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July,2012 www.fitnessjob.jp1515トップアスリートのトレーニングの現場吉田さんに訊く 2009年に立ち上げた株式会社PCPでは、この4月の女子トーナメントで優勝した若林舞衣子選手やツアー初優勝を果たした大江香織選手、埼玉西武ライオンズで「ナカジ」の愛称で人気を集める中島裕之選手をはじめ、既に30人を超える契約アスリートを抱えている。種目も、バドミントンの潮田玲子選手やアーティストのEXILEの他、マウンテンバイクやビーチフラッグ、総合格闘技、競輪など幅広い。もちろんバレーボール、ラグビー、サッカー、陸上などのメジャー競技の選手も多い。吉田輝幸さんはこのPCPの代表取締役として、会社のミッションを明確に打ち出し、それに忠実に事業を組み立ててきたことが、今多くの選手たちに支持されている。そのミッションとは「最新で科学的に証明された根拠ある価値を創造し、世界中の方々にカラダが変わる喜びや幸せ、満足を提供します。企業活動を通じて人々の暮らしの充実、健康に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」。ここに謳われているように、PCPでは一般生活者や子どもたちにもアスリートと同様のサービスを提供している。 吉田さんがトレーナーとして多くの人をサポートしたいと考えるようになったのは、学生時代アルバイトから始めたトレーナー派遣会社での下積み経験がその基盤にある。吉田さんは学生時代陸上競技で国体出場を果たし、日本選手権で3位にまで上り詰めるほどの選手だった。しかし、そこに来て、オリンピック選手になるには厚い壁が存在することを実感し、悔しさを残しながらも選手ではなく選手をサポートするトレーナーを目指すようになる。そうして競技引退後すぐにトレーナーを派遣する会社にアルバイトとして入り、以来そこで約13年を過ごした。だが、当初はまったくトレーナーとしての業務に当たらせて貰えなかった。車の洗車やマシンの整備ばかりで、トレーニングに立ち会うことさえできない期間が数年続く。ようやくトレーナーとしての業務ができたのはフィットネスクラブでのパーソナルトレーナーの仕事。当時日本にパーソナルトレーニング市場が存在しない中でも確実にクライアントを得ていった実績が評価され、次第にアスリートの仕事にも携われるようになっていく。 そんな中、吉田さんに大きな影響を与えたのが、アメリカでの研修だった。2002年にアリゾナ州にあるアスリーツパフォーマンスでインターンシップを経験。そこで目にしたパフォーマンスアップのためのトレーニングや、選手を専門家チームでサポートする体制に、大きな衝撃を受ける。「こんな施設をつくりたい」。そうして、自身の会社を設立してその夢への第一歩を踏み出した。その後、サポートする選手たちと出会うまでに時間はかからなかった。会社を立ち上げると、それまでに交流のあった選手やコーチ、マネジメント会社やスポーツメーカー関係者などから連絡が入り、トレーナーを探している選手や、自身のケアをするうえでベストな環境を探している選手たちが紹介された。また、吉田さんはそれまでこまめにトレーナーの勉強会にも顔を出していたが、そこで偶然隣り合わせで座ったトレーナーや、スポーツドクターなどからの紹介も増え、自身がミッションとしている環境づくりを真摯に追求してきた。吉田さんはこう話す。 「今やっていることも、決して完璧とは思っていません。アメリカでは毎年新しいトレーニング理論が発表されて、数多くのトレーナーが選手たちのパフォーマンスを高めようと工夫が重ねられています。今後も、常に最新情報に触れながら、日本の環境に合わせて日本の選手たちや、日本の人々をサポートしていきたいと考えています。私は『カラダを変え、常識を変え、世界を変える』ということを信条にしていますが、例えば女子ゴルフ界ではそれが起こっています。7年前に初めて女子ゴルフのツアーに帯同した時は、トレーナーは私以外2人の女性だけ。身体のケアやコンディショニングは女子の更衣室が使われていたので、私は入PCPでは、パフォーマンスコーチ、理学療法士、鍼灸師、栄養士、ドクターが『チームPCP』としてお客さま一人ひとりの最高のパフォーマンスを引き出すサポート体制を整えています。毎年アメリカの中でもアスリートサポートという点で注目されている施設に直接足を運んで、最新のトレーニング理論だけでなく、選手のサポート体制などについても学ぶようにしています。トップアスリートもアーティストも一般生活者も、基本的な考え方やサービス内容は同じ。それぞれの方が必要としていることを、科学的根拠に基づき、地道に提供しています。吉田輝幸さん株式会社PCP代表取締役/PCP CENTER ディレクター数多くのトップアスリート、モデル、タレントのパーソナルトレーニングを担当。PCP CENTER(パーソナルトレーニング専用施設)東京都江東区東陽1-27-5-1F TEL:03-6666-3051http://www.p-core-p.com選手としての活躍を諦めた悔しさが夢を実現していく原動力に02CASEれませんでした。そこで当時日本女子プロゴルフ協会の会長だった樋口久子さんに『男性トレーナーも帯同して選手たちのケアができる環境を作ってください』と直接お願いしたんです。その時樋口さんは『君たちみたいなトレーナーが参加してくれて、選手たちのパフォーマンスが上がれば、女子ゴルフが多くの人に注目されるようになり、ゴルフ界の発展にも繋がる』と賛同してくださいました。今では、それが現実になって、多くの選手がトレーナーを帯同していますし、数人の専門家を引き連れてツアーを回る選手も少なくありません。これは今の多くの女子選手の活躍に繋がっていると思います。その他の競技はもちろん、一般の人であっても、トレーナーのサポートでカラダが変わり、パフォーマンスが高められることで、常識も世界も変えられる。そう信じてこれからもベストな環境づくりに尽力していきたいと思います」実際に今アスリートを支える仕事で活躍するトレーナーは、いかにその仕事に巡り会い、どんな思いで仕事をしているのか。4人のトレーナーに話を訊いた。

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