『月刊NEXT』 No.44
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り、会社を設立することになったのだ。國分氏に誘われて共同で事業を始めることになり、阿部さんは北海道での展開を開始した。 北海道では、子ども向けの空手道教室を開始させると、初期に導入した3店舗で200名の集客に成功した。これを受けて北海道の関係店舗すべてに導入することになった。躾や礼儀作法の重要性がメディアで取り上げられていたことが追い風となり、トントン拍子に導入店舗数を拡大しながら好集客していく。だが、しばらくすると指導者の確保という問題にぶつかる。 それを解決するために考えたのが、阿部さんが監督をしている高校の生徒を指導者として養成することと、整骨院事業に空手の指導者が施術者として携われる体制をつくり、一定の収入を得られるようにすることだった。 整骨院を始めようと思いついたきっかけは、ドイツのKJCというスポーツ施設を見たことだ。ここはフィットネスとヘルスケアを同時に行うことができる、まさに「健康」のための施設で、日本にもそのような場所をつくりたいと思ったのだ。自身が整骨院で勤務していた経験も活かし、2005年に整骨院事業もスタートさせる。 事業が拡大するに伴い指導者以外のスタッフの力も重要になる。このころすでに阿部さんも拠点を北海道から東京に移していたが、阿部さんの着任後、もともと東京にいたスタッフが、仕事への考え方の違いから辞職する事態が続いた。だが、阿部さんは辛抱強く自身のビジョンを共有できる同志を探し続けた。「志の高い人と一緒に仕事をすることが、良いものをつくることにつながると思っています。スタッフは社員として守られた環境で仕事をするのではなく業務ごとの契約を結ぶことで、目的意識と緊張感をもった高いレベルの人だけが残り、仕事の質が上がると考えています」 空手の指導者としても整骨院の施術者としても仕事を続けられた阿部さんだが、早々に経営者となる道を選んだ。その理由についてこう語る。「成長を得るためには、本を読むこと、旅に出ること、人に会うことにより、“入力”を続けることだと思っています。そのためには、自分の自由な時間を確保する必要があると思いました」 実際に会社を運営するにあたって、本、旅、人の3つから得てきたことは多い。経営に関する知識や労務、経理のことは本から学び、各地のフィットネスクラブや空手道場から自分の展開する事業モデルのヒントを得た。また、幼いころの空手の先生、整骨院の院長、そして國分氏と、人の影響を受けながらこれまでの道を歩んできた。 経営者としてのやりがいは、「人」が育っていることだという。空手道教室の出身者が講師や施術者として活躍している姿を見て、将来は教室出身者に経営に携わってもらいたいとも考える。今でも「現場が大好き」と言う阿部さんは、月に一度は自身の目標でもあった “世界チャンピオン”育成のため、先生として空手を教えている。現場の話になると、「生徒が大会でよい成績を収めることがやりがいです」と嬉しそうに話す。 同時に、現在同社が力を入れている整骨院がフィットネスクラブに導入され、高収益をあげることもやりがいのひとつだ。企業としてより適切なコンテンツを提供するためには利益が必要であり、そのためのスタッフの努力が報われることは、次の業務への力にもなっている。 着実にステップアップをしてきた同社だが、これまでを振り返って阿部さんはこう話す。「今までは、目の前のことをとにかくやってきただけです。その時々で必要な知識を身につけながらぎりぎりのところで進んできました。今やっと事業内容やスタッフ体制が整ったところなので、それをブラッシュアップしながら拡大し、昔からの理想である“空手出身者の雇用の確保”を実現するために、指導者の道、施術者の道、そして経営者への道を準備していきたいと思います」 現在の中期経営目標は、空手道教室会員一万人、整骨院を30店舗に拡大することである。そのうえでさらに、空手道教室、整骨院を導入しているフィットネスクラブがより高収益を実現するための提案と実行をしていくことを次の課題として据える。「一方的な関係ではなく、フィットネスクラブが『この会社にお願いすれば確実に利益がでる』と思ってくれるようにフォロー体制を整えることが今後の課題となります。事業を始めるときから、フィットネスクラブと、その先のお客さまに満足していただくということを目指してきました。フィットネスクラブ経営者の方に『付帯種目のことならまずは強者に連絡をしよう』と思ってもらえるようなコンテンツと仕組みを提供していきたいです」 そして最終的に目指すところは「空手業界の発展」だ。「業界でスターが1人生まれることで、多くの人に夢を与えることができます。私たちの生徒からスターを誕生させ、空手人口を増やしメジャースポーツにしていきたいですね」 空手家のことを考えてスタートした同社は、フィットネスクラブに欠かせない存在となるために進化し続けることだろう。チームごとに定期的にミーティングを行い、今後の展開や各店の収支状況などについて話す。03自分が成長するための“入力”の時間をつくる04スターを生み出し空手業界を盛り上げたい2010年5月に行われた「第30回北海道少年少女空手道練成大会」では、8名が入賞し、うち4名が優勝。優勝者は全国大会に出場し、うち1人は全国大会で5位入賞を果たす。Event02指導者確保のための仕組みをつくる会社名の由来 粘り強い強靭な精神をもつ組織を目指す所在地 東京都港区西麻布3-2-12 西麻布ソニックビル8FTel 03-03-3524-7273 Fax 03-6893-0191創業 1999年9月 設立 2003年4月資本金 1,900万円組織 120名収支構造 【売上】空手道教室運営、整骨院事業 【経費】人件費、外注費、施設開業費November ,2010 www.fitnessjob.jp29Organization Data株式会社強者

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