつ全力でぶつかっていきたいと思っています」 と答えてくれた。その際に古川さんは、 「常に自分の気持ちに正直でありたいし、損得で道を選ぶような事だけは絶対にしたくない」とも付け加え、自分のクラスに参加してくれたお客様が、少しでも上手く踊れるようになり、そして心から楽しんでもらえる事が一番の幸せだと言ってくれた。 ZUMBAのリードZESとしても、そしてフィットネスインストラクターとしても、何が一番大切なのを分かっている古川さんの活動にこれからも注目し、今回の章を終わりたいと思う。有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/取材後記取材を行った日の夜の便でフランスに発った古川さん。ZUMBAのカンファレンス参加のため、一人で向かうのだという。「大赤字ですよ~!」と笑い飛ばす古川さんだが、一つでも多くの情報を吸収しなければいけないリードZESとしての責任感の強さと、彼女のフットワークの軽さは見習いたい。年を重ねるにつれどうしても安全牌を選択してしまう私だが、ここぞという場面では自分の直感を信じて歩を進めてみたくなった。そう、古川さんのような最高の笑顔で!INTERVIEWER 丸山 寛

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