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タイプ診断チャートを活用した食事指導栄養学CASE06トレーニングと同じくらい重要な食事 管理栄養士として、幅広い人々の健康づくりに携わりたいとアクトスで働く吉岡大海さん。自身が小さい頃、病弱で、そのコンプレックスから丈夫なカラダづくりに強い興味を抱いたことが栄養の道を志すきっかけとなった。アクトスではインストラクターからマネージャーを経て、現在は企業や自治体、健保組合等お客様のもとへ出向いて行う健康セミナーや保健指導の企画運営に携わりつつ、フィットネスクラブでの栄養サポート体制を充実させることに情熱を燃やす一人。その思いをこう話す。 「まずは自分が病気にかからない丈夫な身体になるにはどうしたらいいものかと食事や運動に目を向け興味を持ちましたが、大学生の頃から本格的にトレーニングを始めたところ、見違えるように身体が変わったんです。そこでトレーニングの効果を実感したのですが、その効果を出すうえで何より重要だったのが食事です。そこで、この素晴らしい経験は他の人にも伝えねば!という気持ちになったわけです。しかし、いざこの世界に足を踏み入れてみると、フィットネスクラブには食事についての情報を正しく伝えられる人材や仕組みが少なすぎるように思いました。それでは、アクトスではお客様に食事についても見直していただこうと、そのきっかけづくりができるような仕組みを考えたのです」タイプ診断チャートで本当の自分に気づく 吉岡さんが開発したのはタイプ診断チャート(表参照)。食事分析では、その人の食事の内容をレーダーチャートにして傾向を見るケースが多いが、このチャートは自分の食習慣のタイプをレーダーチャートにして、主観と客観の両面から見ることで気づきを促すものだ。このチャートを活用することで、自分の本当の改善点に気づけるようになる。自分の思い込みから解放され、頭が一度クリアになることが大きな一歩になると吉岡さんは話す。 「フィットネスクラブのメンバーの方々は特に、栄養に関する情報にも敏感です。メディアから得る『何を食べたらいい、何を食べたら悪い』といった考え方に取り憑かれ、『こうしなきゃ』『これは食べちゃダメ』などという強い思い込みを持っている方が多くいらっしゃいます。自分が実際どんな食事をしているのかも曖昧な認識のまま、見よう見まねで無理してそれに自分を当てはめようとして、途中で我慢できなくなったり、効果が思うように出ずに、努力をやめてしまうパターンに陥りがちです。これではまるで、自分の現在地も曖昧なままやみくもに乗り物に乗って旅行するようなもの。目的地に辿り着けるわけもなく、ただ疲れるだけです。そこで、この食事分析では、実際の自分の食習慣に正しく気づいていただくことに専念します。それによって思い込みから解放され、自分に一番最適な無理のない方法にだけ目を向けていただけるようになるのです」 これと合わせて、吉岡さんが食事のセミナーやカウンセリングで、必ず最初にするクイズがある。「これから1年間無人島で暮らすことになりました。その島にはオレンジの木があり、そのオレンジはいつでも好きなだけ食べられます。湧き水があるので水の心配もありません。他に1種類だけ食べ物を1年分持っていっていいと言われたら、健康に1年間過ごすためにはどれを選びますか?」という主旨の質問。選択肢は「コーン」「バナナ」「ほうれん草」「ホットドック」「ミルクチョコレート」など。 すると、ほとんどの人は「バナナ」や「ほうれん草」などを選ぶという。それは、果物や緑黄色野菜を「身体にいいもの」として思い込んでいるから。逆に「ホットドック」や「ミルクチョコレート」が選ばれることはほとんどないという。多くの人にとって、それまでの経験から「カロリーが高い=身体に良くないもの」と思い込まれることが多いからだ。そこで吉岡さんは、こう話す。 「実はこの場合1番理想的なのがホットドック、2番目がミルクチョコレートなんですよ。バナナやほうれん草は確かにビタミン、ミネラルなどといった身体の機能を調節するために必要な栄養素が豊富ですが、残念ながらこれらだけでは身体自体を構成するために必要な、エネルギー、たんぱく質、脂質を十分量摂れません。例えば、ほうれん草だけでこれらをまかなおうと思うと、一日に約10㎏ものほうれん草を食べる必要があります。無理ですよね(笑)つまり、『カロリーが高い食べ物は身体に良くない』という勝手な思い込みが、食事の『バランス』やそれを食べる『量』や『頻度』といった本当に大事なことを見落とす原因になるのです。食べ物に罪はありません。単純にその食べ方さえ気をつけられれば、基本的に何を食べてもOKです。ただ、お医者さんに止められているものや、法に触れるものはダメですよ(笑)」食べたいものを食べる 吉岡さんが必ず伝えることのもう一つが「食べたいものを食べる」ということ。これもストレスのない自由な気持ちで食事改善をしていただくためにするアドバイスの一つ。ただし、そこには一つだけルールがあるという。 「カロリーコントロールはお小遣いのやりくりと同じ。高価なものがどうしても欲しい時、考え方は他の支出を節約するかお小遣いを増やすかの二つですよね。例えば、ケーキが食べたければケーキのカロリー分、何かを控えるか運動すればいい。身体の声に耳を傾け、一番食べたいものは食べる。その分他を工夫する。たったそれだけのルールです。難しそうじゃないでしょう?」 自分のことに気づくきっかけを提供し、本人が無理なく実行できる方法のみをアドバイスをする。そのために大切なことは、伝えることよりもまずその人を知ろうとすることだと吉岡さんは強調する。 吉岡さんは現場のトレーナーともこのシンプルな方法を共有して、さらに多くの成功事例に繋げたいと話す。アクトスには今社員として約30名の栄養士がおり、交代で同社のホームページ等でオリジナルレシピを紹介しているが、「今後はフィットネスクラブで、トレーニングと同じくらい正しく栄養の情報を取捨選択し提供できる人材を、一人また一人と増やしていきたい」と、栄養士仲間の活躍にも期待を寄せている。16September,2012 www.fitnessjob.jp

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