NEXT68
12/68

TIPNESSす。三つ目が効果。膝痛や腰痛の方が多く、病気もお持ちなので、それと上手くつきあい、向き合っていただくために、どうすれば楽になるのかを伝えます。喜んでいただけた時は嬉しくて、それがやりがいです。痛みが楽になった、歩きやすくなった、『生きててよかった』――前向きな気持ちになり、何かをはじめるきっかけになった、などのお声もたくさんいただきます」 笑いをとても大事にする井上さんの指導は、教室を漫談ではじめ、「エイ、エイ、ヤア」などのかけ声やリズムも重要な技術のひとつだ。グループでも参加者それぞれに体力が違い、動きの制限もある。各々に体調確認をして、その人に目を合わせた運動をする。体操していない時に、椅子の下に置いてあるペットボトルを取ろうとして転げ落ちてしまったり、指導中にも予期せぬ行動は起こる。個人に合わせた指導や細かいフォローは難しいが、だからこそ明るい指導を忘れない。包括支援センターから言われて来ている方には、とくに楽しさを感じてもらう。 「まずはじめは漫談・コミュニケーションから。参加者と会話する中でネタを拾いますが、事前に話す内容も考えます。緊張をほぐす意味でも、お客さんの心をつかむのがいちばん。とくに一回目は、どれだけ楽しませるか、気合が入ります。なぜ必要なのかをお伝えして、誰でもできるという安心感でモチベーションを上げて、次も来たいと思ってもらう。笑いを入れてリラックスしてすすめていきます。その後の内容は、手首回しなどのストレッチや指体操、リズム体操、タオル体操、筋力トレーニングと、自宅でもすぐに実施できる内容をお伝えします。リズム体操はお遊戯的にとらえられないように、必ずどこの筋肉を使っているかと、効果をお伝えします。タオル体操は、タオルを両手で持って、前や上に動かすことで、肩や肩甲骨の血液循環を良くし、肩こり予防に効果的です。タオルをくくって、ボールの形にして上に投げてつかむことで、筋力の向上、空間認知力のトレーニングにもなります。筋力トレーニングも、高齢者の方に多くみられる変形性膝関節症対策として、足の内側にタオルをはさんで、内転筋を鍛えたり。つま先あげやかかとあげ、膝伸ばし、様子を見て、スクワット・開眼片足立ちなど下肢の筋肉を中心に実施しています。『手を胸の前に出してください。その手を伸ばして、私にパワーを送ってください! えい、えい、やぁ!』などと、みんなで声を出しながら、リズムを伝えて、上半身、背中、腕の筋肉を広げます」時間をかけたコミュニケーション 今後は予防運動が必要な層へのさらなるアプローチが求められる。出張介護予防、家でできる運動、その両面からのアプローチ、地域や自治体とのさらなる連携が必要だ。そのなかで、井上さんは個人として何よりも「楽しさ」で広げていこうとしているが、もうひとつ大切なことがある。 「この仕事には、『待ってあげること』お話を聞いた方井上春菜さん株式会社ティップネスにてスタッフとして5 年間勤務した後、介護予防運動指導員としての活動を開始。現在の主な活動は、一般高齢者・特定高齢者に対しての転倒予防・介護予防運動教室、メタボ予防教室、フィットネスクラブでのエアロビクス・ステップエクササイズのレッスンなど。保有資格は、健康運動指導士、介護予防運動指導員、チェアエクササイズ認定指導員、他。リラックスと安心感かけ声やリズムも重要な技術 2008年より介護予防事業を展開、現在は「介護予防運動指導員養成コース」も開講しているティップネス。その郊外の店舗、高齢者も多い石橋店で5年間働き、その後フリーでインストラクターの活動をはじめた井上春菜さん。石橋店では当時の支配人が介護予防事業の担当という縁で声をかけてもらう。介護予防指導員と健康運動指導師の資格を取得し、現在は、3年前にスタートしたティップネスオリジナルの「いきいきワクワク健康体操」と、自治体の依頼による介護予防教室を担当。おじいちゃん・おばあちゃんが好きで、道を歩いてもお年寄りに目がいく――そんな井上さんが現場の指導で大切にしていることは3つある。 「一つは楽しさ。リラックスして楽しんでいただけるように、動きや会話に必ず笑いを入れます。高齢者の方向けの鉄板ネタを持っているんです。二つ目は安心。安全は当たり前ですが、安心感がすごく大切だと思っています。笑顔で、丁寧に、ゆっくり。アイコンタクトで、しっかり見てあげる。一対一で向かい合う時も、同じ目線に立ってお話するように心がけていまも大切だと思います。普通のグループエクササイズは一緒に進んで、上級では引っ張っていきます。介護予防は、靴を履く、マットに座る、立つ、会話――すべてに時間がかかります。そこで急かすと怪我にも繋がる。でも待つことは、話を大事にする、コミュニケーションの時間でもあります。私たちの世代は、ポンポンと説明してできるんですけど。ゆっくり丁寧に、くどいくらいに丁寧に説明してきちんと理解していただかないと、はじめたところで上手くいきません。90分のレッスンもずっと動いているわけではなく、話をしたり、認知症予防のトレーニングも入れますし、休憩も何回も入れます。最初は難しくて諦めちゃうことがあっても『できるできないではなく、脳に刺激を与えることが大事なんですよ』と言うと、皆さんきちんとやってくれるんです。以前は、楽しんでいただくことに力をいれていましたが、現在はもっともっと知識を深め、色々な方のお役に立ちたいと思っています。介護予防の指導をはじめて約6年。勉強すればするほど、多くの人たちに喜んでいただけて、どんどん楽しくなり、やりがいを感じています」「笑い」と「待つこと」で、楽しくアプローチ大手企業インストラクターによる介護予防の取り組みstudy 0112November,2012 www.fitnessjob.jp

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です